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グアンタナモ収容者受け入れは国内の安全が前提

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エヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ司法相は、イスラム教のミナレットの建設禁止の是非について、冷静な討議を望むと言う。

スイスインフォのインタビューでヴィトマー・シュルンプフ司法相は、グアンタナモ収容者の受け入れは、国内の安全が大前提とも語った。

swissinfo.ch : グアンタナモ収容所の収容者受入れ問題については、スイス政府内でだいぶ以前から検討されています。アメリカ政府はいつ、スイスからの返事をもらえるのでしょうか?

ヴィトマー・シュルンプフ : アメリカ政府は、スイス内閣が収容者の1人もしくは数人を受け入れると最終決定した時点で、スイス政府の返事を受け取ることになります。

swissinfo.ch : 収容者の出身国は?

ヴィトマー・シュルンプフ : 現在答えることはできません。好ましい国というものはありませんが、決して受け入れられない国というのはあります。問題を起こす可能性のある国はどういった国か、端的に分かっているからです。

swissinfo.ch : 収容者個人については、どういったことが拒否の理由になりますか?

ヴィトマー・シュルンプフ : 過去にテロリストであった経歴を持ち、スイス国内でのテロ組織と関係のある人は受け入れられません。国内の安全が危ぶまれるようなことはできませんし、そうしたくはないからです。

swissinfo.ch : 2008年にはグアンタナモの収容者の難民申請を拒否しましたが、今回、政策変更があったのでしょうか。

ヴィトマー・シュルンプフ : 拒否したことは正当です。難民として受け入れる条件が満たされていなかったわけですから。今回受け入れようとしているグアンタナモ収容者は、難民として受け入れるのではなく、解放された収容者としてその受け入れ先を探しているということなので、受け入れるわけです。司法省は、個々の受け入れを外国人法に照らし合わせて検討しているところです。

swissinfo.ch : アメリカ政府に否定的な答えを出すことは、アメリカとスイスの租税条約問題やUBS銀行問題という背景からして、ありえない…

ヴィトマー・シュルンプフ : 受け入れの条件が、賠償責任、スイス社会への融和、安全といった点に抵触するようであれば、スイスとしては「ノー」と答えるしかありません。

ほかの問題と関連付けて答えを出すことはできません。問題は個々に検討されるものです。条件付きであるのかどうかはわたしたちが決めます。もし、受入れが政治的に好意的に見られ、2国間の関係に良い影響を与えるようであればそれは良いことです。

swissinfo.ch : 大臣は、ほかの難民の受け入れ規制は強化しようとしています。なぜでしょうか。

ヴィトマー・シュルンプフ : 一貫した政策をとりたいのです。スイスはほかの隣国と比較しても、近年非常に多くの難民の受け入れ申請が出されています。

swissinfo.ch : ヨーロッパ諸国の間では、難民受け入れの正当な配分が討議されています。イタリア、マルタ、ギリシャなどが正当配分を主張しています。大臣は賛成ですか?

ヴィトマー・シュルンプフ : スイスもその対象国になるということであれば、スイスの負担は確実に軽減するでしょう。

中長期的には、こうした配分制度を敷かなければならないと思います。スイス国内では、州の人口に比例した難民の受け入れ数の設定をしており、すでに配分制度の経験をしています。

swissinfo.ch : ミナレット( イスラム教寺院の塔 ) 禁止の動きについて伺います。今後、国民投票で決定されることになりますが、外国に対して、こうしたことがスイスでは可能であることをどう説明しますか。

ヴィトマー・シュルンプフ : それが直接民主主義です。国民が憲法改正のイニシアチブの是非を決める。たとえ、今回の例にあるような非常に難しいテーマであっても、スイスのこうしたシステムを私は支持します。

法律、基本法、憲法と国際法は常に緊張関係にあります。スイスでは国際法に抵触する場合はそのイニチアチブは無効になります。ミナレット禁止イニチアチブは国際法に違反するとは言い難い。この決定については討論する余地はありますが、直接民主主義の国で、実践の枠組みを単に変えることはできません。

swissinfo.ch : 議会で大臣は、国民を信じていると発言なさいました。

ヴィトマー・シュルンプフ : 州政治、連邦政治に関して、わたしは何年かの経験があります。それから言えることは、国民は客観的であり、一貫性を持って賛成か反対かを判断できる能力があるということです。

すでにさまざまな難しい問題が国民投票で問われてきました。私が望むのは、感情的になるのではなく冷静な判断です。

swissinfo : これとは別に感情的な討論となっているのが、事件の犯人捜しにインターネットで写真を公開することですが。これについての大臣のご意見は?

ヴィトマー・シュルンプフ : 容疑者の写真をインターネットで公開することについては、州の法律で定められています。一般的に言えば、容疑の根拠を明らかにできれば、公開可能になっています。わたしは、解決が難しい事件にのみ捜査にインターネットを使うべきだと思っています。理由は個人情報保護の観点からです。無罪と分かっても、その人のデータをインターネットから消すことが難しいためです。インターネットで公開されたことは、すべての人にアクセスが可能になりますから。 

swissinfo : 大臣としての権力には、連邦制度のスイスでは限りがあるのでは。

ヴィトマー・シュルンプフ : 各州政府も、限界があることについては高い認識があります。私たちも、州の責任者と討議をする予定です。連邦政府の強制をする必要もなく、州間の調整の道が模索されるでしょう。

ゲラルド・ホフマン、エヴァ・ヘールマン、swissinfo.ch 
( ドイツ語からの翻訳 佐藤夕美 )

グラウビュンデン州出身。53歳。弁護士。現職以前、1998年から2007年まではグラウビュンデン州内閣の保守派だった。
同じく国民党 ( SVP/UCD ) のクリストフ・ブロッハー氏の後任として2007年12月7日入閣。しかし、ブロッハー氏の解任、ヴィトマー・シュウルンプフ氏の当選が禍根となり、ヴィトマー・シュルンプフ氏は国民党を脱退。国民党から脱退した議員が市民民主党 ( BDP ) を結成し、ヴィトマー・シュルンプフ氏も入党。同党の連邦議会議員は現在6人。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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