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スイスの山のスペシャリストに聞く 「山岳ガイドは自分の命を危険にさらす数少ない職業」

山岳ガイド

スイスには有資格者の山岳ガイドが約1500人いる

(Manuel Lopez)

スイスアルプスで今年4月、イタリア人登山家5人を含む計7人が死亡する事故が起きた。犠牲者の中には、山岳ガイドも含まれていた。このような事故が起きると、往々にして責任を問われるのは山岳ガイドだが、ガイド自身も顧客のために自分の命を危険にさらしているー。山岳ガイド歴25年のピエール・マセイさん(52)はそう明かす。

 4000メートル級の山が50カ所以上あるスイスは、登山家にとっては絶対に訪れたい国だ。何千人もの人たちが毎年、マッターホルンやユングフラウの山頂を目指す。マセイさんは「人は山頂にたどり着けなかったときに失敗だったと言うが、私にとっての失敗は、(無事で)家に帰れないことだ」と話す。マセイさんはスイスの山岳ガイド25年のベテラン。スイス山岳ガイド協会(ASGM)他のサイトへの事務局長も務める。

スイスインフォ: (4月の死亡事故について)数多くのメディアが報じており、それを見ると山での事故が増えている印象を受けます。それは事実でしょうか。

ピエール・マセイ: 幸いにも、真実はその逆です。スイスで登山する人の事故に関しては、夏も冬も減少しています。これはアルプスを抱く国々に共通する傾向です。

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スイスインフォ: それはなぜですか?

マセイ: 今日では高度な雪崩探知機など、昔より優れた装置があります。情報や予防も改善しました。雪崩情報などが良い例です。毎日朝と夕方に2回、雪崩情報を流しているのはスイスだけです。

もう一つは、山岳ガイドの訓練と趣味で山に登る人たちの準備講座や再講習があることですね。とても重要な要素です。アルペンクラブのおかげです。

スイスの山ベスト10

スイス政府観光局他のサイトへが選ぶスイスの山ベスト10は以下の通り。

マッターホルン(ヴァレー、ヴァリス州)、ユングフラウ(ベルナーオーバーラント/ヴァレー州)、リギ(シュヴィーツ州)、アイガー(ベルナーオーバーラント)、センティス(ザンクト・ガレン州/アッペンツェル)、シルトホルン(ベルナーオーバーラント)、デュフールシュピッツェ(ヴァレー州)、ピラトゥス(ルツェルン州)、ニーセン(ベルナーオーバーラント)、ピッツ・ベルニナ(グラウビュンデン州)。

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スイスインフォ: 事故は人が間違いを犯すことで起こるのでしょうか。

マセイ: 人という要素は常にありますが、「間違い」というのは必ずしも正しいとは限りません。人が山に行くときは、予測不可能なことが起きるという点を受け入れなければなりません。山に規制はないし、普通の高速道路などとは違って、安全確認が定期的に行われているわけではありませんから。

よく「山が人を殺した」と言われますが、それは正しくありません。山は誰も殺しません。もちろん、クレバス、落石、雪崩などの危険はあります。しかし、自分が山に行くと決めた以上、自分の身を自分で危険にさらしているのです。山岳ガイドとしての私たちの役割は、このリスクを管理し軽減することです。お客さんと、自分自身のために。

スイスインフォ: マッターホルンは世界中で最も人が命を落とす山です。1865年の初登頂他のサイトへ以来、500人以上の死者が出ています。マッターホルンは特に危険なのですか?それとも登山者が単に多いからですか? 

マセイ: 両方だと思います。毎年3千人がマッターホルンに登ります。それと比べてモンブランは2万人です。モンブランでも事故は多いですが、全て生死にかかわる事故に直結するわけでありません。一方、マッターホルンの登山は難しい。尾根に沿って歩くことが多く、一歩間違えば落下し命を落とします。

マッターホルン

マッターホルン(4478メートル)はスイスの重要なシンボルだ

(KEYSTONE/ VALENTIN FLAURAUD)

スイスインフォ: 今年4月末、ヴァレー(ヴァリス)州でイタリア人5人を含む7人が山で死亡する事故が起きました。これは近年でも極めて多い数字でした。この悲劇から得られる教訓は何でしょうか。

マセイ: 3年前から、私たちはミスや事故から再発防止策を学ぶための情報交換を強化しています。スイスのアローラ山で起きたこの事故に結論を出すのは時期尚早でしょう。ただ、はっきりしているのは、いくつかのことがうまく機能せず、事故が起きたということです。不慮の事態が重なったのでしょう。このような悲しい出来事が起こるのは、幸いにも50年に一度といえます。

