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コロナ下のアート・オン・アイス ダミアン・ハースト作品展

英国人芸術家ダミアン・ハーストの作品は、生と死が主なテーマだ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が尾を引く中、ハーストの作品展がスイス東部サンモリッツの高級スキーリゾートで開かれた。彫刻など40点以上が展示されている。

ハーストの公開展示会がスイスで開かれるのは初めて。作品展「Mental Escapology外部リンク(精神の脱出術)」では巨大な彫刻だけでなく、代表的なシリーズ作品「スポット・ペインティング」、蝶の標本を使った絵画などが並ぶ。会場は屋内外の計5カ所で、新古典主義の建物「フォーラム・パラセルサス」と市内中心部にあるプロテスタント教会など歴史的建造物も含まれる。

ハーストは1990年代に英国で頭角を現したヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)の先駆け。拠点のロンドンから、ソーシャルメディアや電話を通じて作品展の準備を支援した。

ハーストは英紙ガーディアン外部リンクに「サンモリッツに行ったことはないが、どこに何があるかは全て把握している。昔(ゲームの)トゥームレイダーをプレイしていたときのようだ。ヴェネツィアの広場に行って、ここがビデオゲームで見た場所か、と認識するような感じ」と語った。

ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)は、コンセプチュアルアーティスト、画家、彫刻家、インスタレーションアーティストが集まったグループの名称。メンバーの大半はロンドンのゴールドスミス・カレッジに通っていた。

YBAsの中核となる活動は1988年に始まり、それを率いたのがダミアン・ハーストだった。トレイシー・エミンら「YBAsの第2波」と呼ばれる世代は1992~93年に登場した。

YBAsの大半は現在50代後半。YBAsは強烈なインパクトの作風や使い捨て素材を使うことで知られる。メディアへの登場も多く、1990年代の英国のアートシーンを席巻した。

著名な現代アートコレクターで、広告代理店サーチ・アンド・サーチの共同創設者チャールズ・サーチ氏は、ハーストのメインコレクターになった。また、他のYBAsアーティストの活動を積極的に支援した。

YBAsには、サラ・ルーカス、チャップマン兄弟、マーカス・ハーベイ、ジェイ・ジョプリン、レイチェル・ホワイトリードらがいる。

ハーストの作品展で注目すべきは、屋外に設置された3体の大型ブロンズ彫刻だ。全長4メートルの「The Monk」(2014年)は、足を組んでヨガのポーズをした彫刻で、凍ったサンモリッツ湖の湖面中央に展示されている。湖に展示された作品としては初めてのものとなる。湖の南西端には太鼓を持つ「Two Figures with a Drum」(2013年)が展示されている。解剖学的モデルをモチーフにした7メートルの塗装彫刻「Temple」(2008年)は、サンモリッツ湖のほとりにあるホテル、ヴァルトハウス・アム・ゼーにある。

このほかギリシャ神話に登場する変幻自在の海神をモチーフにした「Proteus」(2012年)はプロテスタント教会の外にある。

ハーストのウェブサイトでは、作品展は「サンモリッツ地域の壮大な風景と、アートを展示する街の最も重要な市民空間の両方に関わり、自然、人工、現代、歴史の対話を生み出している」としている。

作品展は、3月24日まで。オンラインでも鑑賞可能。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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