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モントルー・ジャズフェスティバルを始めて42年

クロード・ノブス氏 swissinfo.ch

今年も「第42回モントルー・ジャズフェスティバル」が7月4日から始まる。

このフェスティバルの創始者、クロード・ノブス氏に話を聞いた。

 モントルーの町おこしに、好きだったジャズのフェスティバルを考えついたノブス氏。42年前、こうしてスタートした「モントルー・ジャズフェスティバル」は、今やジャズだけではなく、ソウル、ロック、ヒップホップなどさまざまなジャンルのトップクラスが世界から集まるフェスティバルになった。昨年から多くの改革が行われたという42回目の開催を前に、ノブス氏にインタビューした。

swissinfo : なんと42回目のジャズフェスティバルに挑戦されることになりますが。 

ノブス : プログラムに取り掛かる前は毎年、同じことを自分に問いかけます。プログラムを完成できるか、私にはまだ情熱があるか、ミュージシャンへの連絡など、すべてをやれるかと。

プログラム作成の中心人物ロリ・イミと、目立ちませんが、25年以上も一緒にやっているミカエラ・メッテルトとは、時に意見が合わなくて大喧嘩します。しかしそれも情熱があるからで、プログラム作成は1つのチャレンジです。とにかく水に飛び込んで、なにか感じのいい物をつかんで向こう岸にたどり着こうとするのです。

swissinfo : 2007年は大きな改革に着手された年で、特に「モントルー・ジャズフェスティバル基金2 ( Fondation Montreux Jazz 2 ) 」を創設されましたね。 

ノブス : この基金は、若いミュージシャンの創作活動を助け、またピアノ、ギター、歌からなる3部門のコンクールを支援するためのものです。特にコンクールは国際的な広がりをみせてきています。

さらに、基金はミュージシャン自身が行うワークショップを助けます。B.B.キングやハービー・ハンコックでさえ、軽く引き受けてくれたこのワークショップは、誰もが無料で参加できるというものです。しかしこんな形でもインフラにかなりの経費がかかりますから。

また「ベルネ公園 ( Parc Vernex )」での無料のコンサートも基金がまかないます。

この基金のお陰で、メッセンジャーたちが税金対策を行いながら、資金を出してくれるようになりました。今までモントルー・ジャズフェスティバルは営利団体と見なされていましたから、援助が難しかったのです。

こうして、若いミュージシャンの創作を助けることから、フェスティバルを切り離すことができ、組織が柔軟になってきました。

swissinfo :  「モントルー・ジャズフェスティバル 」という名のフェスティバルを海外に持っていく企画、例えばモロッコのマラケシュに持っていくという話はどうなりましたか?

ノブス : マラケシュ市の代表や観光協会なども来て、契約を取り交わしたのですが、突然、国の方針が変わってダメになりました。しかし可能性は残っていて、新しい代表と交渉が始まると思いますが、時間がかかります。モロッコはフェスティバルを開催するのはむずかしい国です。

しかし、シンガポールとはもう5年間協力してフェスティバルを行い、アトランタとは20年の付き合いです。

swissinfo : フェスティバルのプログラム作成者ロリ・イミが、「モントルーに来るミュージシャンは全員ノブスに会いたがる」と言いましたが、演奏家が組織者に会いたがるというのはめずらしいのではないでしょうか?

ノブス : それは恐らくディープ・パープルの有名な曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の中に、「ファンキーなクロード」として私が登場するからでしょうか。また恐らく私のミュージシャンとの付き合い方のせいでしょうか。

私はいつも、ミュージシャンのサインが欲しいなどという邪心からではなく、とにかく一番に世話をしてあげないといけないのはミュージシャンだと思っています。いえ、訂正します。まず大切なのは、1日か2日前に到着する舞台装置の関係者たちです。彼らの面倒をみてから、ミュージシャンの世話に取り掛かります。

確かに音楽関係者の間では、「モントルーに着いて、午後はクロードの家に行き、演奏のビデオを見るのは素敵だ」といったことがよく言われます。お祭り的な雰囲気を作ろうとしています。スターを招くというのではなく。

第一、家に来ると皆スターではなくなり友達になる。そしてもし、この友達的な関係のお陰で、ミュージシャンたちのモントルー・ジャズフェスティバルへの熱意が高まるなら、これほどうれしいことはありません。

swissinfo、ベルナール・レショウ 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳 

モントルー・ジャズフェスティバルの創設者、クロード・ノブス氏は、彼の後継者はフェスティバルの事務総長マチュー・ジャトン氏になると発表したが、ノブス氏の引退時期は未定。

プログラムに関しては、現在のスタッフが今後も続ける。ロリ・イミ氏が「マイルス・デイビス・ホール」、ミカエラ・メッテルト氏が「オーディトリウム・ストラビンスキー」、ステファニ・アロワシア・モレティ氏が特別イベントを各々担当する。

「第42回モントルー・ジャズフェスティバル」は、7月4~19日に開催される。

2つの舞台で、90のグループの演奏が行われる。

シェリル・クロウ、ジョーン・バエズ、ザ・ラカンターズなどの、スイスで初公開のコンサートが30近く開催される。

そのほか、無料の250のコンサートとDJが開催される。

およそ1800万フラン ( 約18億円) の予算。

クロード・ノブス氏は長年、モントルー・ジャズフェスティバルの体験をもっと一般の人にも味わって欲しいという希望を持っていた。今年初めてこの願いが叶い、6月27日から「モントルー・ジャズ・カフェ第1号」がジュネーブ空港に誕生する。

カフェ内にはハイ・ビジョンの大型スクリーンが設置され、過去のアーカイブの中から聞きたい曲と演奏風景を選べる。このカフェで出される料理もノブス氏の考えを反映したメニューで、高級レストラン「リオン・ドール ( Lion d’Or ) 」のシェフ、ジル・デュポン氏との協力で実現する。

モントルー・ジャズ・カフェは国際的な広がりを考えている。すでにドバイ、シンガポール、香港などが興味を示している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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