高額報酬に異議あり
シャフハウゼン州の小企業主が、大企業のトップ経営陣の法外な報酬に反対するイニシアチブを提案し、署名を集めようとしている。
毎年、平均十数億円の報酬を得るスイスのトップ経営陣。数年来、この高額報酬に対して批判が高まっていた。
5〜6人の仲間に支援されイニシアチブを発議したのは、30人ばかりの従業員を抱える化粧品関係の会社社長、トマス・ミンダー氏。18カ月以内に10万人の署名を集める必要があるため、仲間やボランティアの人々に賛同を呼びかけている。このイニシアチブは色々なサイトに載っているが、11月18日を、スイス全国で署名を大掛かりに集める日に設定した。
支持者
ミンダー氏は、イニシアチブ委員会を個人的カラーの強いものにはしたくないが、組合や政党の支持は得ようと考えている。これらが持つネットワークを利用したいと思うからだ。
「今のところ、組合側は、支持できそうな良い提案だが、まず支持を表明する前に内容をきちんと把握しようと考えているようです」とミンダー氏の片腕、クラウディオ・クスター氏。一方、 スイス労組組合 ( USS ) の責任者の一人、エヴァルド・アッカーマン氏は、「正直な所、驚きました。こんなイニシアチブが提案されるなんて考えてもいませんでした。しかし、内容がスイス労組組合の方針に合えば、支持しようと考えています」と言う。
政府は信頼できない
ミンダー氏がイニシアチブを思いついたのは、政府が来年行なおうとしている「株式会社の権利修正」に信頼を置いてないからだ。株主の権限を伸ばそうという計画だが、恐らくそれが十分ではないと思っている。
今回のイニシアチブは、株主総会が取締役会メンバーのボーナス、給与、その他の報州全ての大枠を決め,また会社の方向付けも決める権限を持つことを提案している。
ところで、ミンダー氏自身は、シャフハウゼン州ノイハウゼン ( Neuhausen ) で、3代続く化粧品関係の会社経営者で、政治に特に積極的に関わっているわけではない。
問題は深刻
トップ経営陣の高額報酬は、ここ数年、スイスで問題になっていた。例えば医薬品大手ノバルティスのダニエル・ヴァゼラ氏や、UBS銀行のマルセル・オスペル氏などは、約20億円の年収を得る。
昨年夏、スイス経営者連盟( UPS ) のルドルフ・シュテンプリ氏は、こうした事態に警鐘を鳴らし「一番危険なのは、一般市民が会社のシステムに対して信頼を失うことです」と語った。大手食品会社ネスレの元取締役会会長、ヘルムート・マウハー氏や、大手機械工業スイスメン ( Swissmen ) の社長、ヨハン・シュナイダー・アンマン氏も同様の懸念を表明している。
swissinfo、外電 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
スイスの平均年収は6万5000フラン ( 約615万円 )
トップ経営者陣の給料は2000万フラン ( 約19億円 ) を越える。
2005年、一つの会社内で、低額給与の労働者と高額給与の雇用者間の給与の開きは1対544を記録した。2006年の労働者側の給与は、2005年に比べほとんど増額しなかったのに対し、50のトップ企業の経営陣の給与は18%も上がった。
イニシアチブとは、国民の発議。スイス国民は、18カ月以内に10万人の有権者の署名を集めることにより、国民投票として発議することができる。
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