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カルミ・レイ外相、女性の人権保護を宣言

世界でおよそ3人に1人の女性が様々な形の暴力にさらされているという。 Keystone

スイスのミシュリーヌ・カルミ=レイ外相の呼びかけにより、ジュネーブで開催中の国連人権委員会に参加している24名の女性閣僚(うち19名が外相)が16日、女性への暴力に反対する共同声明を出した。 

カルミ=レイ外相は「女性に対する暴力が今年の人権委員会の優先課題となることを願う」と会見で語り、同氏は人権委員会の閣僚級会合で「女性に対する暴力は耐えられない人権侵害である」と訴えた。

共同声明の内容

 オーストリア、フィリピン、スウェーデンやエルサルバドルなどの女性外相が提出した共同声明には「世界中で数え切れないほどの女性や女子が“女”という理由だけ暴力の被害者になっている」と訴えた。同声明には婦女売買と戦うための国際協力の必要性、女性器切除などに代表される性差別による暴力を一切拒否し、各国紛争の第一被害者は女性であり、特別な保護が必要であるなどと訴えている。

 オーストリアのフェレーロ・ヴァルトナー外相は「いかなる伝統的慣習も女性器切除などを許容する理由にはならない」と強調。イエメンのアルソワ大使は「わが国で78%の農業労働者が女性であるのは長いこと女子に教育を受ける機会がなかったから。教育は権力であるという認識が必要だ」と語った。また、フィリピンのドミンゴ・アルバート外相は「350万人のフィリピン人女性が出稼ぎに出ているが、世界各国で女性移民労働者を保護する法的措置が必要」と訴えた。

スイスの人権政策の重要課題

 マドリッドのテロ直後の開幕となった今年の国連人権委員会はテロ問題が議論の中心になりそうである。

 スイスはメキシコが提案しているテロ防止目的のための人権侵害を制限するために独立した専門家が監視するメカニズムを支援している。カルミ=レイ外相は「テロとの戦いは人権を尊重した上で行わなければならない」と語り、「テロを理由に恣意的な逮捕を行っている国があるのは心配だ」と説明。現在このメキシコ提案を支持しているのは英、仏、独で反対国は米国、サウジアラビア、インド、パキスタンなどである。


スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)

国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)によると、アフリカ諸国などで毎年、約200万人の少女が女性器切除の慣習の犠牲になっている。
米国では毎年、約70万人の女性が強姦被害者に。
スイスでは家庭内暴力で毎年、約40人の女性が死亡している。

– 欧州国連本部で開催中の第60回国連人権委員会に際してカルミ=レイ外相の呼びかけにより、世界24カ国の閣僚レベルの女性政治家が女性に対する暴力を糾弾する共同声明を出した。

– オーストリア、南アフリカ、スエーデンなどの女性外相がこのスイスによるイニシアチブに参加したが、日本の川口順子外相は日程の都合がつかず欠席した。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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