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もういくつ寝るとクリスマス ?

純粋さを表す白いろうそくのゴージャスなクリスマスリース swissinfo.ch

プレゼントを待ち焦がれる子どもたちにとって、クリスマスまでの4週間はとても長い。しかし楽しみもある。それはこの時期、日曜日ごとにともすろうそくの飾りと毎朝開ける窓型のカレンダーがあるからだ。

英語で「アドベント ( Advent ) 」というこの時期は、待降節 ( たいこうせつ ) 、または降臨節 ( こうりんせつ ) と呼ばれる。

待降節のリース

 モミの木や柊 ( ひいらぎ ) の枝を円形にあしらって赤いリボンを付けたものに4本の大きなろうそくを立てる。これが伝統的な待降節のクリスマスリースだ。クリスマスの4週間前にまず1本のろうそくに火をともし、日曜日ごとに1本づつともす数を増やしていく。

 「この時期は暗くなるのが早いので、夕方からろうそくをともし、夕食の時もその後も5、6時間そのままにしておく。暖かい光が居間を包み、クリスマスが近づくのを感じながら家族で静かな時を過ごす」

 とベルンに住むクリストフ・バルジガーさんは言う。

 こうしたリースには多くの象徴がある。もともと16世紀の北ドイツで始まったとも、また日照時間が限られている北欧で生命力を象徴する常緑樹の枝を家に飾ったのが始まりともいわれる。玄関のドアなどに飾られるろうそくのないリースもあるが、それはこうした家を飾る伝統から来ているという。

 リースの円の形はまず太陽を象徴する。さらに一周する形から、クリスマスのお祭りは必ず毎年やって来ること、従ってキリストは必ずまたわれわれのもとにやってくることを表す。もちろん円形はキリストのイバラの冠を、柊はイバラそのものを象徴するともいわれる。

光の意味

 リースにろうそくが導入されたのは、何といってもこの時期は光の祭りだからだ。光は暗さを追いだすと同時に悪も追い払う。また希望と平和をもたらすクリスマスがすぐそこだということも表している。日曜日ごとに1本ずつともされるろうそくは、クリスマスが近づくにつれその数も増えるため光 ( 希望  ) も増し、喜びも同時に強くなっていく。

 もともとろうそくの数はクリスマスまでの日数に呼応していたというが、これを4本に決めたのは、ドイツのルター派の牧師で第1次大戦直後だった。その時から4本は四つの季節と東西南北の象徴になり、さらに1本ごとに意味が付けられ、例えば1本目はアダムとエヴァの罪を許すための象徴、2本目はアブラハムの信心の象徴といったものになった。

 しかし、今日ではバルジガー家のように、ろうそくの光を楽しみ、クリスマスが近づく喜びを家族と分かち合うことが一般的なようだ。そのため、リースも居間の美しいインテリアとしての役割が増し、伝統的なモミの木や柊の枝の代わりに、貝殻やイミテーションの真珠などでゴージャスに飾った高価なものも人気だ。

 ベルンにある専門店カーヴ・ヴェルデ ( Cave Verde ) では、白、ベージュ、鴬 ( ウグイス ) 色、赤色のろうそくを基調にした、芸術的なリースが並ぶ。白い純粋さを表すろうそくの回りに羽毛と銀に光る玉が飾られ花嫁衣装を思わせるようなもの、ベージュのろうそくにさまざまな貝殻と真珠のような小粒の玉をあしらったものなどがある。

 この時期、一つ平均200フランから300フラン(  1万7000円~2万6000円  ) はするこうしたきれいなリースが次々と売れるそうだ。しかし高価な上、芸術的なものなので、多くの客が翌年装飾の破損した部分を修復してくれと持ってくるという。「もちろん喜んで修復します。これも店の大切な仕事ですから」とオーナーは微笑む。

カレンダー、たわいもないが・・・

 この待降節で子どもの一番の楽しみは、リースのろうそくというより、やはり毎朝開けるアドべントカレンダーだろう。これはサンタクロースやクリスマスツリーなどが描かれた一枚の大きな画用紙状のものに、小さな24個の扉のついた窓が付いたもの。これに番号がふってあり、12月1日から順番に開けていく仕組みだ。

 開けても出てくる絵は、星、小鳥、ぬいぐるみのクマなど、実にたわいもないものばかり。それでも子どもはわくわくしながら何が出てくるかと毎朝目をこすりながら窓に手を伸ばす。そして「あ、もう14個開いた。あと10日でクリスマス」と深い喜びに浸る。

 この風習も、もとはドイツから来たという。クリスマスまでの毎日、聖書の一文などを書いた小さな紙切れを一枚一枚開いて、心を正してクリスマスを待ったのが始まり。

 しかし、今日では、窓の中に絵だけのものはおろか、そこからチョコレートやキャンディーが出てくるものもある。ましてやカレンダーの代わりに番号の付いた小さな袋を25個吊るし、開けると中からおもちゃが出てくるようなカレンダー風のものもあるとなると、ドイツの精神的な待降節からはかなり遠のいてしまったと言える。

  

 ところで、バルジガーさんによれば、この時期、一味違う待降節の過ごし方がある。ベルン州のある村では、十数軒の隣人がそれぞれ窓を飾り、その傍に日付の入ったカレンダーを貼る。そこに「きょうは我が家で食前酒を飲みましょう」と書き込む。すると隣人たちが集まってきてワインを飲みながら、窓の飾りを褒め合い語り合う。

 こうした2、3日おきに必ず誰かの家に隣人が集まる楽しい行事など、それぞれはシンプルだが、心浮き立つこの待降節を盛り上げてくれるさまざまな工夫・・・あともういくつ寝るとクリスマス?

クリススマリースのろうそくの色は伝統的に赤。火と光を象徴しているからだ。

スウェーデンで行われる、ろうそくの冠をかぶったルシア姫のお祭りからインスピレーションを得て、白いろうそくもリースによく使われる。白は純粋さとお祭りを象徴する。

オーストリアでは紫のろうそくを使う。紫は懺悔を意味する。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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