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スイス国民投票、ブルカ着用禁止を可決

キャンペーンポスター
Keystone / Laurent Gillieron

スイスで7日、国民投票が行われた。ブルカやニカブなど顔を覆うベールを公共の場で着用することを禁じる国民発議は賛成51.2%と僅差で可決された。

スイスの有権者が是非を判断したのは、公共の場でのベール着用禁止、デジタルIDの導入、スイスとインドネシアの自由貿易協定(FTA)承認の3件。

イニシアチブ(国民発議)「ベール着用禁止に賛成」は可決された。デジタルIDの導入は否決。対インドネシアFTAは可決された。

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ブルカイニシアチブ

イスラム教徒の女性が身に着けるブルカやニカブを含む、公共の場で顔を覆うベールなどの着用禁止を求めたイニシアチブ「ベール着用禁止に賛成」は、保守系右派国民党の議員が主導するエガーキンゲン委員会が提起した。同委員会は2009年、イスラム寺院の尖塔新設を禁止する「ミナレットイニチアチブ」を可決させている。

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スイス政府・議会は共にイニシアチブの否決を推奨。役所や公共機関で身分確認を求められた場合などにのみベールを取ることを義務付ける間接的対案を支持していた。

直近の世論調査で賛成は49%と過半数をわずかに下回り、賛否が拮抗していた。

7日の投票では、有権者の51.2%が公共の場でのベールの着用禁止を支持。州は18州が賛成し、可決された。

公共の場所で顔を覆うベールの着用禁止措置は、既にベルギー、フランス、オーストリアなどで行われている。国内ではティチーノ州とザンクト・ガレン州で適用されている。スイス国内で何人のイスラム教徒の女性がブルカ、ニカブを着けているのか明確な統計はない。ルツェルン大学の調査によると、ニカブを着ける女性は国内に20~30人で、頭からつま先までを覆うブルカはさらにまれ。

電子身分証法

インターネット上の個人認証に関連する規則を定めた新法案「電子的な身分証明サービスに関する連邦法(eID法)」は2018年に議会で可決されたが、超党派で作る委員会がレファレンダムを提起し、必要な署名を集めて国民投票に持ち込んだ。

新法案によるとIDは任意で、本人の申請を受けて民間企業がeIDを発行する。政府の役割は、申請者の個人情報が正しいかどうか、民間企業にデータを提供することに限定される。そのため超党派で作る委員会は「民間企業ではなく国がIDを管理しデータの悪用を防ぐべきだと」法律施行に反対していた。

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直近の世論調査では反対が54%だった。

7日の投票では、有権者の64.4%が反対票を投じた。

電子IDを導入する最初の試みは10年以上前に失敗している。2回目の今回も同じ運命を辿った。

対インドネシアFTA

対インドネシアFTAは2019年12月に議会で可決されたが、レファレンダムを提起した左翼の連合団体が有権者6万1千筆以上の署名を集め、国民投票に持ち込んだ。

対インドネシアFTAでは、インドネシアに輸出されるチーズ、医薬品、スイス製時計などの関税が撤廃される。インドネシアはその見返りに、非関税で工業製品をスイスに輸出できるようになる。インドネシアが世界有数の輸出国であるパーム油など、一部農産品の関税も引き下げられる。

同案件の争点となったのはパーム油で、反対派はパーム油栽培が熱帯雨林の破壊に繋がると訴えていた。一方支持派は、減税の対象となる輸入パーム油は、環境基準を満たしたものだけだと反論していた。

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直近の世論調査では過半数をわずかに上回る52%が賛成していた。

ジュラ、ジュネーブ、ヴォー、ジュネーブ、ヌーシャテルなどフランス語圏の州で反対票が過半数を超え賛否が拮抗したが、最終的には賛成51.7%の僅差で可決された。

国際貿易取引に関する全国的な国民投票が行われることはまれ。前回このような案件が国民投票に掛けられたのは1972年だった。


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