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フェアトレード 不況の中でも健全

フェアトレードの先鞭をつけたマックス・ハフェラー(オランダ)の織物工場. Pia Zanetti

途上国の労働者に正当な賃金を払って生産し先進国で売る、フェアトレード。消費財の価格が下落している中、2005年のフェアトレードの総売上は前年より5.2%上昇し2億2080万フラン(約200億円)だった。

スイス人はフェアトレード商品を積極的に購買する国民。年間1人当たり30フラン(約2700円)分のフェアトレード商品を買っている。

 オランダで発祥したフェアトレードの先駆者、マックス・ハフェラー財団のスイスの責任者マルティン・ローナー氏はバナナの売れ行きについて「市場は飽和状態。以前のような急速な売上の伸びは期待できないが、がんばっている」と語った。

バナナに影

 スイスでは、大手スーパーででマックス・ハフェラーの商品が扱われている。ミグロ、コープ、クラロの3社で全体の8割を販売し、これらはマックス・ハフェラーの大手得意先だ。マックス・ハフェラーによるフェアートレードの商品の売上は、2005年で1350万フラン(約12億)と前年の1260万フラン(約11億300万円)を上回っている。

 マックス・ハフェラーといえば、バナナ。総売上の半分を占める。しかし、2005年の売上は前年より1.8%減少した。好調だったのは、切り花のバラ(10%増)、コーヒー(5%増)だった。伸び悩んでいるのは、2005年から始めた衣料品部門。売り上げ目標の3分の1しか達成されなかった。「衣料品は手間がかかる。初めての試み」というローナー氏。生産から販売過程まで、フェアトレードの規格に沿っているかのコントロールも必要である。

国際的な伸び

 スイスでのフェアトレード商品は、市場が飽和状態であるが、国際的には大きく伸びている。21カ国でみると、2005年の売上は11億ユーロ(約1570億円)で前年より45%も増加した。とはいえ、世界でもスイスのフェアトレード商品の売上は最高で、1人当たり30フラン(約2700円)だ。

 50カ国、およそ510カ所の生産拠点で作られるフェアトレード商品。ローナー氏によると、500万人の人がフェアトレードの恩恵を授かり、実際、開発国に住むフェアトレードの生産者は、当初マックス・ハフェラー財団が保証した最低賃金より37%上回った賃金をもらっている。フェアトレードは成功しているといえよう。

今後の課題

 2006年の売上伸率は5%を見込んでいるが「価格競争は引き続きある」とローナー氏は見ている。現在は、大手スーパーに依存しているが、今後はレストランなどにも販売網を広げて行くつもりだという。一方、現在は不振の衣料部門については、現地のフェアトレード機関と提携をすることで業務強化を図るつもりでいる。「衣料部門での需要は高いはず」とローナー氏は期待をかけている。

swissinfo、外電 佐藤夕美(さとうゆうみ)

<マックス・ハフェラー>
1865年に書かれた小説の主人公。オランダの植民地であったインドネシアで虐げられた農民の名前からくる。
1989年にオランダでフェアートレードを目的として作られた財団。
1992年にスイスでは、6つの途上国援助機関の協力の下で創立された。

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