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スイス白十字にビジネスの十字砲弾

白十字がなく、赤いだけの上履きでも温かさには変わりないが、その「価値」は下がるはず。 swissinfo.ch

スイスのシンボル白十字に使用料金が課せられたとしたら、世界でも最高値になるだろうとみる広報専門家もいるほど。しかし、この白十字はいまのところ誰のものでもない。

このコンテンツは 2007/07/11 15:26

これは問題であると見るスイス政府は再び、白十字の商標登録を検討し始めている。

白十字の商標登録は可能かという問題が再燃した。連邦司法省 ( EJPD/DFJP ) は今年末までに、審問機関を設置しこの問題を再検討させることにした。一方6月中旬にザンクトガレン大学の主催で開催された「マーケティングにおけるスイス性」と題された会議では、スイスの白十字の経済と法律の2つの面からこの問題について話し合われた。

6400ある「スイス」

問題はまず、スイスという商標を使える商品やサービスについて、どれほどのスイス性が含まれるべきであるかといった定義がまだないことだ。判例は1つあるのみ。しかも、「スイス」を違法に使用していると訴えた原告は敗訴した。

さらに、コカコーラなど一般商品と異なり、スイスの白十字はその価値を踏まえての登録であることが問題を複雑にしている。つまり、商品名「コカコーラ」は製造会社に所属し、違法使用やその価値など、明確に定めることができる。

一方白十字というトレードマークは、こうした点のすべてについて定めることは不可能だ。とはいえ、このまま手をこまねいているわけにもいかないというのが政府の意見だ。マイヤー・ルステンベルガー法律事務所によると、世界にはスイスをうたった商品が6400あるという。

急増した「スイス」

1980年代には、白十字を利用したビジネスはなかった。しかしこの20年間、ブランドとしての「スイス」の象徴性が大きく認められるようになった。その発端は1991年、スイス建国700周年が祝われた時である。スイス白十字を付けた商品が数多く出回った。スイス国内で製造されたわけでもない商品が多くあったにもかかわらず、スイス当局はこれを取り締まることなく、傍観していただけだった。

1990年代後半、スイスは第2次世界大戦中にユダヤ人の資産を着服したという厳しい非難が起こった。このため、スイスの白十字は金の延べ棒でかたどられたナチスドイツの鍵十字に変形されるなど、そのイメージが地に落ちた。

その後、スイス国内万博「Expo. 02」が催され、再び白十字は好意的に使用されるようになった。また、スイス航空の倒産のニュースは、スイス航空の尾翼に大きく描かれた白十字と共に世界中に流れた。また、世界的に活躍する建築家グループ、ヘルツォーク&ド・ムーロン、テニスのロジャー・フェデラー、ヨットのアリンギなど、スイス性にバリエーションが加わった。スイス性の多様化に伴い「スイスのトレードマークは世界中により深く浸透した」とザンクトガレン大学のトルステン・トムチャック教授は見る。

スイス性の経済

世界での認識が高まるにつれ、「スイス」というトレードマークは誰の物でもなく、みんなの物であるという認識が出てきたとトムチャック教授は指摘する。

また、同大学のユルク・シモン教授は「スイス性は多額の金をもたらす価値がある」と言う。しかし、スイスというトレードマークを使う際、どれほどのスイス性がその商品やサーブビスに含まれるかという明確な定義はなされていないのは問題だという。裁判の先例によれば、商品価値の50%と製造過程の大半がスイスでなされているのが一応の条件ではある。

頻繁に使われることへの危機感

シモン教授によると「スイスの白十字が建国700周年にちなんではんらんした際、上記の裁判による定義はうまく生かされなかった。スイス性を利用したビジネスは、マフィアの血の掟『オメルタ』に比較されるような『他言無用の掟』がある」という。

判例があっても実際には罰せられなかったという経緯から、今後も違法者が罰せられることはないであろうと予想できる。このためシモン教授は、スイスの白十字のはんらんは避けられないと見る。1988年、スイス政府がスイスの白十字の商標登録が検討された際、政府が「スイスそのものがトレードマークである」と明文化したことについて「世界中いかなる国もこうした定義を定めた例はない」と皮肉る。

当時スイス政府は、スイスの白十字の使用を自由化しようとしていた。しかし、これに反対する政党により諮問会が設置された。結局、自由化はスイスが商業の犠牲になるため「理性的ではない」と判断され、商標登録が試みられたが、実現には至らなかった。その後、建国700周年記念でのスイストレードマークが乱用された経験を踏まえ1994年、政府は再び商標登録を検討したが、再び登録までには至らなかった。

こうして2度の試みは失敗に終わったが、今回の「3度目の正直」は成るのか。取締りが厳しくなると「数多くの企業が『国旗保護法』に抵触することになるだろう」とシモン教授。しかも、法施行の徹底には巨大な予算が必要になることも予想される。シモン教授はむしろ、自由化の方向に動くと予想しているという。

swissinfo、アレクサンダー・キュンツレ 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳

キーワード

1815年、白十字がスイスの象徴と認められ、今日に至る。
1988年、連邦政府は「スイスはトレードマークでもある」と明文化する。
マッターホルンや石弓もスイス性を象徴するマークである。
スイスの白十字は商品ブランドではなく「価値」を踏まえたブランドであり、法律上も登録したり保護されたりできない。

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ジュネーブ条約

1948年からスイスの白十字について国際条約が結ばれている。しかし、ユルク・シモン教授によると、この条約は外交上は「忘れ去られてしまった」。
同条約は赤十字国際委員会創立の際に定められたもので、赤十字と白十字が誤用される可能性を踏まえ、スイスの国旗である白十字の使用を禁止しているのである。

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サンモリッツの判例

スイスの白十字をめぐる規制の可能性を体現する例としてサンモリッツの判例がある。サンモリッツのロゴが長年、世界中で勝手に使われることを憂いたサンモリッツ観光局長は、サンモリッツを商標登録し、現在は使用者にライセンス料を課している。ライセンス料の収益で、サンモリッツは違法使用者を訴えた。現在は違法使用件数は大幅に減少している。

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