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もう1つの若年者雇用対策

外国人の若者はスイスの若者より職を手に入れにくい Keystone

チューリヒ州では、中学や高校卒業後の職業訓練のポストに匿名で応募ができるようにするパイロットケース「スマート・セレクション ( Smart Selection ) 」を立ち上げた。

外国人や、2世代目の外国人が多く住むスイスでは、名前が障害となって面接にさえこぎつけないケースが増えているからだ。

 このパイロットケースを立ち上げたのは、「スイス商業協会 ( KV Schweiz / Sec Suisse ) 」である。類似のプロジェクトがオランダやフランスなどの国々で行われているほか、スイス国内でも2006年にジュネーブ州で行われた。

40社が参加

 「外国人と分かる姓をもった若者は職業訓練のポストはおろか、面接のチャンスさえ与えられない。情況は悪くなるばかりだ」と語るのは、スイス商業協会の若年者雇用課課長、ラルフ・マルグライタール氏。

 スイス商業協会は、最近チューリヒ州議会がこうした匿名の応募方法計画に反対したのを契機に、サイト上でのオンライン匿名応募システムを立ち上げた。現在40の企業がプロジェクトに参加し、およそ100の職業訓練のポストを用意している。今後1年続くプロジェクトの恩恵にあずかるのは、2008年の夏から職業訓練を始める学生たちになる。

外国人の若者による犯罪増加が背景

 プロジェクトに参加した企業の1つに、スウェーデンのトラック製造会社「スカニア ( Scania ) 」のスイス支社がある。同社の人事課長ウルジー・ヒューグ氏は、従来の応募用紙に記入する個人情報には非生産的な側面があると認め、「写真、出生地、姓などの情報は意識しないうちに、選別に影響を与えている」と言う。

 今回のプロジェクトの背景には、最近問題になっている外国人の若者による犯罪の増加がある。マルグライタール氏は、この問題に対する1つの答えは、人種差別を取り除いた形で若者に仕事をもっと与えることだと信じ、「外国人が社会にうまく同化していくには、職への機会均等を作り上げるしかない」と結論した。

swissinfo、マシュー・アレン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

2005年の人種差別による暴動以来、フランスでは職に就いていない外国人の若者の問題が浮上した。

当時、ボルドーでの匿名の履歴書プロジェクトで、姓や住所を雇用者側が知らない場合外国人の若者が職を手にいれる率が高いという事実を得、話題になった。

2006年に始まったオランダのニジュメンゲンでのプロジェクトも同様な結果を得た。オランダの「マンパワー ( Manpower ) 」はオランダ中で2006年6月から類似のプロジェクトを開始した。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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