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ツタンカーメンがスイスを訪れる

ツタンカーメンが20年ぶりに国外へ スイスには始めて訪れる。写真 バーゼル古代博物館提供. Antikenmuseum Basel und Sammlung Ludwig/Ägyptisches Museum Kairo

バーゼル古代博物館は4月7日から10月3日までの予定で、ツタンカーメン展を開催する。ツタンカーメンの墓から発掘された棺や副葬品を中心に展示される「ツタンカーメン・黄金の来世」は、すでにスイス国内外で注目されている。

ヨーロッパでは23年ぶりの展覧会となる。バーゼル古代博物館は、古代エジプト美術の収集ではスイス一で、コレクションの質も国際的にも認められている。前売り券の発売も好評で、同館は50万人の入場者を見込んでいる。

ツタンカーメンが23年ぶりにエジプト国外を出て、スイス北部のバーゼルを「訪れる」こととなり、スイスでは歓待の準備で忙しい。バーゼル古代博物館に展示されるのはツタンカーメンの墓の副葬品50点を含む、古代エジプトの王家の墓から出土した美術品120点。特に注目されるのは、棺が置かれた玄室にあった銀製のトランペットや、発掘の援助をしたカーナーボン卿のお気に入りのアラバスター製の猫の香油入れのほかに、金、ガラス、宝石を施したツタンカーメンの棺などがある。4月の開催に向けて、博物館は現在閉鎖中。展示に工夫を凝らすため一部博物館を改造するなど、2ヵ月半かけるという。

ツタンカーメンの魅力

 古代エジプト第18王朝時代、いまから3400年前を生きたファラオ、ツタンカーメン。英国人ハーワード・カーターが1922年に墓を発見して以来、世界中に話題を提供し続けてきた。ファラオの墓が集中する王家の谷はすでに掘り起こされ尽きたと見なされていたにもかかわらず、ツタンカーメンの墓があると信じ発見に漕ぎ着けた考古学者ハーワード・カーターの人柄。泥棒に2度荒らされていたにもかかわらず、ほぼ原型の姿を保っていた副葬品の数々。名誉とお金をめぐっての人間関係や、メトロポリタン美術館、新聞社との版権をめぐる駆け引き。エジプトと英国政府の対立などについて、いくつもの書籍が出版されていることからも分かるように、ツタンカーメンの魅力は現代人を捕らえてはなさない。

 バーゼル古代博物館の去年の入場者数は8万人。今回の特別展には国内はもとより、隣国からの訪問者も期待され、6ヶ月間で見込まれる入場者数は50万人という。混雑を予想し、前売り券が発売されているのも異例。1万3000枚販売した。

大手銀行がスポンサー

 エジプト政府は古代遺跡や副葬品を海外に貸し出すことには消極的である。有名なツタンカーメンの黄金のマスクなどは国外へ持ち出すことは一切ない。バーゼル古代博物館の「エジプトとは非常に密接に付き合ってきたし、当館の古代エジプト学のレベルが認められた」ことが理由と博物館広報のアンドレア・ビニャスカ氏。

 地元に本社のあるスイス最大手の銀行UBSがスポンサーとなっている。「展示品の質から唯一のものと判断した。展示には2年半を要し、払った金額以上のことをUBSはしているので、金額は公表しても意味がない」と広報のビュルギン氏は語る。

 カイロのエジプト博物館は、ギゼーのピラミッドの近くに移転の予定で、費用の一部が今回の特別展示の収入から融資の形で充てられることになっている。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

ツタンカーメン・黄金の来世展
2004年4月7日から10月3日まで
バーゼル古代博物館 ルドヴィクコレクション
St. Albangraben 5CH-4052 Basel
電話+41 (0)61 201 12 12
ファクス +41 (0)61 272 18 61

ツタンカーメン 
古代エジプト第18王朝時代(紀元前14世紀)のファラオ
1922年 ハーワード・カーター(18874-1939)により発掘される。
ヨーロッパでは、1967年パリ、1972年ロンドン、1980年から81年にかけてドイツ各地で展示された。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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