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フーリガンには、防空壕 

Keystone

「EURO2008」が近づくスイスではフーリガン対策の最終チェック段階に入っている。地下防空壕はフーリガンの拘束所に使われ、スタジアムは上空から監視される。

暴力から市民を守るためにスイスでもオーストリアでも、それぞれ異なった形ではあるにせよ、軍隊の出動も準備中だ。

 スイス警察はヘリコプターを所有しないことから、軍のヘリが出動し、緊急事態には人の移動にも使われる予定だ。無線で操作される無人飛行機「ドローネン ( Drohnen ) 」も飛ぶ。ドローネンにはカメラが搭載されスイス国内のスタジアム上空を旋回する。

フーリガンには厳しい態度で

 スイスでは5月上旬に行われたベルン対バーゼルのスイスマスター決勝戦で45人が負傷し、サッカー欧州選手権EURO2008を目前にしスイス警察の手際の悪さから、安全管理に対する疑問を投げかける事件となった。
「われわれのコンセプトは、はっきりしている。スイスが良いホスト国であることだ。警察も同様である」
 とEURO2008の安全責任者であるマルティン・イェッキ氏は言う。

 スイス連邦法「国内安全対策」が連邦議会で承認され、危険な行動をとる人物に対してはスタジアムの入場を拒否することも可能になった。15歳以上であれば、法に従わない人は、逮捕され24時間の拘束もありうる。さらに、暴力を振るうファンについては、一カ所に長くとどまることを禁止することもできる。
 
 「安全管理は万全だ」とスイス政府のEURO2008責任者ベネディクト・ヴァイベル氏は太鼓判を押す。スイス人警官1万6000人に加えドイツから600人、フランスから250人の警官が補強される。これに伴う追加経費6000万ユーロ ( 約98億円 ) は連邦政府が負担するが、EURO2008の開催都市も巨額の予算をつぎ込むという。

暴動が起こったにもかかわらず、自信満々のスイス

 一方、オーストリアの安全対策を見ると、例えば、ウィーンで試合が行われる日には300人から400人の兵士が警備に当る。軍隊の使命は、空からの監視のほか、大暴動を想定した医療施設の充実や負傷者の運搬にある。軍用トラック7台、バス2台、負傷者手当ての薬品や機材なども軍が提供することになっている。

 スイス警察はスタジアムの入り口でのコントロールのほか、ファンゾーンでは暴力沙汰の発生の予防に当る。前科のあるフーリガンのデータの収集も進んでいる。逮捕者の拘留に大型施設も必要で、地下の防空壕も一部使われることになった。

 しかし、安全管理はフーリガン対策だけでは不十分。酔っ払ったファンや、大勢の人が市内の一カ所に集中した場合に起こりうる暴動に、スイス警察は頭を悩ませている。まずは、酔いを覚ますための休憩所を設け、看護師や医者の手当てを受けさせる予定だ。

 オーストリア警察と同様にスイス警察も「話し合い、興奮を冷ます、断固とした手段」がモットー。警察官も警備員もこのモットーを基準にして警備に当るというが、まだまだ改善されなければならない部分もあるようだ。オランダ警察学校の専門家には、現場での警察官たちの一丸となった行動にまだ欠けるところがある。また、それぞれのファングループの習性を研究する必要があると指摘された。
 
2008年5月14付け「Die Presse」から

スイス警察が把握しているフーリガンは300人。
オーストリアと比較するとスイスで行われる試合では暴動が起こる確率は低いと見られているが、5月のバーゼル対ベルン戦後の暴動鎮圧に警察の不手際があったと指摘された。

「Die Presse」はオーストリアの保守派的な全国紙。読者数26万7000人。オーストリアで第5位を占める。月~土曜日発効。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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