ストリップダンサーの新労働条件は机上の空論
改定され本年から発効したダンサーの労働基準法は、これまで苛酷な労働を強いられた彼女たちに有利な条件で働いてもらえるように考慮された内容となっている。しかし、業界は不況のあおりで業績は振るわない。雇用者の逃げ口もあり、ザル法との批判を受けている。ダンサーの雇用条件が実際に改善するかは疑問視されている。
ダンサーを保護する団体(売春業を考える会、ProKoRe)は、法改定のほかに州当局の管理の改善と強化を訴えている。
「スイスのキャバレーでは、ダンサーの踊りは二の次」
ドミニカ共和国から来たダイアナは言う。かつてストリップダンサーだったブラジル出身のドラも
「沢山アルコールを飲んで、お金をもうけないと、次の契約はないと覚悟しなければならなかった」
と説明してくれた。ダンスを見に来る男性にアルコールをどんどん飲んでもらう。これもダンサーの仕事である。3千円のシャンペンがここでは4万円と10倍以上するが、売春のとき男性を個室に招いたときを狙っておねだりするのが、一般化しているという。
売春はダンサーのタブー
売春もダンサーの仕事の一部。しかし、これについて語る女性は少ない。売春をしていると認めた途端、解雇されスイスを退去しなければならないからである。
改定された労働法では、客のアルコールの消費量を上げるような行為を禁止しているし、労働許可が8ヶ月以内という期限付きの場合、ダンサーの売春は違法となる。一般の労働者の1ヶ月の労働日数は最高21日。一方、ダンサーはこれまで26日とされていたところ、給料を据え置いた上で今後は23日となる。アフリカやアジアから働きに来る女性を支援する「売春業を考える会/ProKoRe」はこのほど記者会見を行い、改定された労働法を支持すると表明した。
しかし、せっかくの法改定も実際には雇用者にとっては、ザル法で、あらゆる逃げ道があると批判している。ProKoReが2年前にダンサーを対象に調査したところによると、雇用者は給料をピンはねし、売春など違法労働を強制するという実態が明らかになった。
体はアル中でぼろぼろ
アルコールの消費量を上げるよう指示されるのは普通で、ダンサーの健康を害する原因の1つとなっている。
売上に貢献するという契約の元、売上8千フランで2百フランを最低に、最高1万3千フランの売上があれば、1千3百フランのコミッションが貰える。売春行為とリンクして1本5百フランのシャンペンが注文されるような仕組みである。売上が下がると、雇用者に不誠実だったとしてペナルティがかけられ、ダンサーの給料も下がる仕組みになっている。さらに、出身国とスイスでの2重の仲介人を通しているため、業者に支払う手数料も馬鹿にならない。
ほとんどが負債を抱えて仕事を始めるという。こうした理由から客と一緒にシャンペンを飲みつづけ、アルコール中毒で病院に通う女性も少なくないという。
契約が良くても状況は変らない
改定され今年から発効になる労働基準法が、ダンサーにより有利になったとしても、現場における当局の管理がない限り、状況は変らないとProKoReの調査は指摘している。担当局が複数のため、責任の所在がはっきりしないのも問題。まずは、労働者として義務である健康保険の加入の有無を調べることから始めるよう提案している。
スイス国際放送 レナート・クンツィ (佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)
2003年登録されているダンサー数
1360人
年間人身売買の被害者数およそ3000人
東欧諸国出身の女性が多い。
契約時点ですでに負債を抱え売春を強制される。
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