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ラインフェルデンでリゾート体験

旧市街のメインストリート、マルクトガッセ(Marktgasse)の終わりに位置する橋を渡れば、すぐにドイツ。ライン川を隔てて「Rheinfelden」という同じ名前の町が存在する。 swissinfo.ch

日本同様、スイスの冬の楽しみの一つに温泉がある。バーゼルから急行電車でわずか10分ほど、アールガウ(Aargau)州に位置するラインフェルデン(Rheinfelden)に、パークリゾート(Parkresort)という温泉リゾート・療養施設がある。新年早々、義妹一家を誘って束の間のリゾート気分を味わってきた。

 この施設は大きく三つに分かれる。四つ星ホテル「パークホテル・アム・ライン」(Park-hotel am Rhein)と、療養・治療専門クリニック「サリナ」(Salina)、そして私達が目指す「ソレ・ウノ」(Sole Uno)という名の温泉施設である。

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 外観はそれほどぱっとしないが、施設内は明るく清潔、スタッフも親切だ。受付から美しい、青が基調の屋内プールが見え、嫌が上でも期待が高まってしまう。基本的に年中無休だが、お出かけの前にはホームページで確認した方が良い。受付では先にお金を払い、チケットを受け取る。これがロッカー使用券だ。一日券または、2時間、3時間、4時間券、回数券や年間券など、種類が豊富なので、これも前もってホームページで見ておくと買いやすい。私達は3時間券を購入した。

 受付ホールすぐ隣の検札機を通ってロッカールームに行くが、日本の温泉施設と違って、土足である。気になる人は、スリッパを持参してプールまでの行き帰りに履くと良い。男女共同のロッカールームで、受付から丸見えなので、着替えは必ず個室内で! そして脱いだものや荷物はそこに残さずにロッカーに入れて鍵を閉め、その鍵を手首などに巻いて常時携帯する。タオルはプールの近くに置いてあり、自由に使用できる。

 温泉プールは日本より温度は低めで、36~38度。すべて塩水である。大プールは施設内と、外の二箇所。寒空の下、ゆっくり浸かったり軽く泳いだり、ピンと張り詰めた外気を吸って清々しい気分になった。プールの端にはお湯の噴き出し口があり、場所を移動しながら身体の様々な部分をマッサージすることができる。横入りはエチケットに反するので、端から順番に回っていこう。大プールだけでなく、他にもいろいろな種類の風呂がある。地下には塩度12%というプールがあり、楽に体を浮かせることができる。仰向けに浮き、目をつぶっている人がたくさんいた。ここでは時間を忘れて静かに漂ってみたい。

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 そろそろもっと熱い湯に入りたい……と、つい思ってしまうのが日本人。一階に戻って、ふと、「火と水の風呂」というのが目に留まり、「火」の方に入ってみたが、それでも何となく物足りない。帰宅後、ホームページで確認してみたら、温度は40度。私が入っている時、恐る恐る足を漬けて、「火傷してしまう!」と慌てて出て行かれたご婦人がいたが、スイス人は熱い風呂に慣れていないのだろうか。もう一つ、「水」の方は15度。温度差のある二つの浴槽に素早く交互に出入りすることは体に良いと、19世紀、ドイツ人神父、ゼバスチアン・クナイプ(Sebastian Kneipp)によって既に発見されている。クナイプ神父は自ら水の治癒力で難病を克服したという経験を持ち、「クナイプ自然療法」の祖である。

 また、室内プールと同じ空間には、ミストサウナがいくつかある。(様々な色のボックス内がミストサウナである)ユーカリ&ミント、オレンジ&レモン、ココナッツ&ヴァニラの三つに入ってみた。これらの香りを含んだ霧を浴びることによって、血行を良くし、肌を洗浄し、呼吸器官を整えるのだという。さらに、筋肉の緊張がなくなり、四肢や関節の痛みを和らげるとのこと。いいところ尽くめのミストサウナ、ゆっくり時間を取って回っていただきたい。

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 ここまで来たら、是非サウナにも入ってみたい。去年の六月に起こった火災のため、一時的に閉鎖して工事が為されていたサウナ施設は、年末にリニューアルオープンした。サウナの利用料金も入館料に含まれる。14歳以上という規定だが、男女混浴の上、基本的に全裸(またはタオルを巻いただけ)で楽しむ場所なので、苦手な人にはお薦めしない。(ホームページによると、フィンランド式サウナとバイオサウナは男女混浴と男女別の日が交互にあるので確認しておくこと)

 サウナに通じる扉は、ハマム(アラビア語で公衆浴場、有料でマッサージも頼める)室の隣の、目立たないところにある。開けるとすぐに男女共同の脱衣所なので、びっくりしないように。こちらにも貸しタオルがある。年齢層はやや高め、7対3ぐらいの割合で男性が多く、カップルで来ている人もちらほらいた。庭に出てみると、何軒か小屋が建っており、その中も各種サウナ。冬の最中、庭でくつろぐ人はいなかったが、ベンチもあり、暖かい時期は散歩や日光浴を楽しむことができる。

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 そして庭の反対側には新施設がある。一階には大きな水槽があり、魚を見ながらの足湯はまた格別。ボタンを押すだけの自動足湯で、仕掛けについては行ってからのお楽しみ! また、水槽の逆側には暖を取りながら休憩を取ることができる部屋、二階にも明るく開けた居間風の温かなリラックス空間がある。これらの施設を回っていると3時間などあっという間だった。ゆっくり昼寝でもするのであれば、一日券購入が望ましいかと思う。

 シャワーを浴び、着替えてホールに戻ってくると、受付前は長蛇の列だった! 私達が到着した10時前には人もまばらだったのに。まだ多くの州は冬休み中の時期だったが、おそらく土・日も同様であろう。ロッカー数が限られているため、入場制限をしているのだ。平日、もしくは週末・休日なら朝一番に行くことをお薦めしたい。

 プールがガラス越しに見えるカフェテリアで昼食を取った後、ラインフェルデンの旧市街を歩いてみた。小さくて歩きやすい。パークリゾート側の門から入り、メインストリートを進んでいくと、右手に橋が見える。ライン川にかかっているこの橋を渡ると、すぐにドイツ、同名の町に入る。国境線は橋の半ばぐらいにある。スイス・ドイツ両国はシェンゲン協定加盟国なので、税関の建物はあっても審査はなく、自由に行き来できる。自分の足で国境越えの経験をしたい、という人には打って付けの場所である。

 今年の正月休暇は、あいにくの曇り空が広がっていたが、近場でのリゾート体験と小一時間ほどの散歩で、家族ともども満たされた一日となった。

マルキ明子

大阪生まれ。イギリス語学留学を経て1993年よりスイス・ジュラ州ポラントリュイ市に在住。スイス人の夫と二人の娘の、四人家族。ポラントリュイガイド協会所属。2003年以降、「ラ・ヴィ・アン・ローズ」など、ジュラを舞台にした小説三作を発表し、執筆活動を始める。趣味は読書、音楽鑑賞。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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