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その将来を問われるアルプス地域

グラウビュンデン州のグレイナ平原 Keystone

連邦研究基金 ( SNF ) が援助した研究プログラム「アルプス地域の風景と居住 ( PNR48 ) 」の調査結果によると、この地域の将来は、やはり政府の援助にかかっているという

離村の問題は、それが一部か全体の離村かにかかわらず、率直にもっと話し合われるべきだとRNR48の研究者は口をそろえる。

 「他の地域の援助なしには、全てから遠いアルプス地域は生き延びられない」という結論を、PNR48は出した。また、問題は「いかにこの地域の風景の価値を利用するか」という点に集約されるという。要するに、この地域の風景が生み出す経済的価値とこの地域の将来性を深く推察する必要があるという。

アルプス地域の現実

 「周辺のまた周辺」と研究者が表現するように、観光にも縁がない全てから遠いアルプスの地域がある。確かに、開発できる潜在的価値がないわけではないが、現在、経済的に生きていくのが難しい村がたくさんあるという。

 国境付近、山岳地域など過疎地域を対象にした国の地域対策 ( NPR ) でさえ、こうした地域の深刻な問題を率直に話し合うのを避けているとPNR48の研究者は指摘する。

 「幻想をもつべきではありません。こうした地域は、他の地域の援助なしには生き延びられない。やがて人口0になるでしょう」と研究者は口をそろえる。

風景を最良に利用するには

 しかし、一方、「アルプス風景の価値利用」というテーマで、PNR48が提示したものは、この地域の発展を成功に導く鍵を成すと同時に、政策決定者にとってのヒントにもなっている。

 まず第一に、十分認識されていない、いろいろな可能性の開拓。例えば、観光、再生可能なエネルギー ( 木材、水、風 ) の利用、山で生産される産物の商品化など、経済面での開発を行うことである。 次に、以上のような経済開発を行いながらも、風景は「最良の方法」で利用される必要がある。風景を守りながら、エコロジーの達成目標にも沿い、それがアルプスの住人に利益をもたらすような方法である。

 これらは、どういう奨励策をとるかにかかっている。過剰な農産物の生産も避け、不適切な開発計画も避けなくてはならないだろう。

「奨励される過疎地」

 だが、提示された開発の可能性にもかかわらず、研究者たちは「本当のところは、いかなる犠牲を払っても、こうした地域住民を守ろうとするのか、それとも経済的、さらにはエコロジー的観点から、『奨励される過疎地』にするのかを真剣に話し合うところにきています」という。

 「いずれにせよ、関係者間の話し合いは、タブーなしで行われるべきだし、結局大切なのは、価値判断と政治的決定です」と結ぶ。

swissinfo、外電 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

連邦の研究プログラム 「アルプス地域の風景と居住 ( PNR48 ) 」がスタートし、この程その調査結果を発表した。これは、地域の要求に合い、経済的に持続でき、かつ政治的にも実現できるようなアルプス地域の発展を考えた対策を探るプログラムである。

2005年、連邦政府は新しい地域政策 ( NPR ) を議会に提出した。

これは主に、スイスの国境地域、村落、山岳地域など過疎地域を対象にしている。

NPRを経済的に援助するための基金を創ることを、政府は提案している。

NPRに関する連邦の法律が9月28日、下院の国民議会で承認されたが、上院の全州議会ではまだ、意見が分かれている。

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