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スイス・ヨーデルフェスティバル

アルプホルンもヨーデルフェスティバルでは人気のアトラクションのひとつ Keystone

スイスの音楽といえば、ヨーデル。アルプスの山を背景にして歌うヨーデルとアルプホルンの奏者。まさにスイスそのもの。3年に一度あるヨーデルフェスティバルが今年、スイス東北部のアーラウ市で、16日から4日間にわたって開催されている。

今年は1万人のヨーデル歌手、旗振り、アルプホルン奏者が参加する。スイスの伝統、ヨーデルを賛美する由緒正しいあるお祭りであり、コンペでもある。ここの舞台に立てる人は、過去2年間で評価が高かった人たち。よって、観客の期待も大きい。

 ヨーデルフェスティバルは1910年に始まり、ヨーデル好きが集まる伝統行事となっている。今年は日本から伊藤啓子さんも参加する。連邦ヨーデル協会には外国人は認められないが、フェスティバルには参加できた。

日本人とヨーデル

 伊藤啓子さん(42歳)は15歳のとき、祖母に連れられてヨーデルにはじめて触れ、ヨーデルの美しさに魅せされた。

 13年前、40人からなるスイスのヨーデルのグループが日本を訪れたとき、日本人向けのヨーデルのレッスンを受ける機会に恵まれ、ますまのめりこんでいった。いまは、時々日本でコンサートやイベントで歌う。

 フェスティバルを目前にして「観客の皆さんがスイス人。とてもどきどきしています」と語る。日本で出会ったスイス人の先生、マリー・テレーズ・フォン・グンテンさんの指導を受け、本番に備えた。

 「わたしが日本の民謡を日本語で歌うことを考えると、ドイツ語、しかもスイスの方言で日本人がヨーデルを歌うのは、非常に難しいことですが、伊藤さんはすっかりマスターしています。しかも、彼女の声は美しい」フォン・グンテンさんは伊藤さんがスイス人の上級の歌手とまったく遜色ない技術を備えていることをもろ手を挙げて褒めた。

 伊藤さんは、歌の内容や発音については、スイス人に教わっている。日本人にとって、スイスのヨーデルを歌うことは難しいことは認めながらも「音楽は国境を越えて人の心を打つと思います」ときっぱりと言い切った。

 伊藤さんの練習風景は「関連記事」をクリックするとご覧いただけます。

厳しい会則

 連邦ヨーデル協会の規則により、会員は国内外のスイス人とスイスに住む外国人、例外としてスイスの国境近くに住む外国人に限られている。「入会許可は、個々の事情を吟味して、民主的に決定するが、伊藤さんは日本人で遠い日本に住んでいるため、会員になることは難しいだろう」と書記のアナ・ロザ・ブラッティさん。入会に厳しい規定があるのは、協会がドイツでもオーストリアでもない純粋のスイスのヨーデルを受け継いでいくために必要という。

 今回、伊藤さんはフェスティバルでは歌えても、ほかのスイス人とは違い、フェスティバルの成績が記録に残ることはないという。
「協会は沢山の外国人が会員になることを恐れているのかもしれませんが、ヨーデルを上手に歌える外国人は少ないはず。上手なら門戸を開けるべきだと思います」と前出のフォン・グンテンさんは規則は変えられると主張する。 

すばらしいヨーデルとは

 「今年は前回より参加者が少ないが、連邦ヨーデル協会の2年間の審査が厳しかったからだろう」というのは、広報のクリス・レゲツ氏。コンペに参加できるのは、過去2年間に開かれた地方のヨーデルフェスティバルで最高点1点から4点の評価で1点か2点をもらった人。フェスティバルでも同じような評価が付く。しかし、トロフィーや賞金などはなく、参加者の成績が載った本が出版されるだけ。

 評価の観点は、しっかりした音階できれいな発音で歌われること。リズム感も大切。ダイナミックであり調和も取れていることである。

 ヨーデルやアルプホルンと違って、日本ではあまり馴染みのないのが旗振り。赤地に白十字のスイスの国旗を空高く舞うように投げ上げる競技だ。地面に描かれた円の中から出ることなく、旗を頭上でまわしたり、旗がきれいに広がって空に飛ぶように美しく振る。落としたりすると減点だ。腕の力が問われる競技で、主に男性が旗振りとなるが、前回から女性の旗振りも参加できるようになった。

 ヨーデルはスイス人のルーツだから好きという前出のブラッティさんによると「美しいメロディーと自然の恵みをほめたたえる歌詞がヨーデルの魅力」という。
4日間、アーラウ市はスイスそのものと化す。

swissinfo, 佐藤夕美(さとうゆうみ)

スイス・ヨーデルフェスティバル
2005年6月16日から19日まで
コンペの結果は18日22時から発表になる。
参加者 1万人(ヨーデル、アルプホルン、旗振り)
次回、2008年はルツェルンで開催の予定

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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