謎の肺炎でWHOが初めて渡航延期勧告を発する

アジアで流行している重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大を防止するため、世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)が2日、香港と中国、広東省への渡航予定のある旅行者に日程を延期することを勧告。
WHOが特定の地域への渡航自粛勧告を出すのは初めて。また、中国政府は北京に派遣されたWHOチームがSARSの発生地とみられている広東省への調査許可をしたと報告。
渡航自粛勧告
WHOのヘイマン博士によるとこの勧告は「3月15日以来、香港から帰国した旅行者9人感染したケースと香港での感染経路がまだはっきり解明されていないために決断した」と2日に発表した。この決定は関係国や国際航空運送協会(IATA)などとの協議の上、決めたもので「病気についてまだ完全に理解がされていないうえ、今のところワクチンや治療法が無いため」とジュネーブでの会見で説明した。渡航自粛勧告の期限は設定されていないが香港や広東省との連絡を取って日々再検討される予定。
香港、台湾の中国批判
SARSの兆候が一番先に現れたのは昨年の11月で、中国、広東省で広まった。これまで、中国政府は詳細の公開を避けていたため香港のケースとの関連確認に時間がかかり、香港の地元紙や台湾は中国政府の非協力的な態度を非難していた。しかし、WHOは「中国はWHOの完全なパートナーとなった」と発表し、「中国政府は3月だけでも361人の感染者、9人が死亡したと伝え、今後、国内SARS監視制度の情報をWHOに報告することを約束した」と述べた。
感染経緯の解明
これまで、WHOは感染経路について感染患者との「人から人への直接の接触」を必要とし「空気感染はない」という見方をしていたが、香港でのマンション感染などから何か環境(例えば下水や水道など)を通した感染が有り得るとの見方に変わっている。しかし、依然として、空気ではなく、触ったものを通してウイルスが感染するとの見方をしている。
スイスの反応
スイス政府は2日、4月3日から10日までバーゼルとチューリヒで開催予定の時計・宝石見本市に香港、シンガポール、ベトナムや中国からの出品者の参加禁止を発表した。これによって、400ほどの展示スタンドとそれにかかわる2500人から3000人が来られなくなる。香港からの参加者はスイスに続き、一番大きい参加地のため、チューリヒでは展覧会場の50%の展示スタンドを失われることになる。これを受けて、香港から来た展示会関係者はこの発表が遅かったことに抗議し、もうすでにスイスに来てしまった出品者はSARSのテストを受けてから出展できるように要請している。
スイスでは2日現在で、スイス連邦公衆衛生局によると4人の感染者が報告されているがSARSとは確認されてない。
スイスインフォ、A.Y.

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