スイスインフォ: 一方で、山岳ガイドの責任を問う声もありました。

マセイ: 人的ミスだととやかく言うのは間違っています。(死亡した)山岳ガイドは大人数のグループを先導していました。それは事実です。でも彼ら(登山客)は経験者でした。実際に何が起こったのか推測することは難しい。おそらく自然の脅威が山岳ガイドの力に勝ったのでしょう。 

「イタリア人の山岳ガイドは、自分の命を犠牲にして顧客を救おうとしました。これ以上何を求めようというのでしょうか?」

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スイスインフォ: どうやったら安全な登山ができるのでしょう。

マセイ: それにはいくつかの要素が挙げられます。技術的な訓練、経験、そして何よりも自分自身に問いかける能力を持つことです。自然は私たちよりも強い。だから自然に対して謙虚でいなければなりません。私は「山頂を制覇した」などという言い回しは好きではありません。なぜなら自然には勝てないからです。人は何かを征服するために山に登るのではありません。忘れがたい経験、感情を得るために行くのです。山岳ガイドが「思い出作り請負人」として知られているのは当然といえます。 

スイスインフォ: 常に山岳ガイドに同行してもらわなければなりませんか?

マセイ: いいえ。アルプスは世界でも例外で、入山は無料ですし、その他の料金や規則もありません。

スイスインフォ: スイスの山岳ガイドの給料は?

マセイ: 1日の平均収入は650フラン(約7万1500円)です。ですが、1日の労働時間は10~12時間なので、時給はかなり低いです。マッターホルン登山は2日がかりで、標準のガイド料金は1300フランです。しかし、山岳ガイドの経済状態は常に不安定ですよ。キャンセルが入れば収入はゼロになってしまいますから。

ピエール・マセイさん

(Pierre Mathey)

スイスインフォ: あなたの仲間の一人は「山岳ガイドというのは死なないことで生計を立てる唯一の職業だ」と言いました。あなたはどう思いますか?

マセイ: 正直言って…それはひどい発言ですね(笑)。もちろん、登山家は危険な職業ですが、リスクは計算可能だし、コントロールもできます。でも、自分の命を危険にさらす数少ない職業の一つであるということは否定しません。アローラ山での事故だって、いずれ司法の場で明らかにされることですが、イタリア人の山岳ガイドが何かミスを犯したとしましょう。でもそのガイドは自らの命を投げ出して顧客を助けようとした。それ以上に何を望むというのでしょうか?

スイスインフォ: 25年間のキャリアの中で、登山家の仕事はどのように変わりましたか。

マセイ: 顧客の国際化が進み、日々変化しています。日進月歩の世界です。以前はもっと固定客がいて、同じガイドの元に戻ってきたり、ガイドと数週間、行動を共にしていたりしていました。顧客との関係も変わりました。以前は、ガイドが先に進み、顧客がその後をついてくるスタイルでしたが、現在は相互の交流がより強まっていますね。顧客は知識をきちんと得ていますし、山やそれ以外のことについてガイドと話したいようです。

スイスインフォ: 生死にかかわる事故を経験したことは?

マセイ: 何回かありますね。野外で夜を明かしたこともありました。しかし、幸いにも重大な事故を経験したことはないです。

スイスインフォ: 山の愛好家に送る、とっておきのアドバイスは?

マセイ: 天候と地形を把握し、適切な装備を選び、補給品を携行して下さい。疲労と寒さは命にかかわります。情報と予防は必須です。山に入るときは誰かに行き先をきちんと伝えて下さい。トラブルや危険が生じた場合には、遠慮せず助けを呼んで下さい。

優秀な山岳ガイドの見分け方

スイス山岳ガイド協会他のサイトへによると、違法または無許可の山岳ガイドが増えている。競争関係を不当に逃れるだけでなく、こうしたガイド(ほとんどは国外から)は顧客の命を危険にさらすこともある。 

スイス山岳ガイド協会のピエール・マセイ事務局長は、スイスの各地域にある山岳ガイドの事務所やクライミングスクールに連絡するよう呼びかける。また協会の山岳ガイドデータベースを確認することも一つの案だという。ガイドの名前がこのリスト他のサイトへにあれば、きちんとした有資格者であるということだ。

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(独語からの翻訳・宇田薫)

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