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ゲームの暴力シーン撲滅運動

保護者は子どもたちが遊んでいるコンピュータゲームがどれほど暴力的か知らない Keystone

青少年は、ゲームなどの中で展開する暴力シーンに触れないようにしければならない。青少年のための基金「プロ・ユヴェントゥーテ ( Pro Juventute )」は、全国統一の規制を設けるよう陳情した。

このほどの陳情書「ストップ・異常で隠された暴力 ( Stopp der ( un ) heimlichen Gewalt )」 は、ビデオやゲームに年齢制限を設け、全国で取り締まることを要求するものだ。

 プロ・ユヴェントゥーテによると、最近の青少年はテレビ、携帯電話、コンピュータゲーム、ビデオ、映画館などで暴力シーンに触れることがより頻繁になっているという。しかも、こうしたメディアは暴力を躊躇 ( ちゅうちょ ) なく見せ、よりリアルに見えるよう演出しているという。

業界の判断に委ねられているという現実

 ビデオやコンピュータゲームなどの年齢制限は現在のところ、製作者や販売業者が自主的に設定しているにとどまる。しかし法的拘束力がないため、年齢制限などは無視されることもあるとプロ・ユヴェントゥーテは指摘する。

 また、州によって規制状況は異なる。ヴォー州が全国ではじめて、ビデオ、DVD、コンピュータゲームの年齢制限を定めたものの、アールガウ州、アッペンツェル・インナーローデン、アウサーローデン両州など全国9州には制限はなく、ほかの州は映画館の入場年齢制限にとどまっている。このように州ごとに制限の内容や取り締まる機関も異なり、まさしく連邦制による複雑さが全国統一を難しくしているのだ。

繰り返される暴力シーンが問題

 ゲームなどの中で表現される暴力シーンから青少年を守るには、プロ・ユヴェントゥーテと連邦政府、エンターテインメント業界との協力が必要だ。ただし、政府による従来の「検閲」では、技術の進歩のスピードが速い今の時代には対応できるはずもないという指摘もある。

 このため、政府とエンターテインメント業界による共同戦略が必要で、他国ではすでにある「定められた自主規制」が望ましいというのが、プロ・ユヴェントゥーテの考えだ。 しかしエンターテインメント業界は、この陳情が更なる業界規制になることを理由に反対だという。

 年齢制限の設定と平行しプロ・ユヴェントゥーテは、青少年や保護者向けの、コンピュータゲームとのかかわり方を指導する専門家の育成の必要性も訴えている。特に多くの保護者は、自分の子どもがどのようなゲームで遊んでいるのかを知らない上に、子どもに合ったゲームの選択もできないでいるからだ。「子どもに対して責任があるのは保護者です。しかし、技術が急スピードで向上していく中、教育がこれをフォローするのは難しい」とプロ・ユヴェントゥーテのヨランダ・ベルトゥツィ広報担当は言う。

 問題は特定の映画やゲームにあるのではなく、繰り返し見ることになる暴力シーンだとも言う。「子どもたちは暴力がどのようなものなのかさえ、分からなくなっていく」とベルトゥツィ氏は懸念する。
 
swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

創立1912年。
スイス全国で活動を展開するNPO。スイスの子どもや青少年の権利を保護するために活動している。困っている子どもたちに救いの手を差し伸べ、子どもや青少年の能力を伸ばすためのサービスを行う。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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