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スイスの温泉地で割烹旅館を建てる

お茶室にもなる旅館の客間。温泉の意味のスイスのバーデンに割烹旅館を建てた。

(swissinfo.ch)

お風呂という名前のバーデン市の近郊に「兎山」という名の山がある。この頂上に日本でも最高級クラスと評価される割烹旅館が建ったのは昨年10月。田舎村に一気に日本の文化を広めた倉林正文さん。スイスで活躍する日本人投資顧問の横顔である。

 日本でも10本の指に入る板前が料理する。トップクラスの腕の大工が、日本から持ち込んだ素材で建てた純和風の割烹旅館。中途半端の一流やちょっぴり日本風など、もってのほか。超一流でなければ、億単位の資産を動かす倉林正文さんには似合わない。旅館から見えるアルプスの眺めも、もちろん、超一流なのである。

 毎日のジョギングで気になる建物があった。倒産寸前のレストランである。アパートを建てるつもりだった。村の規制で「公益に繋がるもの」でなければならないと知ったのは、買った後。ただお金を右から左に動かすのではなく、目に見えて残ることをしたいという欲求にも応える旅館の経営はどうか。採算面でも自信があった。日本通ばかりではなく、和食を食べたことのない地元の人も噂を聞いてやってくる。彼のいまは最高だ。

 大学卒業後、野村證券に入社。ドイツ語が活かせるチューリヒに転勤したが1985年、スイスの老舗銀行へ転職し、その後、独立。「プライベートバンキングに携わる日本人のバンカーがいまは多いものの、当時はほとんどいなかった」と先駆者を自負する。

 「社会経済学的に意味があること」と何度も語る倉林さん。資産10億円の中から1億を動かすより、若い人たちの起業の助けになりたい。いまの自分があるのは、野村証券での経験、国文学の学者である父親、そして奥さんのおかげ。周りの人たちに助けられたという感謝と冷徹な計算が混在する、スイスで成功した日本人のひとりである。

スイス国際放送 聞き手 佐藤夕美 (さとうゆうみ) 

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