スイスの金融当局は28 日、クレディ・スイス(CS)と破綻したグリーンシル・キャピタルとの取引に関する調査報告書を発表した。CSが「重大な監督義務違反を犯した」と結論づけ、リスク管理の見直しを命じた。
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金融市場監督機構(FINMA)は声明外部リンクで、CSはグリーンシルに対する投資に関して「一部、虚偽や楽観的すぎる」報告をしていたと指摘した。
ある事例では、リスク管理責任者が投資の危険性を警告したが、上級管理職が握り潰したという。
英金融会社のグリーンシルは企業間の売掛債権を証券化する「サプライチェーン・ファイナンス」を営んでいた。CSは2017年から同社に4本のファンドを立ち上げ、総額100億ドル(約1兆2500億円)の顧客資金をつぎ込んだ。
だが資金繰りに失敗しグリーンシルは2021年に破綻。CSがこれまでに回収できた投資は74億ドルにとどまる。
これを受け、FINMAは損失が発生した原因を調査していた。報告書では、クレディ・スイスはグリーンシルに融資も行っており利益相反にあったことも指摘した。
FINMAはCSが最重要顧客(約500社)とのリスクを定期的に執行役員レベルで見直す必要があると指摘。最上級管理職600人の責任範囲を文書化することも求めた。
またCSの元マネージャー4人に対して執行手続きを開始した。スイスの金融業界から最長5年追放される可能性がある。
CSは同日、FINMAの報告内容を認め、すでに複数のマネージャーや行員を解雇し、リスク管理の見直しに着手していると述べた。
目下、業績回復のために経営戦略の大幅な建て直しを進めている。
CSは取引損失や訴訟、取り付け騒ぎなどが重なり、2022年に73億フラン(約1兆円)の赤字を計上した。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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