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スイス景気、二番底か

来年からは経済回復と専門家らはいうが.....。 Keystone Archive

消費の落ち込み、失業率上昇、投資家のスイス市場離れ、主要企業の大規模リストラに巨額純損失と、暗いニュースの続くスイス経済は、二次下降連続不況(不況の二番底)の恐れが強い。

それでも世界経済フォーラム(WEF)の発表した国際競争力では、この国は昨年の15位から6位に上がった。

10月の失業率は3%に達した。国民1世帯当たりの借入も過去最高に達した。ローザンヌ大学のジャン=クリスチャン・ランベレ教授は、「スイス国内問題だけでなく、世界各地の経済情勢から見て、スイスは深刻な二次下降連続不況の危険にさらされている。」という。11月6日、米連銀が予想以上の利下げをし、スイス国立銀行(中央銀行SNB)への利下げの圧力も高まったが、欧州中央銀行(ECB)と英国は金利据え置きを決めた。すでに最低年金保証額の引き下げ計画によって国民の猛反発を受けていたスイスの経済政策決定者らにとって、利下げの圧力は最悪の時期に起きたといってよい。

国立経済情勢事務局(SECO)によると、スイス経済はデフレサイクルに落ち込む危険性が極めて高い。第2四半期(4月から6月まで)の国内総生産(GDP)成長率は0.4%。来年にはスイス経済も回復するという希望は消え去った。SNBの金融政策ターゲットレンジ、ロンドン銀行間取引金利は0.25%から1.25%で、取り得る戦略の余地も限られている。

ランベレ教授がswissinfoに語ったところによると、個人消費の落ち込みはすでに下降期に入っているスイス経済にとって、さらなる打撃となる。「今は確実にリセッション(景気後退)だ。問題は、二番底かどうかだ。設備と建設の実物投資は、誰もが予測した以上に急落している。」。インフレ率が年間1%から2%という水準が続けば、デフレは避けられないとランベレ教授はいう。「これは特殊なリセッションだ。インフレをコントロールする必要から引き起こされるリセッションではない。インフレ率はすでにとても低いのだ。」。

10月の失業者数は110、197人で前月比+8308人、失業率は3%で昨年同月の1.9%の2倍近く、また9月の2.8%よりもさらに増えた。他の先進諸国よりは少ないが、失業率の上昇は不安定感を増長させている。国立経済情勢事務局(SECO)が3カ月毎に発表する消費者信用指数は、過去10年で最低レベルまで落ちている。消費者の最大の懸念は、雇用の安定と経済悪化への不安だ。10月は金融部門も悪化、クレディ・スイスは14日、第3四半期(7月から9月まで)21億スイスフランの純損失を出したと発表した。


スイスは過去のリセッションを世界最高水準の貯蓄率で乗り切って来た。が、「ターゲス・アンツァイガー」紙によると、スイスの各世帯の借入は過去最高水準に達しており、個人消費によって支えられて来た経済発展の大きな不安材料となっていると指摘する。特に懸念されるのは、今の支払い危機は過去にもあったような贅沢品購入によるものではない。税金、健康保険料、クレジットカードなど生活費の支払いに苦しんでいるのだ。日本や英米と違い、平均的スイス人は住宅ローンを払っている人は少ない(持ち家率は近年急上昇中だが過去には30%以下だった)。

それでも、世界経済フォーラム(WEF)の発表した国際競争力では、スイスは昨年の15位から6位にランクを上げた。ペーター・コルネリウス広報官によると、スイスの強みは、スイス企業内で進むイノベーションで、多くの経済セクターがR&D(調査開発)に15%投資していると指摘した。

10月の失業率は3%台に突入。
各世帯の借入は過去最高水準だが、住宅ローンではなく一般生活費が原因。
過去2年間で40万人がスイス株式市場から引き上げ。
18才から74才までのスイス在住者の4人に1人は株を持っている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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