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チューリヒ警察、容疑者の国籍開示義務付けへ

警察官
チューリヒ市議会は4年前、警察発表で犯罪容疑者の国籍を自動的に公開しないという決定を可決。これに反対するグループが州のイニシアチブ(住民発議)を起こした Ennio Leanza/Keystone

チューリヒ州で7日行われた住民投票で、警察が事件の容疑者や被害者を発表する際、国籍の開示を義務付ける案が可決された。ジュネーブ州では新型コロナウイルス危機で困窮する労働者に経済補償を行う案が賛成多数で決まった。

事件当事者の国籍開示をめぐっては2017年11月、チューリヒ市警察は問い合わせがない限り当事者の国籍を公開しない案を市議会が可決。独語圏の日刊紙NZZ外部リンクによると、外国人排斥感情の抑止が目的だった。

これに対し、移民抑制策を掲げる保守系右派の国民党が、州全体を対象としたイニシアチブ(住民発議)を提起。警察が会見、声明で容疑者、被害者に言及する場合は年齢・性別に加え国籍を原則開示し、問い合わせに応じて移民の背景も明らかにするよう求めた。州議会と州政府は移民の背景まで公表することは行き過ぎだとし、開示対象を国籍までにとどめる対案を提出。有権者に最終的な判断がゆだねられた。

州民投票では国民党の案への賛成が43.8%と過半数を割った。政府の対案を支持する有権者は55.2%に上った。

市警察は今後、容疑者、被害者の国籍を発表時に公開する。州警察は既に国籍を発表しているため、変更はない。

現在、容疑者・被害者の国籍開示を特別法で規定している州は国内で2州のみ。大半の州は、2010年に州警察本部長会議が承認したスイス警察メディア代表者会議(SKMP)の勧告に従い、容疑者と被害者の年齢や国籍を公開している。ただし勧告に拘束力はなく、プライバシーを理由とした例外規定がある。移民の背景については、要求があった場合にのみ開示する。

ジュネーブでは困窮者に経済支援

ジュネーブ州の州民投票では、新型コロナウイルス危機で困窮した労働者に経済支援を行う州議会の法律が68.8%の賛成で可決された。

コロナ危機に伴う経済補償を受けられなかった劇場、イベント事業のフリーランス、事業主の求めに応じて不定期に就労するオンコールワーカー、家事労働者らを対象に、収入の8割、月額最大4千フラン(約46万4千円)を補償するもの。国内でロックダウン(都市封鎖)が敷かれた2020年3月17日~5月16日にさかのぼって支払われる。事業費は総額1500万フラン。

保守系右派の国民党と地域政党「ジュネーブ市民運動」が法律施行に反対するレファレンダムを提起したが、支持が集まらなかった。反対派は、経済支援は過度に寛大で、潜在的な福祉受益者、特に違法労働者を引き付けてしまうと訴えていた。

新型コロナウイルス流行第1波の対策措置が講じられた昨年春、ジュネーブで大勢の人が食料配給の列に並ぶ様子がメディアで報じられ、世界中の注目を集めた。ジュネーブは世界で最も豊かで、物価の高い町の1つとして知られている。

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