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スイスでもマイホームを持つ人が増えてきた

2005年末までに新たに4万戸以上の物件が建設される計画だ Keystone

スイスの住宅市場が近年、活気を帯びている。マイホームを持つことはスイス人にとってもなかなか叶わない夢だったが、低金利などの好条件も手伝ってマイホームを購入するスイス人が増えてきた。

売却価格も以前に比べて手の届くレベルに落ち着いてきており、市民のマイホーム購入意欲に拍車をかけている。

 スイスは、他の欧州諸国と比べて持ち家率がずっと低い。しかし最近になって、スイスでもマイホームを購入する人々が増加してきた。1990年には30.3%だった持ち家率は、2000年には34.6%、2005年には推定36.5%にまで上昇している。

新しい住宅も続々建設ラッシュ

 住宅ローンセンター、ヒポテーケン・ツェントゥルムで顧客コンサルタントを行っているロレンツ・ハイムさんは、この数字は今後更に上昇すると見ている。「若い世代のお客様が非常に増えています。賃貸住宅より住宅ローンを払う方が安いと判断されているようです」

 最も購買意欲がある年齢層は35歳から45歳、次が25歳から35歳である。家族が増えたので落ち着きたいと思い始める年代だ。スイスの人口分布から言うと、この層はこれからも増えていく。

 住宅の供給戸数は、過去連続して8年間減少傾向をたどっていたが、2003年に入るとやっと歯止めがかかって前年比11.2%増となった。別の住宅コンサルティング会社、ヴュースト&パートナーのディーター・マルメット氏も、「供給戸数は目に見えて増えました」と語る。「2003年だけで住宅とアパートが3万2000戸、2004年には3万6000戸、そして今年は3万6000戸も建設される予定です」

金利の落とし穴に気をつけて

 住宅アナリストによると、今は金利が低いため、賃貸よりも家を買ってしまって住宅ローンを払う方が経済的だ。

 クレディスイスのウーリッヒ・ブラウン氏が説明する。「この30年から40年を振り返ってみても、これほど低金利だった時期はめったにありません。住宅ローンを組むなら最高のタイミングといえるでしょう」

 しかし、前出のマルメット氏は「この低金利の時代がいつまででも続くわけではありません」と警告する。「住宅ローンを支払っている期間の間に、金利が上昇するのはほぼ間違いありません。そのような場合でもローンをきちんと返していけるのか、慎重に検討するべきです。家を買う時には、住宅ローン開始時だけではなく返済期間を通した平均の金利を頭に入れておくことが非常に重要です」

バブルの爪跡

 住宅市場は1990年後半にバブルがはじけて価格が急落した。最近の住宅市場の活況も、かつてのレベルには到底及ばない。1990年代の住宅バブル時代に購入した住宅を売ろうと思えば、購入価格よりも15%も安い値段を付けなければいけない。この時の影響は現在にも暗い影を落としており、買ったはいいものの、いざ売ろうと思った時に価値が急落して大損するのではないかと心配する人も多い。

 しかしクレディスイスのブラウン氏は楽観的だ。「当時に比べて経済状況はまったく変化しています。当時は、スイス経済は4〜5%も成長し続け、インフレも金利も非常に高かったのです」

 「時代はまったく変わりました。経済成長はたったの1.3〜1.5%、低い金利でインフレもそれほど高くありません。短期的、長期的に見て住宅価格が急落するなどということはありえません」

借りるのは簡単

 銀行としてはこの低金利時代にどんどん貸し出しを増やしたい意向だ。今までの常識では、銀行が設定するLTV比率は(Loan to Value Ratio、担保掛目率。不動産担保価値に対する貸出額の比率)80%で、それ以上はハイリスクになるとして融資は行わなかった。

 「しかし最近では年金を追加の担保として含め、LTV比率を100%にまで上げることも可能です」と好条件を説明するのは前出の住宅ローン・コンサルタント、ハイム氏。

 しかし、これも住宅コンサルティング会社のマルメット氏に言わせればあまり説得力を持たない。「住宅を買えるだけのお金を持っていても賃貸を選ぶ人々は、いつも一定の割合でいます。一つの理由として、買うよりも賃貸マンションの方が何かと面倒臭くないと思う人々も多いからです。しかも、魅力ある価格で魅力ある賃貸マンションがいくらでも見つかるのですから」

swissinfo、クレア・オデア 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

2005年のスイス持ち家率の割合は全体の36.5%(推定)となった。(1990年は同30.3%)

ドイツでは同43%、フランスでは同55%、オーストリアでは同56%。

住宅を購入する年齢分布で1番多いのは35歳から45歳。

2003年の住宅建設は前年比11.2%増。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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