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スイス 人権理事会設立を目指す議長案の採択を求める

ジュネーブの記者クラブで行なわれた会見で人権理事会の創設を訴えるカルミ・レ外相 Keystone

国連改革の柱の一つである、人権理事会の創設を目指す決議案が米国の反対を受け、採択困難な状況にあるなか、スイスのミシュリン・カルミ・レ外相は3月3日、ジュネーブで記者会見を行ない、この妥協案の採択を呼びかけた。

カルミ・レ外相は「人権理事会の産みの親はスイスです。我々がこの理事会創設にかけている意気込みは並のものではありません」と語り、「まだ、米国が立場を変える説得の余地がある」と訴えた。

 昨年末から人権理事会の設置をめぐり各国との交渉が始まり、2月23日のニューヨークの国連総会でヤン・エリアソン議長が各加盟国の要望を考慮した妥協案を提示した。しかし、米国のジョン・ボルトン国連大使は同月27日、この決議案に反対し、再交渉を求める立場を表明している。このため、3月13日にジュネーブで始まる国連人権委員会の開幕までに採決されるはずの決議は現在「藪の中」の状態にある。

米国なしでは困難

 「スイスはこの決議案がコンセンサス(全会一致)で決まることを望みます」とカルミ・レ・外相。「米国が国連で果たす中心的な役割を考えれば、米国の協力なしには人権理事会の設立は考えられない」とし「米国がコンセンサスを支持してくれるとまだ信じている」と強調した。

妥協案の良い点

 カルミ・レ外相は「もちろん、191カ国の妥協案ですから完璧ではありませんし、スイスも多くの妥協をしました」と語りながらも、この決議案に盛り込まれている人権理事会は現行の国連人権委員会に比べればかなりの「改善」でスイスの人権問題に対する基本的な要望は満たされていると評価した。

 エリアソン議長が発表した設立決議案の良い点として、1)人権理事会が国連総会の傘下の常設機関として(重要性が)格上げされること、2)人権理事会の本部がジュネーブにおかれること、3)人権問題が公平に扱われ、非難よりも対話、協力に重点が置かれていること、4)相互監視 ( peer review )システムとして理事会の構成国は自国の人権状況の監査を受けること と、5)会期が年3回、最低10週間と長く、緊急事態には臨時会議などを設けて早急な対応ができることなどをあげた。

米国の不満点

 妥協の賜物の決議案では理事会構成国は47カ国で選出方法は国連加盟国の過半数の賛成を必要とする。

 スイスも米国と同様、当初、3分の2の賛成で選出と考えていたが、妥協案を受け入れた。米国はこの他、理事会構成国になる資格・条件を設定することや理事会構成国を30カ国に減らすことなどを求めている。カルミ・レ外相は米国の立場に対して、「これから、この決議案を再交渉するのは危険。改革案がお流れになる可能性があり、この勢いにのって国連改革を成功させるべき」と強調した。


swissinfo、 屋山明乃(ややまあけの)

- 人権理事会の創設案はスイスが2004年3月に初めて提案したもので、国際法専門家、ウォルター・ケーリン教授が考案した。

- 人権理事会の設立が採択された場合、2006年の6月からスタートする予定。

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