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スイスの言語教育論争  

多くのドイツ語圏で公用国語であるフランス語より先に英語を小学校3年から導入することを決めた。

(RTS)

多言語国家スイスでは母語以外に4つある公用語の1つを小学校から習う。しかし、ここ数年前から行われている義務教育改革案で多くのドイツ語圏の州が今まで5年生から始めていたフランス語にかわって英語を3年生で、フランス語の先に導入しようと方針を変えた。

フランス語圏のほとんどではドイツ語を第1次外国語として選んでいるため、ドイツ語圏のこうした傾向に少数派言語であるフランス語圏が苛立ちを感じており、政治的統一が危惧されると怒りをあらわにしている。

求められる英語教育

 今までの義務教育プログラムでは独語圏では5年生(10歳から11歳)で国語(一般的に仏語)を、中学校から英語を習っていたが、2004年秋からルツェルンなどスイス中央部地域で英語を3年生(8歳から9歳)から導入する方針が決まり、2005年秋にはチューリヒなどスイス東部地域もこれに習う。つまり、半分以上のドイツ語カントンは英語を優先し、ベルンやバーゼルなど言語国境に近い州だけが国語であるフランス語を優先することになる。

 ラテン語系カントンの7州がすでに3年生からドイツ語を導入しており、英語は中学校からしか始めていない。この不均衡な事態に仏語圏では反発が強く、「破局的だ」とジュネーブ州のシャルル・ビア州議院は嘆く(1月16日付け、仏語圏新聞「ルタン」)。ビア氏は同紙に「このような政治的な問題を州の教育委員会に任せるのに問題がある」と語っている。連邦制のスイスでは義務教育のプログラムは独立した自治州が政策決定を行うためだ。

 この背景には少数派の言語出身者はドイツ語(人口の63.4%)を取得しなければスイスで出世、就職などが難しいのに対し、チューリヒなど国際企業が多く進出している地域では英語が将来不可欠と考えるからだ。言語学的にドイツ語と英語は近いため、英語を先に習うほうが優しいという主張する言語学者の声も聞く。

英語がスイス人の公用語に?

 州の教育プログラムに国の調和を図ろうとする州教育委員会代表議会(EDK/CDIP)の義務教育改革局のオリビエ・マダラン氏は「フランス語を捨てて英語にかえようという訳ではない」と強調する。同議会の目的は「小学校で二つの言語(英語+国語)を導入することで英語が先かフランス語が後かは問題でない」と語る。最終的にはドイツ語圏では3年生で英語、5年生でフランス語の導入を目指している。

 しかし、英語導入に抵抗を示しているのは意外にも小学校の教員である。調査を行ったチューリヒ教員4千人のうち、61%の人が小学校で2つの言語を習うことに反対している。教員はこれまでフランス語を教える訓練を受けてきたので、英語まで加えると教員側の負担が大きいことが原因に挙げられるが、小学生にてっても負担が大きすぎると考える人も多い。

さらに複雑なスイス言語事情

 さらに言語事情が複雑な背景には「ハイジャーマン」(標準ドイツ語)とスイスで話されるドイツ語の方言がかなり違っていることにある。この方言ドイツ語を話して暮らしているスイス人にとって、ハイジャーマンを教わることは外国語を教わるようなもので小学生には負担の一つである。このため、州教育委員会代表議会では幼稚園から標準ドイツ語の導入を勧めている。この違いも手伝って、同じ会社で違う言語出身のスイス人同士が話し合うときは英語が使われることが多いという。

 これに加えて、スイス生徒の4人に1人は4つの国語以外の母語を使用している移民層がある。2000年の統計局の数字によると、スラブ系言語を話す人口は1.1%(7万7千人)とロマンシュ語の0.5%(3万5千人)を遥かに超える。これらの移民層は母語に加えて家で話さない国語と英語を習うことになる。

 同上のマダラン氏は「多くの言語を学べることはこのような移民層に公平な機会を与えることになる」と説明する。「EUでもなるべく早い時期に多言語を導入するという動きになっており、スイスのような小さい国で多言語を操ることは子供の将来を左右する重要な切り札である」と力説した。


スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)

補足情報

<スイスの言語状況>

- 多言語国家スイスの4つの国語はドイツ語、フランス語、イタリア語とラテン系のロマンシュ語である。

- 2000年の連邦統計計局による国勢調査によると第一言語としてドイツ語を使用する人はスイス人口の63.7%、フランス語は20.4%、イタリア語は6.5%でロマンシュ語は0.5%だ。

- 使用言語を州別にみると全26州(準州も含めると)のうち、独語が17州、仏語が4州、伊語が1州に独語と仏語か共存するバイリンガル州が4州(うち1州はロマンシュ語も入り3ヶ国語を話す)。

- ドイツ語圏での義務教育で英語はこれまで中学校から始めていたのが小学年3年生から、フランス語は5年生から始めていたものを中学校から始めることになった。

- フランス語圏のほとんどでは既にドイツ語を3年生で導入し、英語は中学校から始めている。

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