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クリプト・バレー フィンテックのグローバル・ハブを目指すスイス

アルプスとツーク湖を背景にしたツークの町

ツークはフィンテックで世界をリードする町になろうとしている

(Keystone)

銀行の国スイスは今、世界でも最大のフィンテックの中心地になるべくあらゆる努力をしている。これを受けて仮想通貨に特化した多くのスタートアップ企業がスイスで急成長している。中でも集中しているのがツーク州だ。

 昨年8月、米カリフォルニアの仮想通貨企業「ブレッドウォレット(Breadwallet)」がスイス中部・ツーク州に本拠を移した。同社にはDASキャピタルやのアダム・トレードマン最高経営責任者(CEO)は、本拠地にスイスを選んだ理由を、「仮想通貨のビジネスを育てるのに適した環境が整っている国として、スイスの名が挙がった。旧来の金融法制に関してスイスがリーダー的立場にある点にも惹かれた」とウェブサイトで説明した。「スイスは顧客の金融情報を保護することで確かな評判があり、ビットコインから得る利益を守りたい利用者をサポートするという我々の目的にも適う」ことも理由に挙げた。

 スイス連邦政府は、ツーク州を中心に成長を遂げるフィンテック業界を支援する方針を打ち出している。ヨハン・シュナイダー・アマン経済相は、ツークの「クリプトバレー(暗号の谷)」を訪問し「良いアイデアがカリフォルニアに流れて欲しくない」「わが国は考え方を変えなければならない。もっと大胆にやるべきだ」と述べた。デジタルやフィンテック分野での新たな高等教育コースや研究を促進し、教授職を増やすために1億5千万フランの追加予算の確保に努めていると明かした。

 スイスはすでに、金融サービスに大改革をもたらすテクノロジー分野でかなりの進歩を遂げている。国内では多くのフィンテック企業が生まれ、国外からはモネタス(Monetas)他のサイトへザポ(Xapo)他のサイトへ、そしてこのほどブレッドウォレットが本拠をスイスに移している。

ICOの4分の1がツークに

 ツークのスタートアップ企業を支援するクリプトバレー協会他のサイトへのオリヴァー・ブッスマン会長はスイスインフォの取材に対し、「私たちは持続可能なビジネスモデルと可能性を持ち、雇用を創出できる企業を求めている」と語った。「スイスのDNAには自給自足の精神が息づいている。当局が非集権的で不干渉の方針をとっているため、起業家たちは自分のアイデアを自ら守り、自由にビジネスモデルを描くことができる」

 ツーク州はフィンテックに商機をもたらす環境づくりに最大限の努力をしている。法人税率を低く抑えるだけでなく、州当局は行政サービス手数料の支払いをビットコインで受け付けるようになった。昨年9月には世界で初めてブロックチェーン技術を使った身分証明書を発行した。クリプトバレーが国内その他の地域への活動拡大を目指している一方で、チューリヒ州や近隣州はすでにツーク州の戦略から恩恵を受けている。

 仮想通貨を使った資金調達方法「イニシャル・コイン・オファリング(Initial Coin Offering=ICO)」の登場でスイスのフィンテック業界はさらに活気づいた。この合法的な仕組みは、クラウドファンディング方式で調達した、グローバルなフィンテック企業の開業資金のためにツーク州で広く開設されてきた。昨年前半に世界中からICOで集まった約12億ドル超の4分の1が、スイスに流れ込んだとされる。

イニシャル・コイン・オファリング スイスのスタートアップ企業が切り開く新たなビジネス

ベンチャー企業などが仮想通貨を売って事業資金を得る手法「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」の勢いはさながらゴールド・ラッシュのようだ。旧来の資金調達方法に比べて規制がなく、スイス企業も先頭に立ってその波に乗る。

 だがブッスマン会長は「スイスで合法的に資金調達をするためにスイスを利用しているに過ぎず、人的・知的資源がスイスに根ざしているわけではない」と不満げだ。「フィンテック企業を商売相手にした法律事務所やその他サービスは儲かっているが、それよりもスイス外からフィンテックの調査研究部門を呼び込みたい」

 クリプトバレーは最先端のフィンテックリサーチ企業を呼び込もうと様々な努力を続けている。クリプトバレー協会はスイスの各大学と提携し、今年からは研究者、スタートアップ、投資家を集めた定期的な会議を開催する予定だ。

 ブッスマン会長は、「スイスの大学はトップクラスだが、IBMやグーグルのような多国籍企業に囲まれているため、優れた才能がそこにに吸い上げられてしまう。スイスの才能と知識は、国内に留めておきたい」と話す。そのため、クリプトバレーはツーク、将来はジュネーブやローザンヌ、そしておそらくはルガーノにもフィンテック・リサーチセンターを設立する予定だ。「そうすれば、ここに来るのはすでに知られたテクノロジーを抱える企業だけではなくなる。次世代のイノベーションが市場に広がる前にいち早くツークで見届けることができるだろう」

立ちはだかる問題

 だが、先ごろツークで開かれたフィンテックに関する会議では、スイスでフィンテックが発展する上での問題点が挙げられた。その一つに、ロンドンやベルリンなどと比べ、スイスは外国人労働者への規制が比較的厳しいという点がある。ツークに拠点を置き、資産管理向けのフィンテックを提供するスタートアップ企業メロンポート(Melonport)他のサイトへの設立者モナ・エル・イサ氏は、スイスに企業トップを連れてくるという野心を実現することの難しさを語った。

 「フィンテックはあまりにも最先端なテクノロジーで、まだ大学でも教えられていない。世界でほんの一握りの人が独学でスキルを身につけているに過ぎない。だがスイス当局は、ビザの申請条件として資格証明書や実務経験などを要求してきた」と不満を漏らす。

 もう一つの問題は、スイスではスタートアップに対する長期の資金的支援が欠如しているという点だ。スタートアップ企業には、初期には多くの資金提供があるものの、次のステップとして市場に参入する際のいわゆる「死の谷」を渡ろうとするときに資金が枯渇してしまうことが多い。

 こうしたスタートアップ企業の成長局面を支援するために、シュナイダー・アマン経済相はUBSやクレディ・スイスなど民間金融大手を集め、3億フランの基金設立を呼びかけた。

フィンテック業界

フィンテックは金融サービスにおける第4次産業革命。金融とIT(情報技術)の融合により、企業と顧客の両者に効率化と節約を確約する。

フィンテックには、資産管理のロボアドバイザーや、銀行に要求されるマネーロンダリング(資金洗浄)対策の自動化、保険業界におけるスマートコントラクトの自動執行など、業界に必要なあらゆる要素がそろっている。

仮想通貨の出現で、より迅速に、そして仲買人を必要としないためより少ない手数料で取引ができるようになった。決済日を待つ必要もない。ブロックチェーン技術を使ったこのデジタル通貨のおかげで、個人が自分で資産管理ができるようにもなるだろう。

データをより効率的に記録し伝達することのできるブロックチェーン技術は、法律、医療、サプライチェーン・マネジメントなど金融業界以外でも変革をもたらしている。

インフォボックス終わり


(英語からの翻訳・由比かおり)

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