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ミツバチのコロニー喪失に刺される養蜂家

(swissinfo.ch)

スイス西部のなだらかな起伏の緑の田園地帯の中、400年の歴史を持つ穀物倉の裏でベアット・エビシャー氏は夕方の大半をミツバチの世話に費やす。

「これは私にとって情熱の対象ですが、ビジネスにしたいと思っています」
 とエビシャー氏はこの冬32あったミツバチのコロニーのうち10を失ったにもかかわらず明るく答えた。

養蜂業界存続の危機

 近年ヨーロッパ、中国、アメリカの養蜂家は、ミツバチのコロニーの喪失に突如見舞われ、養蜂業界の存続危機という深刻な不安を感じている。

 「国際養蜂者団体連合会 ( Apimondia ) 」によると、ヨーロッパでは前回の冬( 2007~2008年 ) に、約1360万箱あるミツバチのうち約30%が死んだ。スイスの冬季間の死亡率は通常10%だが、前回の冬の死亡率は18%だった。初期の兆候から今回 ( 2008~2009年 ) の数字は、前回の数字を大幅に上回ることはないという見通しが出ている。

 コロニー弱体化の主な原因のうち2つは、農薬とバロアダニ ( Varroa mite ) で、年間死亡率が過去の数字を上回るようになったのは2002年からだ。

「ミツバチがいなくなれば、人間もいなくなる」

 しかしこれは養蜂ビジネスの問題だけではない。ヨーロッパの食糧用農作物の3分の1はミツバチによる受粉に頼っているため、エビシャー氏が言うように「ミツバチがいなくなれば、人間もいなくなる。」

 ミツバチにつきまとう問題とは対照的に、フリブールで養蜂を営むエビシャー氏は楽観的だ。
「ミツバチはおよそ3000万年も生息してきたのですから、あらゆる環境に適応する方法を学んできたはずです」

 エビシャー氏はスイスの養蜂家としては典型的なセミプロだ。日中はフルタイムで働き、ミツバチの世話は夕方と週末に行う。
「自由時間の約80%を養蜂場で過ごします」

 ミツバチについて語るとき、エビシャー氏の顔は輝く。
「それぞれのコロニーに性格があり、その性格は女王蜂によって決まります。もし女王蜂が攻撃的な性格ならば、群れのミツバチすべても攻撃的に、女王蜂が優しい性格ならば、群れも優しい性格になります」

 エビシャー氏は養蜂を営むようになってからまだ4年しかたっていないが、養蜂に関する膨大な知識を収集し、バロアダニからミツバチを守るための実験も行っている。

バーへ入ってきた男

 エビシャー氏を養蜂の世界へ引き入れたのは偶然の出来事だった。ドウディンゲン ( Düdingen ) の町の近くのバーで新聞に載っていた養蜂講座の広告を見ていた時、偶然に知人が入って来た。その知人は40年間も養蜂の経験があり、巣箱を何十も持っていた。2人はミツバチについて話し始め、エビシャー氏は趣味として養蜂を始めるよう勧められた。現在2人は年間数百キロのハチミツを共同生産している。

 エビシャー氏はこの冬何が原因で自分のミツバチが死んだのかまだ解明していないが、原因のいくつかは自分の失敗と実験方法にあると考えている。
「3匹から5匹の女王蜂を失ったのは農薬のせいかもしれません。問題は、死んだ女王蜂を分析に出すと120フラン ( 約1万550円 ) もかかるのに、いつもはっきりとした結果が出るとは限らないことです」

付加価値

 国際養蜂者団体連合会の会長アスゲール・ソルガート・ヨルゲンセン氏は、養蜂家は難しい経済状況にあると述べる。
「養蜂家はハチミツの販売で収入を得ますが、実際のところこれは受粉を考慮した場合、養蜂家が生み出す価値のほんの一部にすぎません」

 自分のミツバチが受粉に貢献していることに対して報酬が支払われるべきかとたずねると、エビシャー氏はあまり気にしていないと答える。
「しかし自分のミツバチを守れるようになりたいと思っています。現在のところ予防できるのは2種のウイルスに対してだけです」

 ミツバチが闘わなくてはならない相手は、近代的な農法でもある。農薬のほかに、大規模な単一栽培をおこなう大農場もまたミツバチの食料の供給に影響を与えている。
「例えば、ヨーロッパ中に菜種の花が咲き、ミツバチの食料が十分にあるとします。しかし2週間後にはたくさんの場所が一斉に緑の砂漠になってしまうのです」
とヨルゲンセン氏は説明した。

最悪のシナリオ

 ヨルゲンセン氏によると、ミツバチの減少によって起こる得る最悪のシナリオは、人間の食糧生産高への影響だが、それがどの程度になるか数値で表すのは難しい。
「例えば、果物を栽培できなくなり、代わりに小麦や大麦などを栽培するとします。しかしそうなると、多様な食物を供給するというわれわれの能力に大きな変化を引き起こすことになります」

科学界は、深刻な状況にあることを認識している。「スイスミツバチ研究センター ( The Swiss Bee Research Centre ) 」は科学者と養蜂家から成る世界的な組織「コロス・ネットワーク ( The Coloss Network ) 」に属しており、ミツバチが直面している問題の解決を模索している。

 一方、エビシャー氏のようにこの冬ミツバチを失った養蜂家は、コロニーの再生を目指し、生き残ったミツバチを守ることに全力を挙げている。

クレール・オディア swissinfo.ch
( 英語からの翻訳 笠原浩美 )

キーワード

2006~2007年冬のスイスにおけるミツバチのコロニーの死亡率は約20%、2007~2008年冬は18%。今回の冬 ( 2008~2009年 ) は前年の数字を上回ることはないと予測される。
スイスの養蜂業の商業的な価値は、ハチミツが6500万フラン ( 約57億7500万円 ) 、受粉が2億7000万フラン ( 約239億9000万円 ) 。動植物相に対する貢献は数字で表すことができないほど重要。
受粉価値を考慮した場合、ミツバチは、牛、豚に次いでスイスで第3番目に価値のある家畜となる。

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冬の脅威

ヨーロッパのミツバチの寿命は活動期間が夏か冬かの季節によって異なるが、数週間から数カ月間生きる。
夏期、毎日1000匹以上が生まれ、また約同数が死ぬ。
冬期には生まれないため、死亡率は低下する。
冬に活動するミツバチは8月から10月の間に生まれ、新しい活動期の継続を確実にする。
ミツバチの寿命が少しでも縮むと、春の活動再開やコロニーの存続が危機にさらされる可能性が出る。

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