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スイスもはしかの予防注射が不十分                      

スイスも麻疹の予防接種率が不十分と健康局。  Keystone

スイスの連邦健康局が7月中旬に麻疹 ( はしか ) の予防接種率が世界保健機関 ( WHO ) が掲げている免疫保有率にまだまだ満たないと警告した。

日本では今年、麻疹が大流行したが、スイスでも2007年に入ってから、中央スイス地方で麻疹感染が発生。これまで約400人が感染し、うち10人に1人が入院した。

 WHOの欧州地域は5年前に各国人口の95%の予防接種率 ( ワクチン2回接種 ) を目指すキャンペーンを打ち上げた。しかし、スイスでは86%と低く、4年前の82%より上がってきたものの、WHOの掲げる数字とはまだ隔たりがある。スイスの連邦健康局 ( BAG/OFSP ) もこの状況を危惧している。

スイスでもはしか感染が発生

 連邦局の感染症部門の責任者、ジャン・ルーク・リシャール氏は「スイスの予防接種率は依然としてゆっくりとしか上がっていない。ターゲットである95%に到達するとは思えない」と危惧する。「現在のところ、95%という数値はあまりにも楽観的過ぎる」とまで語る。

 健康局が「流行感染」として扱った現在のはしか感染は1月以来、414人で、ほとんどがルツェルン州に集中している。リシャール氏によると、同州の予防接種率はスイスでも低く、78%だ。「ルツェルンでは人口の多くが民間療法など代替 ( だいたい ) 医療を好む人が多く、はしかの予防接種率が低い傾向にある」と説明する。

スイスの予防プラン

 スイスでは今のところ、特別なはしか撲滅対策がない。一般にはMMRワクチン ( Measles麻疹, Mumpsおたふくかぜ, Rubella風疹の混合ワクチン ) の予防接種の1回目を1歳まで、2回目を2歳までに終えるように奨励している。この勧告が各医者に伝えられ、患者に情報が渡るのだが、保育園入園時などの接種義務はない。「スイスではMMRワクチンを普及、奨励する大々的なキャンペーンが必要」とリシャール氏。

 しかし、ターゲットからほど遠いのはスイスだけではない。WHOの報告によるとオーストリアは1回目の予防接種の免疫保有率が80%以下、イタリアでも、12カ月から23カ月の子供では70%以下の接種率である。

 コペンハーゲンのWHO、欧州地域事務所の感染症の専門家、セルゲイ・デシュヴォイ氏は「確かにこのターゲットの目標は高い。残念なことに多くの欧州諸国にとって、免疫保有率を上げることは大きな挑戦だ」と語った。

swissinfo、アダム・ボーモント 屋山 明乃 ( ややま あけの ) 意訳

麻疹 ( はしか ) は麻疹ウイルスによる急性伝染病で感染力が非常に強い。まず、発熱し、数日後に体中に発疹が広がる。

重症の場合は失明、脳炎、肺炎や下痢、耳の炎症などに至ることもある。

スイス健康局 ( BAG/OFSP ) ではMMR1 ( 麻疹・おたふくかぜ・風疹混合ワクチン ) を生後12カ月まで、第2回目 ( MMR2 ) を15カ月から24カ月までに行うことを勧めている。予防接種を受けなかった40歳以下の人には2回の追加接種を勧告している。

WHO報告によると、はしかは依然として乳幼児死亡の大きな原因となっている。2005年には世界では、はしか感染により約35万人 ( ほとんどが子供 ) が死亡した。

欧州地域内53カ国のうち、31カ国がWHOが定める接種率95%を達成した。未だに、90%に達していない国はスイスのほか、イギリス、ベルギー、キプロス、フランス、ギリシア、アイルランド、イタリアにマルタ島の8カ国だ。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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