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五輪など国際的スポーツイベント、GDP算出で問題に

平昌五輪でスピーチする男性
平昌五輪のような国際的なスポーツイベントによる莫大な収益は、スイスのGDP統計に大きな影響を与える可能性がある Keystone

国際オリンピック委員会(IOC)など、スイスには有名で国際的なスポーツ連盟・協会の多くが拠点を置くが、その莫大な収益がスイスの国内総生産(GDP)の算出に「誤差」を与えている。ドイツ語圏の日曜紙NZZアム・ゾンタークが報じた。

 IOCは、現在開催中の平昌(ピョンチャン)五輪だけでスポンサー収入など22億フラン(約2525億円)の収益を見込む。IOCの本拠はヴォー州ローザンヌにあり、スポーツイベントから得た収益はスイスのGDP統計に計上される。だがこうした収益はスイスの経済力に結びつくわけではない。

 スイスにはIOC以外にも、国際サッカー連盟(FIFA)や欧州サッカー連盟(UEFA)が本部を構える。サッカーのワールドカップ(W杯)開催年には、GDPへのこのような傾向はますます顕著になるという。W杯ロシア大会は18年夏に開催を予定している。

スイス経済には実質影響ゼロ

 専門家は、スポーツイベントの収益は真のGDPを算出する上で問題になると話す。連邦工科大学チューリヒ校景気調査機関(KOF)外部リンクのイグヴェブ・アブラハムセン経済予測部部長は、「オリンピックやサッカーW杯はスイス国内にキャッシュフローは生み出すが、雇用を創出したり税収を大きく増やしたりするわけではなく、スイスの経済力には影響しない」と説明する。そのため専門家たちは大きなスポーツイベントの開催によって引き起こされるGDPの「誤差」を計測・修正するために、非常に複雑できめ細かい算出方法を使わなければならないという。

隅数年だけで良すぎる数字

 国際的なスポーツイベント開催年のスイスの経済成長率は明らかに良すぎる。夏季オリンピックとサッカーの欧州選手権が開催された2016年には、政府の公表値は前年比1.4%でプラス成長したかのように見えたが、KOFの計算によると実際は1.1%のプラスだった。反対に、国際的スポーツイベントが開催されなかった17年は、統計上は1%増に鈍化したが、実際は1.3%増に加速した。18年は冬季五輪が統計上のGDPを0.3%押し上げるとみられる。

 連邦経済省経済管轄局(SECO)は昨秋、GDP統計の解釈を改善するための分析を発表している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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