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シュヴィンゲン・アルプス祭まであと1カ月

2007年、アーラウで開催された連邦シュヴィンゲン・アルプス祭。優勝を目指して、イェルク・アブデルハルデン ( 左 / 勝者 ) とシュテファン・ファウシュ ( 右 ) の両選手が戦う Keystone

8月20日から3日間の予定で、トゥールガウ州フラウエンフェルトでは、スイスレスリングの祭り連邦シュヴィンゲン・アルプス祭が開催される。

1カ月前の7月20日、フラウエンフェルト ( Frauenfeld ) 駅前のショッピングセンターで、祭りを盛り上げるための紹介イベントが行われた。

入場券はすでに完売

 「42.195キロメートルのマラソンで言えばあと1キロちょっとという所にあります」
 と企画責任者のウルス・シュナイダー氏は、1カ月後に迫った祭りの準備は順調に進んでいると語る。

 フラウエンフェルトで開催される「連邦シュヴィンゲン・アルプス祭 ( Eidgenössisches Schwing- und Älplerfest ) 」は、3年に1度開催される大がかりなスイスレスリングの全国大会だ。今年は北西スイスシュヴィンゲン協会が主催する。スイスの国技シュヴィンゲンは普段、地域ごとの大会があり、そこで「シュヴィンゲン王」が決まる。東京の相撲部屋で力士と練習をした、クリスティアン・シュトゥッキ氏 ( スイスインフォ1月29日記事 ) も有力な優勝候補として競技に参加する。

 今回は3日間にわたり、シュヴィンゲン選手総勢281人 ( このうち6人が外国人 ) が技を競うほか、パックを2メートル以上ある長いバットで打ちあうホルヌッセン( Hornussen ) や石投げといった競技、ヨーデルや民謡など数々の催し物が繰り広げられる大イベントだ。主催者はこの3日間で20万人の人出を見込んでおり、連邦鉄道は特別列車を運行する予定だ。

 競技が開催されるアリーナはスイス軍の協力を得て作られた。4万7500人収容できるが、最高額190フラン ( 約1万6000円 ) の入場券はすでに入手不可能な状態となっている。
しかし
「アリーナに入場できなくとも、70ヘクタールある会場にはだれでも入場できます。しかも、無料で数多くのイベントに参加できるうえ、もちろん競技は大スクリーンで中継します」
とシュナイダー氏は外国からの観光客も是非フラウエンフェルトを訪れてほしいと熱っぽく語った。

スイスの誠実さ都会でも人気

 シュヴィンゲンはスイスアルプスの牧童の力比べから生まれ、土臭さの残る、純スイス的なスポーツだ。スイスドイツ語テレビ ( SF ) のスポーツジャーナリストのネック・レーダーゲルバー氏はシュヴィンゲンこそ「スポーツの中で最も誠実心のあるスポーツ」だという。洗練された映像を通し、普段はトラック運転手だったりする無口なシュヴィンゲンの選手が、巨漢のアイドルとしてマスコミにも扱われるようになり、都会の人にも人気が出てきた。

 綿のシンプルなワイシャツに長ズボンの上に綾織りの麻布の短ズボンを重ねて履き、おがくずの敷かれたアリーナに向かい立つ男2人。相手の背中を地面に押さえつけると勝負が決まる。勝負のほかに技を見る審判が点数を付け、組み合わせは評議会で決める。日本の相撲にも似たレスリング競技だが、両者が離れることなく、がっちりと組んで闘うため、動きに派手さのないこともスイスらしいと言われるゆえんだ。負けた人の背中に付いたおがくずを勝者が手で払ってやるジェスチャーは試合後の和解を象徴する。

 シュヴィンゲン王にはカシの木の葉で作られた王冠。そのほか成績の良かった選手に贈られるのは物品の場合が多く、スポンサーの制限も厳しい。今回の大会ではアルノルドという名前の雄牛 ( 約1万フラン/80万円相当 ) が王者に渡される。しかし「スポンサー契約などでコマーシャルに出ても、大金持ちになるのは夢物語。そもそもなる気はない」と選手の1人、フォーラー・ネルディ氏もテレビのインタビューで答えている。

 大会主催者のシュナイダー氏はシュヴィンゲンの魅力はという質問に
「シュヴィンゲンは力と体と技術を競うスポーツ」
 と簡単な言葉で答えた。伝統よりも若者や女性にもスイス的な誠実さのあるスポーツとしてより幅広く人気となることが、今回の大会に寄せられるシュヴィンゲン関係者の期待のようだ。

佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 、フラウエンフェルトにて、swissinfo.ch 

フラウエンフェルト ( Frauenfeld ) で8月20~22日まで。
20日の14時に開幕。16時からフラウエンフェルトの駅前で旗の交換をした後、街をパレード。
21日8時からシュヴィンゲン競技が始まり22日15時に決勝戦。表彰は18時15分から。
競技のあるアリーナへの入場券はすでに売り切れているが、野外のイベント会場では競技中継のモニターで観戦ができる。
連邦シュヴィンゲン・アルプス祭は1895年ビール/ビエンヌ ( Biel / Bienne ) で第1回が開催された。今回で42回目。 次回は2013年、ブルクドルフ ( Burgdorf ) で開催される予定。今回の大会の予算はおよそ2000万フラン ( 約16億円 ) 。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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