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アリンギ5号 決戦に出港 !

マストの高さはアリンギが50メートル、対するUSA17は58メートル Keystone

3年間にわたる訴訟を経て2月8日、ついに第33回アメリカスカップがスタートした。しかし十分な風がないため第1回レースは水曜10日に延期されている。

このコンテンツは 2010/02/05 09:27

2009年10月スイスからアラブ首長国連邦に移動したアリンギ5号は、挑戦者BWMオラクルに待ちぼうけを食わされた末、決戦場はスペインのバレンシアに変更された。アリンギ5号のオーナー、エルネスト・ベルタレリ氏は今回自らヨットに乗り指揮を取る。

ハイレベルの技術を駆使

優勝カップの保持者ディフェンダーと挑戦者チャレンジャーの間で争われる、1対1のマッチレース、アメリカスカップは優勝杯を奪い合う競技としては最も古く、159年の歴史を誇る。木製ヨットの時代から技術的改良を続け、今回の第33回大会はハイレベルの技術を駆使した、最も高額なヨットをアリンギ( Alinghi ) 側も挑戦者BWMオラクル ( BMW Oracle ) 側も用意している。

スイスチームのアリンギ5号はテニスコート二つ分の幅を持ち、マストの高さ50メートル、湖の小型船からインスピレーションを得たというカタマラン ( 双胴船 ) 。スイスの多くの研究機関が協力し、中でも連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL/EPFL ) の6つの研究所が全力を尽くしたスイスが誇るヨットだ。

対するオラクル側の「ユー・エス・エー17 ( USA17 ) 号」はボーイング747の翼より8割も長いウイングを持つトリマラン ( 三胴船)。40ノット ( 時速75キロ) のスピードが出せる。「非常に大胆な設計で、驚くべき出来栄えだ」とヨット設計者マルクス・ヒュットシンソン氏も評価する。

両者の造船コンセプトはかなり異なり、アリンギ5号は風速がそれ程強くない場合にスピードが出せ、一方かなり攻撃的なデザインのUSA17は、風の強い悪天候に優れているといわれる。

このため風速規定は大きな焦点。両者は3年間に及ぶ訴訟に懲りず、戦いを目前にした先週になってもこの風速についての討議を再開した。その結果、アリンギ側に有利と思われる風速制限は行われないという結論に達している。

2人の富豪

ところで、この2艘の素晴らしいヨットの裏には2人の富豪がスポンサーとして控えている。オラクル側にはシリコン・バレーの大物で世界第4位の富豪、ラリー・エリソン氏。闘争心の強いことでも有名な氏は、約2億フラン ( 約 167億円 ) の日本風の家を持ち、世界で6番目に大きいヨットの共同所有者だ。

対するアリンギ側のスポンサーはエルネスト・ベルタレリ氏。ベルタレリ氏はイタリア生まれだがアメリカで教育を受け、1998年にジュネーブの大手医薬品会社「セレノ ( Sereno ) 」を相続し、父親の死後2006年に売却している。

スイスアルプスのリゾート地クシュタートとジュネーブに居を構える44歳のベルタレリ氏は先週、アリンギ5号に乗船し自ら指揮を取ると宣言。
「乗船するつもりだ。ヨットの舵を取るのに十分な技術と経験を積んでいると確信している。それにアメリカスカップで指揮を取れるのはこの上なく名誉なことであり、喜びでもある」
とバレンシアの日刊紙「ラス・プロヴィンシアス ( Las Provincias ) 」のインタビューに答えている。

一方、オラクル側のスキッパーはオーストラリア人ジェイムス・スル氏だ。

造船はかなり自由

さて、アメリカスカップのルールだが、レースの規定書でもある優勝カップ「贈与証書 ( Deed of Gift ) 」中には、ヨットに関してはウォーターラインが27 メートルであること以外、厳しい決まりはない。従ってレースの要となるスピードと操作に関し、造船者は自由に創造力を駆使できる。
「つまり、この漠然とした規定書を2009年や2010年の時代に合った構想やアイデアに適応させ、闘争心と巨額の富を足し合わせれば、今回のアリンギ5号やUSA17 号が出来上がる」
とヒュットシンソン氏は言う。

アメリカスカップの元広報官だったヒュットシンソン氏は
「かつてアメリカスカップでは、クルーの技術が大きな役割を果たしていた。しかし今やエリソン氏とベルタレリ氏が新しい局面を開き、違うものにしてしまった。もし、 アメリカスカップが今後こうした ( 巨額の投資による) ヨットを造船する方向に進めば、参加できなくなるチームが出てくるのでは」
と懸念する。

こうした懸念はさておき、 技術的にはトップのこの2艘のヨットも、最終的には天候が勝敗を分ける大きな要因だ。実際2月8日に予定されていた第1回レースも風が十分でないため中止され、2日後の水曜日に延期された。そのため第2回レースは2月12日金曜日に延長されている。

ジャスティン・ヘネ 、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、里信邦子 )

アリンギ5号 ( Alinghi 5 )

ヨットのタイプ:カタマラン ( 双胴船 )
製造者:アリンギ・ディシジョン( Alinghi-Décision ) 、スイスのヴォー州ビルヌーブ( Villeneuve )
スポンサー:ソシエテ・ノーティック・ド・ジュネーブ( Société Nautique de Genéve )
全長 :27 m
マストの高さ: 50m
幅: 25m
ウォーターライン: 27 m
排水量:1万2000kg
製造時間:10万時間以上

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ユー・エス・エー17号( USA17 )

ユー・エス・エー17号( USA17 )
ヨットのタイプ : トリマラン ( 三胴船)
製造者 : コア・ビルダーズ( Core Builders ) 、ワシントン
スポンサー:ゴールデンゲート・ヨットクラブ( GGYC )
全長 : 30m
マストの高さ: 58m
幅:約27m
ウォーターライン: 27 m
排水量 : 1万6000kg
製造時間 : 15万時間

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第33回レースをめぐる争い

2007年7月、第32回レースで優勝した「アリンギ号」のオーナー、エルネスト・ベルタレリ氏は第33回レースの挑戦者にスペインのクラブを選んだ。
これに対し「BMWオラクル ( BMW Oracle ) 」は、スイスのアリンギチームがオラクルに不利な判断を行ったとして訴訟を起こした。さらにレースの規定書でもある優勝カップの「贈与証書 ( Deed of Gift ) 」に照合し、スペインのクラブは挑戦者の資格に値しないと訴えた。
複雑で長期にわたる裁判の結果、2009年4月2日ニューヨーク州控訴裁判所はオラクルを挑戦者に決定した。オラクル側はその後もアリンギチームに対し、レースの規則を一方的に決めたとして訴えを起こした。これに対し、スイス側もアメリカの裁判所に、オラクルを挑戦者として不適格にするよう訴えた。
2009年7月22日、担当裁判官は両者に対し和解調停を行うよう要請。両者はこれを承諾した。
その後2010年2月に決戦が行われることに両者とも同意したが、オラクル側は、アリンギ側が選んだアラブ首長国連邦でのレースは、同国がアメリカと敵対するイランに近いため安全面で問題があると主張した。
規定によると、2月の決戦は両者が開催地に同意したときにのみ行われる。そのためオラクル側は再度ニューヨーク州裁判所に、アラブ首長国連邦での開催取りやめを訴え、結局スペインのバレンシアが選ばれた。

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