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スイスで働く日本人 日本人建築家が語る スイスで長時間労働ができない本当の理由 

バーゼルの社屋でプロジェクトメンバーと打ち合わせをする合屋さん

バーゼルの社屋でプロジェクトメンバーと打ち合わせをする合屋さん

(Burckhardt+Partner/Tota Goya)

日本の「働き方」は、スイスで働く日本人の目にどのように映るのか。現在、日本の国会で審議中の働き方改革関連法案には、長時間労働の是正、多様性のある働き方、高プロ制度の創設などが盛り込まれるが、制度改革だけで慣習が変わるかどうかには疑問もある。日本で社会経験を積んだあと、海を越えスイスで働く日本人が、スイスの長時間労働における日本との決定的な違いを語った。

 合屋統太さん(37)がスイスに来たのは2008年。東京の建築事務所に新卒で就職し、2年間勤務した後、外国で経験を積みたいという思いからスイス・チューリヒの建築事務所に移った。スイス国内のいくつかの建築事務所勤務を経て、現在はバーゼルの建築事務所Burckhardt+Partner他のサイトへ(本社:バーゼル、従業員370人)で働いている。

 スイスで働き始めてから10年。ペースに違いはあるものの、建築業界に関しては、日本とスイスで仕事内容は基本的に変わらないと話す。また、「ものを生み出す」という仕事の性質から、日本同様、勤務時間も不規則だ。例えばコンペの締め切り前などは残業や休日出勤をすることもある。それは同事務所で唯一の日本人として働く合屋さんだけでなく、国際色豊かな同僚たちも同じだという。「強要されるわけではないが、クリエイティブな場でそういう細かいことは言っていられない」。

日本とスイスの決定的な違い

 だが決定的に違うのは、日本では長時間労働による慢性的な疲れを感じていたことだ。合屋さんはその原因を、スイスで働く中で見つけた。「スイスと日本では会社のまわりで出来ること、出来ないことが違う。それが労働スタイルの違いを生んでいた」。

 日本は長時間労働を支え、その常態化を可能にする社会のしくみが出来ている。「東京ではどこでも近くに安く食べられるお店があるし、食べてからすぐ会社に戻ることができる。対してスイスは外食産業が充実していないしお金もかかるので、日本ほど気軽に行けない。それにスーパーはだいたい午後6時に閉まってしまう」。結果として「お腹が空いて夜遅くまで仕事をしていられない」。

 もちろん「一人で状況を変えるというのは割と不可能で、日本ではクライアントなど、まわりが夜中の打ち合わせも平気となれば、なおさら難しい。上司に合わせて動くという風潮もある」。だが、そうして夜中まで働くと結果的に朝のスタートが遅く、疲れも取れないため仕事がはかどらない。上司は朝10時頃、コンビニで買った朝ごはんを片手に出社し、お昼頃からようやく本格始動する。日本ではそのような労働スタイルが効率性を阻害し、慢性的な疲れを生み出す一因だったと合屋さんは振り返る。

建築家の典型的な1日のタイムスケジュールのグラフ
(swissinfo.ch)

 スイスで合屋さんは朝7時に起床。出社時間はフレキシブルだが、子供を幼稚園に送るため8時には家を出る。会社はプロジェクト予算を無視した「残業」や、上司が決定を下すまでの「無駄な待ち時間」を敬遠する。「もし勤務時間内に7時間の『空き』が発生すれば、上司部下関係なく家に帰って休憩し、会社もそのように求める。対して日本では上司のことを待つ部下が多い」

 建築事務所としてクリエイティブな部分も大切にしたいという会社の方針もあり、労働時間をどう使うかの最終判断は従業員一人ひとりに任せられる。「例えば建築家自身がインターンと一緒に延々と模型を作ることは本来、時間もかかるため敬遠される。だが担当建築家が目的意識を持ってやっていれば尊重される風潮がこの会社にはある」

 また古い体制の革新に力を入れ、働き方の多様性も幅広く認める同建築事務所は驚くほど柔軟だ。「例えばローマに住みながら週に2、3日だけ働きにくる同僚や、週末はドイツのベルリンに帰る同僚、また秋から冬にかけて半年間働いて、あとの半年間は無給で休む同僚もいる」。

建築事務所Burckhardt+Partnerのバーゼル社屋

建築事務所Burckhardt+Partnerのバーゼル社屋。「オンライン上の共有カレンダーでスタッフの予定が把握できる。コミュニケーションはスカイプで着席状況を確認し、直接席に出向いて話すことが多い。会社の風通しは良く、開放的で色々な人と話す機会がある」(合屋さん)

(Mark Niedermann, Burckhardt+Partner AG)

変化にフレキシブルな日本 

 「労働観や働き方の違いは国ごとにあっていい。社会のベースが違えば、それは当然のこと」。そう話す合屋さんは、日本の今後に期待を寄せる。日本で働く友人や昔の同僚と話をすると、日本が「変化に対してとてもフレキシブル」だと感じるという。

 スイスでは何か一つのことを変えたり、始めたりするときには時間がかかる。「建築に関して言えば、皆が納得するまで議論が続くため、プロジェクトが開始するまでに何十年もかかることは珍しくない。竣工時にはプロジェクト発足当時のメンバーが誰一人居ないということもよくある」。それに比べて日本は「変えていくことに勢いがあるし、変わるとなるとすごく変わる」。

合屋統太(ごうやとうた)さん略歴

建築家。1980年生まれ。フランスおよびドイツへの留学を経て、2005年東京大学大学院工学系研究科修了。坂茂建築設計(東京)勤務ののち、スイスへ渡る。現在Burckhardt+Partner(バーゼル)勤務。

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