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スキーに行くならやっぱりスイス

トップでいることは簡単じゃない. Photopress/Schweiz Tourismus

いよいよスキー・シーズン到来。世界からの観光客をいかに惹きつけるか、スイスの観光業界にも本腰が入る。

スイスの主なホテルをインターネットで利用客が格付けできる新システムも始まった。100年前と同じ雰囲気でスイスの冬を満喫できる歴史ツアーも見逃せない。

 今年1〜8月の統計によると、スイスの観光客宿泊日数は、2003年同期比2.2%増となった。これからのスキー・シーズンを迎え、この数字はさらに1.1%増加する見通しだ。

 スイスの観光業界が打ち出したキャンペーン「もっと楽しい冬を」が功を奏して、隣国のライバルを一歩出し抜くことができるか。しかし、こればっかりは予想できないのが、質の良い雪の恵みがどれほどあるかどうかだ。天を拝みつつ、熱い商戦シーズンが始まる。スイス観光局のイェルク・シュミット局長に抱負を聞いた。

swissinfo :  スキー客の間には地球の温暖化でアルプスの雪も解けてしまっているのではないかという声もありますが、このような声を心配されていますか。  

シュミット : そんなに気にしていません。私たちの山は、他のアルプスのどこの山より高く、滑走距離は長く、宿泊施設を備えた村もスキー場の近くに沢山ありますからね。このような条件のおかげで、スイスは他のアルプスのスキー場よりももっと「冬の気分」を満喫できます。これは我々にとって大きな利点です。これをアピールしない手はありません。

swissinfo : でも、ピーク・シーズンになると人気のある場所では、宿を取るのもなかなか難しいと聞きます。最近の傾向として、ホテルが次々と閉鎖されて民間アパートや山小屋風の別荘に様変わりしています。彼らは実際にそこに住むのではなく、休暇のためだけにそこを使うのです。これは結構困った状態なのではないのでしょうか。

シュミット : 政治家にとっては困った問題でしょう。ホテルのオーナーが払いきれないほど土地の値段が上がれば、売りに出すしかありませんから。

 チューリヒ郊外の美しい谷、エンガディンでは、住民がこれ以上アパートを建てることに反対していますが、私はこのような動きを支持しています。なぜなら観光業界は、ホテルと休暇用アパートのバランスを保たなくてはいけないと思っていますから。

swissinfo : 翻って、スイス全国で見ると、一年を通して宿泊客の占有率は決して高くありません。つまりホテルが多すぎるのです。今年初めにスイス観光局が着手したプロジェクト、ホテル格付けオンライン・システムでスイスのホテルの競争力は上がりましたか。

シュミット : 私たちは世界に先駆けて、利用客にインターネットでホテルを格付けしてもらうシステムを始めました。このような格付けは大変信用があり、提供する側とすれば、利用客の個人的な印象やクレームをいち早く目にすることができます。

来年の中旬までには3000人から4000人の利用客が格付けを行い、集計が可能となるでしょう。これでスイス全土の主なホテルの本当の格付けが一目瞭然になるわけです。

swissinfo : インターネットを使ってスイスを売り込むことに関して、他にもアイデアがあるのでしょうか。

シュミット : 今やインターネットは旅行情報を集める時の主な道具となっています。私たちのホームページには毎日4万人から5万人の人が訪れます。

 今までは単なるホテルやリゾート地の写真が何枚かあるだけでしたが、これからはちょっとした短い映画のようなしかけで全てのホテルを紹介することを考えています。これによって、来年私たちのホームページを訪れる人の数は20%増加することが見込まれています。

swissinfo : スイス観光局は、これから「歴史的スイス」と呼ばれる新しい機関と協力協定を結ぶことになっていますね。この機関は由緒正しいホテルや古い蒸気船や鉄道などを観光客にアピールしている所ですが、このような遺産的価値を持った分野についても、少なくない観光客が見込めるのでしょうか。

シュミット : もちろんです。歴史は売れます。スイスは近代観光で有名ですが、1841年に世界で最初に団体旅行を敢行した英国人、トーマス・クックが最初にやってきたのはここ、スイスなのですよ。私たちは、100年前と同じ蒸気船に乗って、同じホテルに泊まるというツアーも用意しています。ここで旅行者はタイムマシンに乗ってトーマス・クックが感じたスイスの冬を体験できるというわけです。

swissinfo : スイスを売り込むことにかけては右に出る者がいないと言われるシュミットさんですが、ご自分はどんな所で休暇をお過ごしになるのですか。

シュミット : 世界には非常にすばらしい所が数多くあります。それでも、私が家族とこの冬を過ごすのはグラウビュンデンのレンツァーハイデ(Lenzerheide)ですね。今年の夏を過ごしたのは、ヴァレー州のサーウフェー(Saas Fee)とアレッチ(Aletsch)でした。ここはアルプス氷河の中でも最も長いので有名です。

swissinfo : 最後に訪れた国外の観光地はどこですか。

シュミット : 出張で世界の観光地を訪れる機会がありますが、南トルコは興味深かったですね。彼らは1200室ものリゾートを作ってしまったんですよ。なんとスイスの山岳地帯にあるホテル全部の部屋数と同じ規模です。

swissinfo、デイル・ベヒテル 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

スイスの観光収入は226億フラン(約2000億円、2004年)。国内総生産の5.1%を占める。
冬のスキー・シーズンは1年のうちたった4カ月だが、これが観光総収入の半分を占める。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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