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アルペンローズ スイス館の洒落たレストラン

アルペンローズが出すデザートはうさぎのイメージでかわいらしい。(写真提供 Gamma Catering) swissinfo.ch

スイス館のレストラン「アルペンローズ」。ツツジのような小さな赤い花を付けるアルプスの高山植物の名前だ。同じ名前のレストランはスイス国内でも多くあるが、ここのアルペンローズには、スイス館を訪れる多くの人に「スイスを味わってもらう」使命がある。

花の赤をイメージしたインテリア、スイス全土をカバーする各地の郷土料理とワインで、細部にわたりスイスらしさをさらりと表現している。エスプリの効いたメニューのプレゼンテーションも楽しみの一つである。

レストランのメニューはスイスの郷土料理をモダンにアレンジしたもの。フランス語圏からは熱であぶって溶かしたチーズを、ジャガイモの上に乗せて食べるラクレット。ドイツ語圏からはソーセージと、細切れのジャガイモをキツネ色に焼き上げたレーシュティ、イタリア語圏からはミートロールのインヴォルティーニとトウモロコシの粉で作るポレンタがメインのメニューとなる。

 下手なアレンジはしないことがモットー。メニューについてはお客さんの大半が日本人であることを考え、「マイルドなチーズを使うラクレットやジャガイモを使うレーシュティなど、スイスの郷土料理の中でも日本人の嗜好に合うものを選んだ」とマネージャーのマルクス・ブリ氏。 スイスといえばチョコレート。「デザートや飲み物には高級チョコレートをふんだんに使う。ホットチョコレートはまさしくチョコの味がする」というコック長のルネ・ブルム氏。料理の質についても自信たっぷりだ。メインメニューのほか、客の反応を見ながら、「スイスの知られざる郷土料理ウィーク」を催すことも考えているという。

 いずれも、24センチ四方の赤いトレイに収まった四角の白磁器にアレンジされているのが、日本の懐石料理を連想させる。メニューリストの表紙には、四角の器を並べスイスの国旗が浮き上がっている写真が載っている。あなたが注文したメニューに使われた皿でも白十字ができるだろうか。

日本では珍しいワインのオンパレード

 ワインリストが充実している。スイス各地から選りすぐった11本の中でも、特に注目したいのはユマン・ルージュ(Humagne Rouge)というヴァレー州シオン産の赤ワインと言うのは井上貴子さん。井上さんは『霊峰に育まれたスイスのワイン』という本も出版した、日本で唯一のスイスワインの専門家である。

 ユマン・ルージュは紀元前22年頃ローマ人がスイスのアオスタタルにもたらし、ヴァレー州にも少量ながら広まった品種。「スイス人の気質とを著しているような、素晴らしい遺産」と井上さんが絶賛するワインだ。中世には薬として飲まれていたほど貴重だったと言い伝えられている。

 また、リストの中にある二つの白ワイン、シャスラーのエーグル・レ・ミュライユ(Aigle les Murailles)とファンダン・デ・シオン(Fendant de Sion)も飲み比べててはと井上さんは提案する。シャスラーはスイスを代表するワインの種類。ミネラルやマグネシウムなどの含有量により、同じシャスラーでも味がおのずと異なるからだ。ブドウ畑には山の雪解け水を畑に散水して育てる栽培方法が昔から引き継がれている。井上さんによればアルペンローズでは「スイスの山の恩恵を受けた」ワインが堪能できるのではないかという。 スイスワインはアルプスの自然なくして育たないという持論の井上さんのお勧めワインのほかに、白はかすかなバラ、赤は木苺の香りがすると製造者が自慢する、カルタウス・イッティンゲン(Kartause Ittingen)といったドイツ語圏のワインも見逃せない。

 大きな窓から見えるスイス館のアルプスの「岩肌」を鑑賞しながら、料理とワインに舌鼓を打つのもスイス館ならではのアトラクションではないだろうか。

swissinfo 佐藤夕美 (さとうゆうみ) 愛知万博会場にて

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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