スイスのメディアが報じた日本のニュース

今週(9月22日〜28日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから4件をピックアップ。要約して紹介します。
「日銀、大規模緩和を維持」「F1日本GPでフェルスタッペンが勝利」「日中韓首脳会談へ」「スイスが日本の医療制度に学ぶこと」「リートベルク美術館の着物展」「日中韓首脳会談へ」―といったトピックスが取り上げられました。
この中から今回は「日銀、大規模緩和を維持」「日中韓首脳会談へ」「スイスが日本の医療制度に学ぶこと」「リートベルク美術館の着物展」をご紹介します。
日銀の大規模緩和維持
日銀は、21~22日に開いた金融政策決定会合で、短期金利をマイナスにし、長期金利をゼロ%程度に抑える長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)の継続を決めました。
ドイツ語圏の経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは、植田和男総裁が好調な企業収益から来春の賃上げ交渉の良い前兆だとの見方を示したものの、「現在は実質賃金の縮小が懸念されている」と指摘。引き締め見送りを受け円安が進んだことにも触れ、「自国通貨の下落は、資源に乏しいこの国に輸入価格の引き上げをもたらす。一段の円安を受け、政府は口先介入を行った」と解説しました。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/独語)
日中韓首脳会談
ドイツ語圏の日刊紙NZZは28日付で、日中韓が模索する3カ国首脳会談の意義を解説しました。
「日韓の動きは、現在対中政策を模索している欧州諸国にとって特に有益だ」。NZZはまず、会談が持つ欧州にとっての重要性をこのように分析。両国は「中国との経済関係や安全保障政策上の対立が非常に強いにもかかわらず、対立と協力を混在させることを恐れていない」と描写しました。
特に日本については、尖閣諸島付近で生じた海上保安庁巡視船と中国漁船との衝突を契機に中国が2010年に導入したレアアースの対日輸出規制の後、「中国戦略の策定を始めた最初の国であり、現在世界的なトレンドとなっている」と位置付けました。
そして「首脳会談から大きな政治的変化や画期的な決定を期待すべき人はいない。しかし、だからといって隣人同士の出会いの価値が変わるわけではない。現在の沈黙を考慮すると、定期的な会合を復活させることは、状況を沈静化し、紛争が誤って戦争に発展するリスクを軽減する上で重要な貢献となるだろう」と結んでいます。(出典:NZZ外部リンク/独語)
スイスが日本の医療制度から学ぶこと
フランス語圏の日刊紙ル・タンに掲載されたオピニオン記事で、ジュネーブ出身のアントワン・ロート外部リンク東北大助教(法学)は日本の医療保険制度について思うことを寄せました。
ロート氏は、夏にスイスに滞在した時にスイスでの医療費問題に対する議論の大きさに驚いたと言います。日本でも医療費の増加は問題になっていますが、「現行モデルの限界については同じようには感じていない。一般的に言えば国民は医療制度の機能にかなり満足している」と語りました。
ただ日本とスイスは中央集権と地方分権、集団主義と個人主義といった政治や文化的な違いから、日本の制度から得た教訓をスイスがそのまま適用するのは難しいと指摘。それでも公平性や一貫性は日本の長所であるとし、「スイスは確かに連邦国家ではあるが、州間の費用負担や手続き、価格に関するルールを簡素化・調和させる必要があると認識しない限り、この問題に対処できないだろう」と提言しました。(出典:ル・タン外部リンク/仏語)
プロパガンダに使われた着物
ドイツ語圏の日刊紙NZZはチューリヒにあるリートベルク美術館で開催中の着物展外部リンクに際し、その歴史と文化を解説しました。着物は家紋や柄、デザインが所有者の社会的属性を象徴するものの、それは着物を着た人の自己実現ではなく「社会を標準化するためのものだった」と説明。帝国主義時代には軍艦や戦車がプリントされるなどプロパガンダに使われ、20世紀初頭にはヨーロッパのファッションに影響を与えたことを紹介しました。(出典:NZZ外部リンク/独語)
今週のスイスのニュース
今週最も注目されたスイスのニュースは「スイス軍、軍事施設の民間売却を中止」(記事/日本語)です。他に「スイスでオーロラ観測」(記事/日本語)や「バーゼル市、物乞い11人を追放」(記事/英語)が良く読まれました。
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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は10月6日(金)に掲載する予定です。

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編集:宇田薫

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