国連要職にあるスイス人達
正式加盟していなくても、スイス人は国連の要職に就いていた。デルポンテ旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷主任検察官、オギ・スポーツ開発スペシャルアドバイザー、ジーグレル国連人権委員会食糧特別調整官はスイス人だ。
政治学者のクルト・ガステイガー氏は「スイス人が国連に対するよりも、国連がスイス人に対する方がオープンだ。」という。「国連システム内にスイスが正式参加することは良いことだが、国連職員にとって国籍は大した問題ではない。国連の職員をインド人とかアルジェリア人として受け止めることはあまりない。国連職員は一様に国連の職員で、良い仕事をしている人々と見なすだけだ。」とガステイガー氏はいう。国連でのスイス人の存在が特殊なのは、彼等の祖国スイスが国連に加盟していないということだ。
国連で最も卓越した存在のスイス人は、99年からルワンダと旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷の主任検察官の任にあるカーラ・デルポンテ氏だ。スイス連邦検察官時代、デルポンテ氏は粘り強いコロンビア麻薬コンツェルンやイタリア・ロシアのマフィア追跡で検事として信頼と高い評価を得ると同時に、世界の暗黒社会を敵に回したため暗殺されかけたこともある。ティチーノ州のデルポンテ検事に国際戦犯法廷の検察官として白羽の矢をたてたのはアナン国連事務総長だ。ミロシェビッチ前ユーゴ大統領を司法のもとに引き出したのは、デルポンテ主任検察官の粘り強い捜査の結果による。
2000年度のスイス大統領を務め、大統領任期終了後政界から引退したアドルフ・オギ元国防スポーツ相は、現役時代アナン国連事務総長と公私共に近しかった関係から、国連スポーツ開発スペシャルアドバイザーに任命された。「アナン事務総長は、自分の平和アジェンダからスポーツの側面が欠けているとし、この職務のため私を任命した。」とオギ氏はいう。元アルペン・スキーの選手だったオギ氏は、スポーツは異文化の架け橋となり相互理解と平和を振興するものだと確信している。「私の仕事はスポーツ振興ではなく、スポーツを通して国連の活動を振興することだ。」というオギ氏だが、与えられた予算は少なく、人員も少ないので限定された範囲での活動を余儀無くされる。オギ氏個人は国連から給与はもらっていない。
ジュネーブ州検事で元社会民主党の議員だったジャン・ジーグレル氏は昨年9月、国連人権委員会から食糧特別調整官に任命された。「地球は惑星全体を養うのに十分な食糧を生産している。全ての人は食糧を得る権利を有する。が、この権利は日々侵害されている。恥知らずで言語道断なことで、断固告発すべきだ。」と、著書「スイス銀行の秘密 – マネーロンダリング」でスイスの政治家と金融機関を告発したジーグレル氏はいう。
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