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バーミヤン大仏の残りはどこに?

文明の十字路と呼ばれたアフガニスタン、バーミヤンの巨大な仏像は2世紀〜5世紀の間に建立され、2001年3月旧タリバン政権により破壊された。 swissinfo.ch

アフガニスタン政府は旧タリバン政権が破壊したバーミヤンの大仏の破片がスイスに密輸されたとの情報を受けて17日、スイス司法省に発見と返還への協力を要請した。

同日付で地元紙「ルタン」はジュネーブの“自由港”と呼ばれる税関の立ち入り検査のない倉庫でバーミヤンの大仏の破片を見たという二人の美術専門家の証言を掲載した。

石片はどこに?

 同紙への匿名証言によると「2002年末に自由港倉庫で大仏の断片を見た。石片は親指の大きさの穴があり、土と藁が所々、表面を覆っていた。他の部分はベージュで光る石膏の粉を散らしていた」という。カブール美術館の元顧問で現在ヌシャテール大学のピエール・サンリーブル教授によるとこの証言は前者が大きな大仏、後者が小さな大仏の表面とピッタリ合うという。

倉庫はアリババの洞窟

 今年の10月7日、パキスタン税関はぺシャワールで木箱に入った6,5トンの全身大仏と二つの大仏の頭、その他、彫刻などバーミヤン石窟群から略奪された考古学品を多数没収した。これらの美術品はカラチの港からジュネーブへ送られる予定だったとパキスタン当局は発表した。スイスは文化財の返還を保護するユネスコ条約に来年、批准することが決まったが、今のところ善意取得した美術品に関する返還請求権は5年で時効となり、遡及効はない。

遺跡破壊は資金運営のため?

 フランスの大衆誌「パリマッチ」(9月11日付け)のバーミヤン美術盗難品を追ったルポタージュによると旧タリバン、イスラム政権は仏教美術品だからというよりも資金調達のためにバーミヤンの大仏を破壊、当初から石片を売るつもりだったという。同誌によると現地で壁画の保存修復事業に従事する東京文化財研究所の山内和也氏も爆破後、大切な断片は全て消えているのを認めているという。また、FBIの顧問を務める元美術商、ミヒャエル・フアン・リンジ氏は「もし、石片がある日、出回ったとすると買い手は一つしか考えられない。日本の滋賀県にあるMIHO美術館だろう」と断言している。MIHO美術館は新興宗教団体、神慈秀明会が立てたアジア美術館だ。

バーミヤン再現プロジェクト

 日本はバーミヤン遺跡の保存・修復に180万ドル(約2億1千万円)の拠出をし、今年7月から石窟群の壁画の保存や崩落の危機にある石窟の固定作業をスタートした。スイスはチューリヒ連邦工科大学がGPSを使って3Dコンピューターで青写真を造り復元可能の模型を制作中。実物の10分の1で作られる模型はチューリヒ郊外のアフガン美術館に展示される予定だ。
 実物を復元するには3千万ドル〜5千万ドル(約32億〜54億円)の費用がかかると見積もられているが今のところアフガニスタン政府の要請はない。


スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)

2001年3月、アフガニスタンのイスラム原理主義の旧政権タリバンによってバーミヤンの世界最大級の二つの大仏が破壊された。

2003年6月、日本がバーミヤン遺跡保存・修復に180万ドル(約2億1千万円)を拠出することを署名。

2003年7月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)はバーミヤン遺跡の世界遺産への登録をパリの第27回世界遺産委員会で決める。

2003年9月、東京文化財研究所がバーミヤンで7世紀の仏典断片を発見。

2003年10月、東京文化財研究所が7世紀の中国の僧が記述を残した謎の第3の涅槃仏を探すべく地中を調査中。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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