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「ラッシュアワー」。聴く人を瞑想にいざなう水滴の音だけが続くと思ったら間違い。音が表現するスピードに最後はクラクラッとさせられる

私たちはいつも時間がなく急いでいる。忙しいからこそ自分の時間を作ろうとし、時間を節約しようとして、また走る。この悪循環から抜け出せない。

そのようなわたしたち人間と、人間から常に逃げたがっているかのように流れ去る時間の追いかけっこをユーモアいっぱいに「展示」した「ノンストップ ( Nonstop ) 展」 を、お急ぎの読者にお勧めしたい。

時間の感じ方

 軍隊の倉庫や事務所に囲まれた大きな中庭の中央に、展覧会場へ誘う明るい赤い布で覆われた長い回廊が見える。
「敷地内に入って来る見学者に、最も近道になるように作りました。時間の節約になるように。ただ、見学者が1列にならなければ通れないように設計したのも意図があります」
 と、展覧会を企画したレリア・フンツィカー氏は「訳あり顔」だ。同じ長さの回廊を歩くにしても、かかる時間に対する感じ方は人それぞれ。自分が急いでいても、ゆっくり歩く人が前にいれば、その人に合わせなければならない。そんな日常のストレスを見学者はここで再認識することになるという。

 もちろん、人間は与えられた時間を工夫して短縮したり、ゆっくり味わったりと自由に操ることもできる。そうしたことを気づかせてくれるのが、次の「ハードル」だ。見学者には1階下にある展覧会場に行くために、螺旋 ( らせん ) 階段か、垂直に立てられた1本の鉄棒を使ってするするっと滑り降りるかの2つの選択肢が与えられている。筆者は、ゆっくりと螺旋階段で下りた。

スピードを音で表現

 「『ノンストップ展』は、見学者が展覧会場で経験してもらわないと展覧会自体が成り立ちません」
 というフンツィカー氏の助言に従って、筆者もこの展覧会を思いっきり体験することにした。

 まず見学者は、時計や携帯電話を小さなロッカーに預けるようにと勧められる。「『時間の孤島』で展覧会を満喫してほしい」からだ。預けた時計は、展覧会のオブジェとして鑑賞できるように、そのロッカーは透明なプラスチック製だ。

 受付の真向かいにある待合室で5分間待つ。待たされるのか、次の部屋の「ラッシュアワー」に行くのを心待ちにするのか。
「時間のすごし方はそれぞれ」
 とフンツィカーさん

 真っ白の「ラッシュアワー」室では、上からつるされているスピーカーから雫が落ちる音が聞え始めた。しかし、瞑想にふける間もなく、携帯電話のマナーモードのバイブレーションの音が聞こえだし、車や電車の騒音、人の叫び声と音はエスカレートした。
 「日常、私たちの耳に聞えてくる音でスピードを表現したものです。普段は、集中して聞かないので、気づかないわけですが」 
 とフンツィカー氏。筆者は、4分30秒間、雑音を集めたこのオーディオショーを集中して堪能したため、ぐったりとしてその場を離れた。

 次の展示品は、渦巻き状に回りくねっている廊下を通り、「嵐の目」の中で観るビデオ「スピードマスター」だ。工場の生産ラインの効率向上をテーマに「将来は生産量倍増です」とプロジェクトマネージャーがインタビューに答えるドキュメンタリーなどを視聴し、より多く、より豊かにという現代人の限りない欲望を見せ付けられる。もう1つの映像ルーム「リアルタイム」では、障害があるためゆっくりとしか働けない人や、ボタン1つを掛けるのに何分もかかる子どもを映し出す映像を、もどかしさを感じながら鑑賞した。

バーンアウト寸前?

 見学者自身と時間との関係を分析するテストが「ファイヤープレー」のコーナーにある。

質問 「あなたは、 時間に追われている気がしますか」
答え 「いつもあると思っている」
質問 「他の人がしゃべっているのをさえぎることがありますか」
答え 「なるべくじっくり聞くようにしている ( つもり )」
質問 「電話をしながら、ほかのことをしますか」
答え 「いつもほかのこともしている」

 こうした13の質問にパネルにタッチしながら答えていく。筆者はなるべく時間があることを装って答えたつもりだったが、結果は頭上にある赤いランプがピカピカと点滅。
「バーンアウト寸前です。チェックアップのコーナーで専門家のアドバイスを聞いてください」
 という結果に。

 人間が外部からの情報を処理するスピードは、1秒間に16ビット ( binary digit ) が限界だといわれている。人間が物事を認識できるスピードは1秒間に0.05ビットにとどまる。しかし、「ノンストップ展」で日常生活のスピードを鑑賞すると、それ以上のスピードを現代生活は要求しているかのようだ。

 「中立的立場から、現代社会のスピードを展示しているつもりです。スピードが人を病気にしてしまうという専門家もいますし、人間は柔軟でスピードが速くなることに慣れるという人もいます」
 と言うフンツィカー氏だが、彼女自身も時間に追われている様子。
「毎日の生活が時間に追われています。私たちに要求されるスピードは、時々異常だと思いませんか」
 と本音がポロリ。
 
 クラスの生徒と一緒に見学に来たという小学校の先生に、十分に見学できたかと声をかけると
「あまり時間がなくて全部をじっくりと、というわけにはいきませんでした。あっと、これが展覧会のテーマですよね」
 と答えて笑った。
 
swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )  レンツブルクにて

キーワード

「ノンストップ ( Nonstop ) 展」 シュタファーハウス ( レンツブルク ) 3月16日~11月29日
Stapfer Hause Lenzburg, Zeughaus-Areal, Ringstrasse West 19, CH-5600 Lenzburg
レンツブルク駅からオレンジ色の標識に従って徒歩で8~10分。火~日曜日 10~17時、木曜日 10~20時、月曜日休館 入場料 大人16フラン ( 約1370円 )

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13の質問

1. 時間に追われている気がする。 いつも、時々、珍しい
2. 早口でしゃべる。 いつも、時々、珍しい
3. 他の人がしゃべっているのをさえぎる。 いつも、時々、珍しい
4. 1日のうちにやり終えられないことがあり、それが負担になる。 いつも、時々、珍しい
5. 時々何もしない時間を味わうことが好きだ。 いつも、時々、珍しい
6. レストランでサービスが遅いとイライラし、クレームを言う。 いつも、時々、珍しい
7. 電話中にほかの事もしている。 いつも、時々、珍しい
8. 友だちとの約束を延期することがある。 いつも、時々、珍しい
9. 電車で移動中、何もしないでその時間を楽しむ。 いつも、時々、珍しい
10.待ち合わせに友だちが10分遅れると頭にくる。 いいえ、少し、非常に怒る
11.よく「早くしなさい」と言う。 いつも、時々、珍しい
12.他の人が遅いと感じる。 いつも、時々、珍しい
13.家族や友だちのためにもっと時間があればと思う。 いつも、時々、珍しい

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