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ペルーのフジモリ元大統領のスイス口座情報提供

フジモリ氏は2000年11月に日本へ政治亡命した。2006年の大統領選への出馬を目指す意向を示している Keystone

連邦裁判所はペルー政府が要請していた元ペルー大統領、アルベルト・フジモリ氏の不正蓄財疑惑に関して関係のあると思われるスイス銀行口座に関する情報を提供することを17日、承認した。要請は日本や米国などに対しても行われているが、協力を表明したのはスイスが初めて。

ペルーの検事総長は1990年から2000年、フジモリ政権がロシア企業から戦闘機を購入した際にフジモリ氏と当時側近だったモンテシノス国家情報部顧問が1800万ドル(約19億円)の賄賂を受け取った疑いで捜査している。

問題の秘密口座

 連邦裁判所が情報提供を承認したのは不正資金の疑いで既に凍結されている3つの銀行口座で、二つがチューリヒ、一つはルガノにある。合計金額は明らかにされていない。昨年8月、スイスはすでにモンテシノス元国家情報部顧問が所有していたスイス口座で不正蓄財疑惑のある7750万ドル(約84億円)をペルーに返還している。しかし、スイスにある銀行口座がフジモリ氏と関係しているかどうかはまだ明らかにされていない。ペルーのカルデロン検事総長はロイター通信に「現在のところ、スイスは不正資金を返還してきた唯一の国だ」と語っている。

フジモリ氏への疑惑

 フジモリ氏はペルー当局から公金横領、収賄、大統領職務放棄、盗聴など9つの罪で提訴されている。当時、政府の指示を受けた特殊部隊が学生や市民ら25人を虐殺した事件に関与した容疑でペルー政府は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配も行っている。

日本政府への送還要請

 ペルー政府は今年7月、日本政府にフジモリ氏の身柄引渡しを要請した。しかし、日本政府はフジモリ氏が日本国籍を保持しているとして、日本の刑法に従い、身柄送還はできないとの立場を取っている。

フジモリ氏の人気復活?

 フジモリ氏は10月に回想録「大統領への道」(中央公論社)を出版し、2006年にはペルー政界に復帰して大統領出馬を目指す意向を示している。2001年2月にはペルー国会で10年間の公職追放が決議されているが、フジモリ氏は「政治裁判だ」と反論している。今年、ペルーで8月5日から15日まで全国2300人を対象に行われた民間調査機関、「市場研究ペルー会社」の世論調査によると「過去23年間、最も良かった大統領は誰か」という質問に対して、38%のペルー人がフジモリ氏と答え、歴代大統領の中、一位だったのに対し、現トレド大統領は1,3%の最下位だった。


スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)

フジモリ政権がロシアから戦闘機を購入した際に1800万ドルの賄賂で貰った疑いでスイスにある3つの口座が捜査されている。

口座は当時、側近だったモンテシノス元国家情報部顧問に関係するものとフジモリ氏に関係があるとされるもので情報がペルー当局に渡る予定。

フジモリ氏に関する容疑でペルー国外から協力が得られるのは今回が初めて。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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