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ジュネーブ多国籍企業のお引っ越し

巨大多国籍企業が移転してくることになったら、ホスト・シティーの受けるインパクトはただ事ではない。プロクター&ギャンブル(P&G)の社員1000人以上がジュネーブの新オフィスに引っ越しの最中だ。

巨大多国籍企業が移転してくることになったら、ホスト・シティーの受けるインパクトはただ事ではない。プロクター&ギャンブル(P&G)の社員1000人以上がジュネーブの新オフィスに引っ越しの最中だ。ほとんどはブリュッセル、フランクフルト、ロンドンのP&G各社から来る。移動は1999年夏から開始され2000年末には官僚する予定だ。

ジュネーブのP&Gオフィスには今300人がいる。ジュネーブへの移転を決定する前に、P&Gは展開している欧州の全都市を調査した。経済的な見地からはダブリンが最も有力な候補だったが、生活の質という面でジュネーブに決定された。文化、言語に悩む社員はいるが、他と比較すると犯罪、公害、交通が少なく欧州の最も美しい地域に近いジュネーブは長く住んでいると好きになる町だという。

P&Gの移転はジュネーブ市当局も積極的に誘致した。国際機関の本拠地というイメージをさらに強化したい当局は、1992年新経済振興政策としてハイテク企業を誘致する事を決定した。P&Gの他、コダック、センプラエネルギー、PSINetが誘致に乗った。大企業が来れば、財政上有利になるのは明白だ。P&Gはジュネーブ社員に1億1、000万スイスフランを支払うため、2、900万スイスフランが州税として入ることになる。結果、ジュネーブ市民に還元されることになり、商店、娯楽などの消費が促進され、地元の雇用が促進されると見込まれる。が、市当局はどんな会社でも誘致するというわけではないと言う。市はコンペンテンシーのある情報産業を望んでおり、科学、コンピューター、金融、マネージメントの領域で市に長く住んでくれる人々に来てほしいと言っている。

大規模移住に問題はある。人口わずか40万人の市に1000家族が引っ越して来れば、住居確保や教育施設に無理が生じる。P&Gでは、影響を緩和するため、全社員の移住に18ヵ月かけ、毎月80から90家族をジュネーブに移している。ジュネーブは比較的小さい町だが約1、500軒の賃貸物件があり、P&G社員が全物件を占拠してしまうことにはならないと言う。国際都市という性格上ジュネーブの住宅市場はとても流動的なため、今の所70%のP&G社員は家探し初日で見つけ、ジュネーブ勤務が始まるまで見つからなかったという人は5%だけだ。また教育問題では、P&Gは地元のインターナショナルスクールに300万スイスフランを寄付し収容人数を増やしてもらった。もちろん社員の子弟の特別扱いなどは要求していないと強調している。ジュネーブ移転の先駆者であるP&Gが慎重に事を進めなければ、他の多国籍企業との間に摩擦を起こし、また地元住民を刺激してジュネーブの経済振興政策の中止をも招きかねない。

P&Gのジュネーブ移転はジュネーブが特別減税を提案したためだという噂が流れた。それに対し州財政部は、スイスの法は他国よりゆるいのだと説明する。スイスの各州が採用している税法では、会社が製品、サービスの売買の80%を国外で行っている場合、補助会社規定の恩恵を受けられる。すなわち、会社はスイスでは収益の20%を得ているだけであり、全収益の20%だけが課税対象となる。州政府が他の税免除を与えることも法的に認められていると言う。P&Gもジュネーブとスイスから与えられた特権は他の移転を決定した多国籍企業と同じものであり、現行の政府政策に基づくものだと強調する。

しかし、ジュネーブが受け入れられる企業の数には限界がある。少なくとも短期的には。





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