スイスの極右政党、初めて地方行政の長となる
スイスの地方議会に、歴史上初めて極右政党が町長に当選した。
まだ十代のドミニク・バンホルツァー氏を歴史上初の極右政党町長として選んだのは、スイス北部ギュンスベルク町。同氏の当選はスイス全土を動揺させた。
4月末に行われたギュンスベルク町長選で、極右のスイス愛国民族主義党(PNOS)代表、バンホルツァー氏が21%の票を獲得して当選した。彼は、麻薬密売人や密入国してきた犯罪者に対する厳しい処罰を要求する一方、農業に対する手厚い保護を訴える選挙運動を展開し、これが当選につながった。バンホルツァー氏の当選は、PNOSにとって、6ヶ月前にベルン州のランゲンタール地方議会に議員を送り出して以来の快挙となった。
パニックになることはないけれど
スイスの極右グループの動向を長年追いかけてきたジャーナリスト、ハンス・シュトッツ氏は、PNOSが2人、地方政府に党員を送り出したからといって、今後他の地域でも極右が選挙に当選するという可能性は低いと見ている。
「他の極右が20年間かけてスイスに過激思想を浸透させようと努力してきた結果が、たったこれだけです。パニックになる必要はありません」
PNOSは2000年に創立され、現在は100人から130人の党員がいる。彼らの活動地域はスイス中部とバーゼル周辺だ。
PNOSの中には過激なメンバーがいるものの、当初は暴力を否定する穏健派右翼をアピールして勢力を拡大した。しかしシュトッツ氏は「彼らの公約をよく読むと、その核にはナチズムや人種差別が入っています」と語る。
マイノリティが標的
2004年に発行された連邦政府の過激派政党に関するレポートでも、シュトッツ氏の意見と同じ見解が載せられている。同レポートは、「PNOSの企画した行事や新聞などの出版物は、外国人に対する反感や民主主義に対する敵意、右翼過激派の表現が使われている」と懸念を示している。
シュトッツ氏によると、PNOSの主張は同性愛者やユダヤ人、外国人などのマイノリティに対する暴力を肯定している。また、PNOSの若い世代のグループは、ドイツの右翼過激派との連携も深めようとしているという。
しかし、同氏は右翼過激派政党で当選した19歳の町長に関して、パニックになるほど世間が騒ぐことではないと語る。「彼らはまだ社会のほんのはじっこにいるに過ぎません。一方で、スイス社会は彼らの行動に非難の声をあげていくことを怠ってはなりません。私たちは、右翼過激派の言葉や行動をいつも注意していく必要があります」
swissinfo ガビ・オクセンバイン、 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳
スイスの極右は沢山の小さなグループで構成されている。
彼らはコンサート開催やインターネットなどを使ってメッセージを伝える。
2004年出版の連邦政府レポートによるとスイスの右翼過激派は約1,000人、支持者は約800人。平均年齢は16歳から22歳。
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