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スイスは変わらなくてはいけない

「スイスは自分の政治システムを宗教のように信じている」と語るヴィットマン氏

(Keystone)

スイスの著名な経済学者、ヴァルター・ヴィットマン氏にかかればスイスの政治家も形無しだ。同氏は「政治家の言葉は全く薄っぺらだ」と切り捨てる。

スイスインフォの取材に答え、「唯一、彼らに目的があるとすれば改革の足を引っ張ることだね」と憤慨気味だ。

 この大学名誉教授は、スイス東部のバートラガッツの自宅で隠居生活に入るつもりは毛頭ないらしい。近年は、なんと毎年1冊のペースで新しい本を出版している。次の本は今年2月に出版される予定だ。「古い概念の破壊者」はにっこり笑った。「暗い冬には、忙しくしていないとね」。ヴィットマン氏の最新の著書、『スイスのキャッチフレーズ』では、政治家の発した言葉が入念に分析されている。

swissinfo : どうして政治家の言葉を分析しようと思いたったのですか。

ヴィットマン : きっかけは「我々は何の理由もなくうめいたりしない」というハンス・ルドルフ・メルツ財務相の言葉だね。 

スイスの市民のうち4割の人は保険料を満足に払うことができないでいる。こんな問題を棚上げにして、政治家は無責任に言いたい放題だ。それにしても100年間同じことを馬鹿みたいに繰り返しているのはあんまりだと思うね。誰かが「それは意味がありませんよ」と言ってやらなくちゃ。  

swissinfo : スイスの経済成長がかんばしくないことと、改革が進まないことについて批判されていますね。けれども、スイスは今、記録的な経済成長を遂げていますが。

ヴィットマン : 経済成長がかんばしくないということを議論するには、正しい時期ではないということは分かっている。確かに今、経済は回復しているが、これは目新しいことではないんだよ。しかも、あらゆる統計によると、この経済回復は来年まで続かないことを示している。

一方、経済が成長基調に乗ったことで、社会構造の弱点に目を向けることがなくなってしまった。実際は危険信号が点滅しているのに、人々は気がついていないだけなのだ。

swissinfo :  それはなぜなのでしょう。

ヴィットマン :  これはもう、宗教のようなものだね。スイスという国やその政治システムは世界で最も素晴らしいものだと、頭から信じ込んでいるのだ。もし、何かを完全に信じていれば、それについて何か疑問に思ったりしないものだよ。

そんな中で、疑問を持つ人間は変人扱いされる。だから私も変人だということだ。このような雰囲気があるからこそ、改革がスムーズに進まない。

swissinfo : スイスでは、全てに関して時間が非常にかかるというだけなのではないでしょうか。

ヴィットマン : そのとおり。スイスの政治家のキャッチフレーズの1つに「どこよりもゆっくりと」というのがあるほどだ。それでも全く改革を進めないシステムに対しては、疑問を投げかけていくべきなのだと思っている。そうじゃないと、誰もこのステップを踏み出そうとしないじゃないか。非常事態になるまで、人々はただ待っているだけだ。

swissinfo :  政治システムでいいますと、多数派システム ( majority system ) を再導入するべきだというお考えですね。

ヴィットマン : これは1919年以前に施行されていたシステムで、今の憲法でも充分可能なのだ。

批判を受けるのを承知で言うが、連立内閣で最低でも300の法律に修正を加えるべきだ。これを同時に行えば、国民投票 ( レフェレンダム ) にかけなくて済む。この修正案全てに対し、投票に必要な数の署名を集めるのは不可能だからね。

Referendum

Laws which have been adopted by parliament can be challenged by the public in a referendum. For such a ballot to take place, at least 50,000 ...

swissinfo : 責任ある仕事がなかなかスムーズに引き継がれないことについても批判していらっしゃいますが、これは変わっていないと思われますか。

ヴィットマン : 全く変わっていないね。今、私には改革のための強いリーダーシップをどこにも見つけることができない。スイスは多くの可能性を持った国だが、政治経済システムがコネでまわっていることが問題だと思う。誰と誰が知り合いか、ということが非常に重要なのだ。

つまり、公正な自由競争で勝ち取ったキャリアではないわけだ。アドレス帳にどんな名前と連絡先が書いてあるかで仕事が決まってしまう。これを「閉ざされた社会」と呼ばずして何と呼ぶべきだろうか。

人々は、スイスがリベラルで自由な国だといっているが、誰にとって自由なのかね。私から見れば、「人脈のある人間にとって自由な国」とでも言いたいね。

swissinfo : けれども、もしこの社会システムがこのまま続くにしても、変わるにしても、それだけで充分でしょうか。

ヴィットマン : 我々はまだ最終的な段階まで達していない。この悪い状態がある期間続くのは仕方ないだろう。1970年代からだんだんと、スイスは以前持っていた素晴らしいものを無くしつつある。 

1946年から1973年にかけて、スイス経済は非常に豊かになった。第二次世界大戦直後には、他の国は輸出できるほど経済が回復していなかったので、我々は世界市場で強い需要に応えて経済的に潤った。

しかし、産業別で見ると、輸出で威勢の良かったのはエンジニアリングや繊維といった「古い産業」だった。この期間、他国は新しい技術の開発に努力していたのだ。だから1970年代に入って、スイスの産業は国際競争に負け、惨憺たる結果となってしまった。

swissinfo :  「プレッシャーが充分にかかってやっと重い腰をあげる、」という言葉がありますね。スイスの改革もそうなるでしょうか。

ヴィットマン : 私はそんな言葉を信じていないね。「本物の危機に直面した時、人々は変革に耐えることができない」と言う格言もある。そして物事がうまくいけば、今度は振り返って「ほらごらん、結局改革なんて要らなかったのさ」と言うわけさ。

私にとってスイスはひどい品質のガソリンを詰めて1950年代の車に乗ったF1ドライバーが、最新の車に乗ったミハイル・シューマッハーに戦いを挑んでいるようなものだ。

swissinfo、アリアン・ジゴン・ボルマン 遊佐弘美 ( ゆさ ひろみ ) 意訳

補足情報

-ヴァルター・ヴィットマン氏はフリブール大学で1965年から1998年までパブリック・ファイナンスを教えた。

-彼は非常に多くの調査報告書を執筆し、15冊の著作を出版した。この中には『スイス神話』、『市場と国家-欧州連合への険しい道』などがある。

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キーワード

<レフェレンダム>連邦議会の決定に対する市民の事後審判として実施する国民投票のこと。「強制」( 憲法改正など ) と「随意」の2種類があり、前者は自動的に、 後者は有権者5万人の署名を集めることで国民投票が実施される。

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