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ウィリアム・テル伝説も無形文化財

お話を聞くことは、愛、恐れなど無形のものが各々の想像力の中でよみがえる魔法の時間を生きること RDB

口承伝説、音楽、舞踏など、無形の文化は世代から世代へと受け継がれてきた。無形だけに、時代によって変化を遂げ、文化にダイナミックな刺激をもたらしてきた。一方、保護しなければ、失われるという側面も持つ。

このコンテンツは 2007/09/10 15:26

スイスでこの無形文化財の保護、継承を積極的に行う機関「語り部館 ( Story Teller Museum ) 」がフリブールに誕生して今年で1周年になる。

語り部館の母体をなしているのが、「スイス無形文化遺産基金( Swiss Institute of intangible Heritage ) 」。民俗学、人類学、社会学などの研究者からなるこの機関は、無形文化財の在り方を広く民俗学から現代のコミュニケーションなどに手を広げ、研究する。しかし、この無形文化財のあり方、重要性を研究者間だけのものにせず、もっと広く一般の人に知ってもらおうと、昔話を語る会などを行い「無形に形を与える」のが、語り部館の役割である。そのコーディネーターを勤めるのがアンドレ・デムビンスキー氏だ。

「無形のもの」は人間にとって非常に大切

「ウィリアム・テルの伝説もウィリアム・テルが実在したか否かが大切なのではない。彼はスイスの独立の象徴であり、スイス人であればこの話に感情移入して勇気や、愛国心などを各々が受け取り、そして共有する」とデムビンスキー氏は説明する。

この勇気、愛国心など「無形のもの」は各々の国や地域の文化として育ち、受け継がれ、しかもそれは、「無形の媒体」、祈り、伝説などが語られる瞬間に現実のものとして生き返る。「だから生き返る機会を多く与えたい。ここに語り部館の任務がある」とデムビンスキー氏。

語り部館といっても建物があるのではなく、それはスイス各地にいる30人の専門家のネットワークのこと。「我々は人が多く集まるショッピングセンターなどで昔話の会を開いたり、展示会を催したりイベントを組織する集団」とデムビンスキー氏は定義する。今年は創立1周年目で、国際昔話フェスティバルと展覧会を企画した。

山の生活は厳しいので、伝説なども厳しいものが多い

無形文化財の代表的なものの1つである昔話と口承伝説。本人も昔話の語り手のプロであり、80年代にスイスの口承伝説や昔話を集めたエディト・モンテルさんは「スイスはこの種の無形文化財が非常に豊かだ」という。

昔話や伝説がいかに地形、環境に影響を受けているかを痛感しながら、モンテルさんは「スイスは本当にアルプスの国」と前置きし、「スイスの山の生活は厳しいので、伝説なども暗く、厳しいものが多い。しかし同時に山岳民の連帯や外部の人を受け入れる話もある。一方、スイスの平坦な地域では、卑猥( ひわい )な話が多い」という。

ところで、スイスは2008年に、ユネスコの「無形文化遺産条約」に批准する方向で連邦議会が動くことになっている。このユネスコの無形文化遺産のリストにスイスの昔話などが載る可能性を尋ねると「スイスは小国の上、さらに文化的には26の州という小国に分離されているようなもの。各地域の話、文化は豊かでも日本の能や歌舞伎のように国全体で認められるような大きな規模ではない」と残念そうにデムビンスキー氏はいう。

しかし、スイスがユネスコの無形文化遺産条約に批准すれば、語り話ミュージアムのさまざまなプロジェクトが実現しやすくなることは確かなようだ。

swissinfo、 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) カロル・ベルティ

補足情報

「語り部ミュージアム ( Story Teller Museum ) 」

無形の文化をもっと一般の人に広く知ってもらおうと創設された機関。無形文化財の専門研究機関「触れない文化遺産スイスインスティチュート( Swiss Institute of intangible Heritage ) 」が母体となっている。今年は創設1周年を記念して、国際昔話フェスティバルと展覧会を企画した。

展覧会: 「想像力の中にある森」

森は木々が茂り、動物が住む所であるが、人によっては、赤頭巾の狼の森であり、ドラゴンの住む森であり、それぞれの人の想像力の中でさまざまな意味をもつ。この無形の意味がいかに大切で、実はとても現実的なことかを知ってもらう企画。

期間、8月28日~9月29日
場所、bd de Perolle 25, Fribourg

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ユネスコの無形文化遺産条約

2006年4月ユネスコの「無形文化遺産の保護に関する条約(無形文化遺産条約)」が発効された。

無形文化遺産条約は、民族文化財、フォークロア、口承伝統など、無形の文化を人類共通の遺産としてとらえ、保護していくことを目的に作成された。

2007年6月までに、79カ国が締約ないしは批准している。スイスは2008年の批准に向け、連邦会議が検討を始める。

一方ユネスコは、2001年より「人類の口承及び無形文化遺産の傑作の宣言」として隔年ごとに、世界の無形文化財遺産のリストを作成している。日本からは「能楽」、「文楽」、「歌舞伎」が登録されている。

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