スイスの視点を10言語で

グーグルがあなたのプライバシーを侵す?

Google Street View

スイスの町もグーグル・ストリートビューに登場した。観光業界は歓迎したが、連邦政府の情報保護担当課は眉をひそめ、オンライン4日目の8月21日にストップをかけた。

「グーグル・ストリートビュー ( Google Street View ) 」 では基本的に人の顔や車のナンバーはぼかされることになっていた。ところが、実際にオンラインされた写真では、多くの人の顔が識別できた。

ストリートビューの停止要請

 「寄せられた沢山の情報と独自で行った調査結果から、グーグル・ストリートビューは確認し合った条件を守っていないことが判明した。多くの顔や車のナンバーが十分にぼかされていなかった」
 と、「連邦情報保護・透明性維持担当課 ( EDÖB/PFPDT ) 」のハンスペーター・トュール氏は8月21日に発表されたコミュニケで述べた。

 その結果、トュール氏はただちにグーグルに対しスイスのストリートビューの停止を要請。さらに公の場で撮影される写真の条件がスイスの法律に合致するよう改善すること、グーグル側の代表と話し合いの場を今週中に持つことなどを明らかにした。

承認されていない個人情報漏れ

 こうしたストリートビュー実施以前に、「スイス情報保護委員協会 ( Privatim ) 」のチューリヒの責任者ブルノー・ベーリスヴィル氏は、「本人の承認を得る以前の個人情報漏れ」がストリートビューの問題だと主張していた。

 「各国でその適用方法は異なるが、ヨーロッパでは、承認を得ない個人情報漏れに関し1つの指針が規定されている。実際ドイツでは、写真が撮影される前、または少なくともオンラインされる以前には必ず本人の許可を得る必要がある」
 とベーリスヴィル氏は言う。

 しかし、グーグルはこれを守っておらず、インターネット上でいつ撮影車が市民の住む場所を通過するかを掲載しているだけだ。そのため、ドイツの情報保護課は、グーグルに対し、市民にもっと情報を伝えることを要求し、現在ドイツではグーグル・ストリートビューは実施されていない。

 一方、フランスの「情報と自由の国家委員会 ( CNIL ) 」は、ぼかすなどの処理をする前の原本の写真や車のナンバーなどの情報がどこに、いつまでストックされるのかを心配している。

 グーグル側は2009年6月、ヨーロッパの国家情報保護課グループからの要請で、こうしたもとの情報は永久に保存しないと公に約束した。しかし、保存の期限はまだ発表されておらず、CNILは返事を待っている。

世界の情報入手計画

 こうした懸念に対し、インターネット問題を専門とする弁護士、セバスチャン・ファンティ氏は、
 「グーグルやフェイスブックなどのアメリカの企業は一般的に、簡単な申請書だけで世界中のすべての国の情報を、あらゆるアメリカの政府機関に提供する義務がある。もし米中央情報局 ( CIA ) がこの春チューリヒで起こったことを知りたいとしたら、グーグルがぼかした写真ではなく、原本の写真を渡すのは明らかだ」
 と語る。

 CIAとインターネット企業との関係を執筆中のファンティ氏は、
「2001年の9.11事件でアメリカ人が受けたトラウマが分からない限り、アメリカ人の現在の精神状態は理解できないだろう。この事件以来、アメリカは戦争状態に突入しているのだ」
と語る。2002年に「テロリストに反対するための特別法」の採択によって、アメリカは世界中の情報という最も巨大な情報を手に入れる計画を立てたのだと言う。

 結論としてファンティ氏によれば、( もし、個人情報を保護したければ ) グーグルから自分の写真を取り戻しただけでは十分ではないという。さらに、たとえグーグルと問題が起きたとしても、彼らが解決にきちんと応じてくれる保証はどこにもないとも言う。

 一方、グーグルスイスのスポークスマン、マティアス・メイエール氏は、グーグルが各国の政府機関と協力することを否定しない。例えばオランダで、窓から逃走しようとしていた泥棒をたまたま通過したグーグルの車が撮影。その写真をオランダ警察に提供したお陰で泥棒は逮捕されたという話を挙げる。

 しかし、この逸話はまさにグーグルが世界を監視していることの証ではないだろうか。しかし、メイエール氏は、
「オンラインしているのは、あくまで過去の写真。またこの写真は固定したイメージで動いてはいない。従って何もリアルタイムで情報を流しているわけではない」
 と主張してやまない。

マルク・アンドレ・ミゼレ、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、里信邦子)

ストリートビューが実施された多くの国では、基本的に都会とその環境が撮影された。しかしスイスでは、グーグルの撮影車は主に田園を走り撮影した。フランス語圏の諸州、ベルン州、チューリヒ州、ジュラ州などは特に、田園風景が多く撮影された。

また、スイスのストリートビューはアメリカを除いて、世界で最も詳細に撮影されている。

スイスでストリートビューがオンラインされるや、多くの人が奇妙な写真が掲載されていないか興味津々で探した。柵のそばで用を足す人から、空に何か奇妙な物体が映っていないかといったところまで探索した。

しかし、問題になったのは、通りで抱き合うカップルの顔が確認できたり、セックスショップやマッサージサロンの前に停車している車のナンバーが確認できたりすることだった。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部