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コンピュータ戦争

スイスもデータの横取りに気をつけなければならない imagepoint

エストニアでは2007年4~5月、インターネットがまったく機能しなくなった。

専門家はこれを「初めての本格的なコンピュータ戦争」と名づけた。スイスでも同様のことが起こりうるのだろうか?

 インターネット上の新聞記事は一切画面に出てこない。銀行の金融取引はまったく機能しない。政府のサイトにもアクセスできない。こうした危機的状況が本当にこの4~5月に、エストニアで起こった。ロシアとの緊張関係に由来するといわれているが、真相は定かではない。ヨーロッパでもっとも発達したインターネットの情報網を持つスイスがもしこの危機に見舞われたらどうなるのだろうか?「情報安全のための分析、情報提供センター ( MELANI ) 」の専門家、マウロ・ビニャティ氏に聞いてみた。

データの横取り

 「十分な専門性と適切な技術を持っていれば、いかなる攻撃、たとえスイスを標的にしたものでも十分に切り抜けられる」とビニャティ氏は自信を持っている。それに今のところ「スイスのサービスや組織を標的にした、エストニアのような攻撃を予想させる兆候はまったくない」と言う。

 むしろスイスでは「有害なコード」と呼ばれる、企業などの重要なデータを横取りしようとコンピュータの機能を変えてしまうプログラムが問題だという。 

 2つの現象があり、1つは情報を盗むスパイ行為。企業や公的サービスが被害者となるもの。もう1つは、中小企業のインターネット上から情報を盗むもの。これは大企業や公共サービスではほとんど起こらない。たとえ起こっても回復機能が十分なので問題にはならないという。

MELANIの役割

 ところで、「こうした被害が大きいか否かは、インフラの回復能力にかかっている」とビニャティ氏はいう。従って緊急事態にインターネットを通して入って来る情報量に耐えうるだけの能力を確保しておくことが肝心。もちろん攻撃されで回復するより、予防しておくことの方がもっと大切である。

 このためMELANIは、情報、コミュニケーションの新技術とその攻撃の危険性について他国と協力しながら日々、監視を続けているという。「しかし我々の任務は、ウイルス駆除や企業のコンピュータの安全管理ではない。あくまで要請に応じて、技術的な支援と調査を行う機関」とビニャティ氏は説明する。

 よく使われるサイバー・テロリズムについて、「この言葉が暗示するような、インターネットそのものが標的にされるようなものではない」と分析する。

 国際的に今までサイバー・テロリズムと呼ばれているものは、インターネットを通じてのテロの宣伝に過ぎない。たとえ、航空機の運行システムを攻撃するような大規模なコンピュータ攻撃が計画されたとしても、これにはかなり高度な技術的知識が必要。従って「多くのテログループはコミュニケーションや力の誇示に使うだけだ」とビニャティ氏は結んだ。

swissinfo、 アンドレア・クレマンティ 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

2003年、連邦財務省 ( EFD/DFF ) 、連邦司法警察省 ( BFM/ODM )及び「スイス教育、リサーチネットワーク ( SWITCH ) 」 は協力して「情報安全のための分析、情報提供センター ( MELANI ) 」を設立し、2004年からスタートを切った。

同センターは、インフラの保護、インターネットとコンピュータのシステムの安全を守る専門家グループからなる。具体的にはチューリヒの「SWITCHコンピュータ緊急対応チーム」、「連邦警察局予防、分析サービス」、「連邦コンピュータ対策ユニット」の専門家で構成される。

同センターは新しい技術を使用する際に伴う危険性についてやコンピュータの最新情報を提供する。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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