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クレディ・スイスの救済は、スイスにとって何を意味するのか

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© Keystone / Michael Buholzer

株価が急落したクレディ・スイス(CS)は、流動性を確保し投資家の信頼を高めるため、最大500億フラン(約7兆1千億円)をスイス国立銀行(中銀、SNB)から借り入れる方針だ。中銀の介入について知っておくべき最重要ポイントを紹介する。 

なぜこのような事態になったのか? 

既に弱体化していたクレディ・スイスに追い打ちをかける出来事が続いたからだ。週末、米国の2つの銀行の破綻・救済で不安心理が高まった。同時に、米国証券取引委員会がクレディ・スイスの年次報告書の公表を延期。ここで、スイス第2の銀行であるクレディ・スイスの堅固さに最初の疑問符が付いた。 

その後、筆頭株主であるサウジアラビア・ナショナル・バンクの会長が心ない一言を発した。クレディ・スイスにこれ以上資金を注入しないと発言したのだ。これがおそらく、突然の信用失墜の引き金となった。 

しかし、クレディ・スイスが崩壊したのは、偶然でもなければ驚くことでもない。クレディ・スイスは現在、欧州で最も弱い銀行であり、長いあいだ問題を抱えていた。多額の現金流出に苦しみ、強力な収益基盤を見つけることもできず、再編の中でもがいている。 

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クレディ・スイス、中銀から最大7兆円調達へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス第2の銀行クレディ・スイス(CS)は15日の株価急落を受け、スイス国立銀行(中銀、SNB)から最大500億フラン(約7兆1千億円)を借り入れる予定だと発表した。

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中銀の資金は必要なのか? 

何よりもまず、これはシグナルだった。市場関係者やクレディ・スイスの顧客は、この銀行(の経営)がぐらついていないことを再確認する必要があった。ただ、中銀が株価急落から一夜のうちに行動を起こさざるを得なかったのは、状況が非常に危機的だったことを意味する。 

他国で類似の事例はある? 

米国では、2つの銀行が倒産したばかり。しかし、事業停止したシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行はクレディ・スイスよりはるかに小規模だ。また、米連邦準備理事会(FRB)は銀行を救済したわけではない。顧客の預金を保証しただけだ。 

よって、今回の件は2008年の金融危機時のUBS(スイス最大手の銀行)に対する中銀の救済と比較した方が分かりやすい。ただし、今回のケースと異なるのは、当時は中銀に加え、連邦政府も60億フランの救済に乗り出した点だ。今回も政府がそのリスクを負うかどうかは不明だ。 

中銀は資金を取り戻せるのか? 

すべてがうまくいけば、取り戻せる。おそらく、財務省も中銀の融資を一定程度保証してくれるだろう。もしそうなれば、いかなる損失も中銀ではなく連邦政府に降りかかることになる。UBSの救済時は、最終的には政府、中銀の両方が利益を手にした。もしすべてが安定したままクレディ・スイスが完全に潰れなければ、このケースもあり得るだろう。 

スイスのバンキング業界への影響は? 

おそらく、スイスの金融センターのイメージにマイナスの影響を与えるだろう。何しろ、クレディ・スイスは社名に「スイス」と入っている。スイスの銀行が影響を受けていることは誰の目にも明らかだ。特に、スイスの銀行は非常に安定していると国外では考えられているため、これは異例のことだ。しかし、過去15年間で、スイスの大手銀行に2度も救済措置が取られたことは無視できない。 

この介入で十分なのか? 

バックに大金を持った信頼できるプレーヤーがいれば、比較的早く信頼を回復できるだろう。今回はまさにそうだ。中銀の介入の論理は一般的だ。必要なことは何でもやると言い、それが信用できるものであれば、うまくいく。 

つまり、一方では意志、他方では信頼性の問題といえる。中銀の介入は信頼性を提供するが、意志の問題は答えが見つかっていない。結局のところ、中銀は流動性支援について、上限があるかどうかは明言していない。 

中銀はどこから資金を調達するのか? 

現在、中銀は新しいフラン紙幣を刷っており、それがクレディ・スイスに融資として渡る。理論的には無限に(支援が)できる。しかしやり過ぎると、市場に強い歪みをもたらしかねない。中銀としては、それは避けたいところだろう。 

英語からの翻訳・宇田薫 

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