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ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー

ローザンヌ国際バレエ イタリアのマシャーリさん優勝

マルコ・マシャーリさん
優勝を飾ったマルコ・マシャーリさん。会場から大きな喝采を浴びた Gregory Batardon

若手ダンサーの登竜門といわれるローザンヌ国際バレエコンクールの決勝が8日行われ、イタリアのマルコ・マシャーリさん(17)が1位に輝いた。日本人でただ一人決勝に進んだ松岡海人さん(15)は素晴らしい連続ピルエットを披露したものの、入賞を逃した。

第48回を迎える今コンクールの決勝には、21人が挑んだ。優勝したマシャーリさんはイタリア・カラブリア出身。一つ一つの動きのディテールに気を配った美しい踊りを見せ、高く評価された。

マルコ・マシャーリ
眠れる森の美女、デジレ王子3幕を踊るマシャーリさん Gregory Batardon

審査委員長のフレデリック・オリヴィエリ氏は、swissinfo.chのインタビューに、「(マシャーリさんの)才能の傑出ぶりは明白で、疑う余地なく選ばれた」と説明。審査員からは「純粋な才能があり、徹底した基礎訓練が目に見え、何よりも将来性が感じられた」と評された。

マシャーリさんは、10歳でバレエを習い始めた。子供の頃、祖父と父親がよくクラシック音楽を聴いていたため、家で音楽に合わせて踊るのが好きだったと振り返るが、両親はダンスとは全く無縁。踊るのが心から好きだったので、親に頼み込んでダンスの学校に入学し、バレエを踊るようになったという。現在は、モナコ王立プリンセス・グレース・アカデミーに所属。入学当初は身体の調整に困難を感じ慣れるのが難しかったと言うが、家族のような雰囲気があるところが気に入っていると話した。

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このコンテンツが公開されたのは、 ローザンヌ国際バレエコンクールで優勝したマルコ・マシャーリさんは、舞台上のインタビューで、けがのため途中棄権した山田ことみさんに語りかけた。

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バリエーションは、クラシックで「眠れる森の美女、デジレ王子3幕」、コンテンポラリーで「クロマ」を踊った。いずれも作品の音楽性に惹かれて選んだという。決勝での踊りは過去に優勝した先輩たちのアドバイスに従って「自分らしく踊った」と語った。

ローザンヌ国際バレエコンクールで、モナコ王立プリンセス・グレース・アカデミーから優勝者が出たのは今年で3年目。昨年はマッケンジー・ブラウンさん2018年はシェール・ワグマンさんが優勝している。

「フローラの目覚め」で可憐な踊りを見せたアヴァ・アルブックルさん
「フローラの目覚め」で可憐な踊りを見せたアヴァ・アルブックルさん Gregory Batardon

今回、2位に選ばれたのは、米国のアヴァ・アルブックルさん。美しい身体表現が「18~20歳くらいの若いプロダンサーのレベルだ。まだ15歳だから、プロになる可能性が芽吹いている。まるで磨けば磨くほど輝くダイヤモンドのような子だ。コンクール開催中にも大きく成長した」とオリヴィエリ氏は評価した。

ジョアオ・ヴィトール・サンタナさん
コンテンポラリー・バリエーションでウェイン・マクレガー振付のクロマを披露するジョアオ・ヴィトール・サンタナさん Gregory Batardon

3位に入賞したのはブラジル・サンパウロ出身の17歳、ジョアオ・ヴィトール・サンタナさん。とても貧しい家庭環境で、しかも身長が低いことで差別を受けた。そんな自分を救ってくれたのは、踊ることだったという。ダンスで自分の人生が変わるのではと信じ、バレエをしようと4年前に決意した。現在は就学援助制度を受けながら寮生活でバレエを学ぶ。これまでは「家族のために、学校の先生のために上手く踊らなくては、と思うことがあったが、(今コンクールの)準決勝や決勝では自分のために踊った」。それが受賞につながり「とても嬉しい」と喜びを語った。

入賞を逃した最年少の中学3年生、松岡海人さん(15、愛媛県松山市)は「自分でもよく頑張ったと褒めてあげたいくらい、(決勝の出来は)達成感がある。でも基礎力が足りなかった」。松岡さんは「呼ばれなかったという悔しい気持ちを忘れずに、これからも努力していきたい」と気持ちを新たにしていた。

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ベストスイス賞

バーゼル劇場バレエ学校のマテイ・ホレレオさん(18)は、6位に入賞し、ベストスイス賞にも選ばれた。ベストスイス賞はスイス国籍またはスイスで2年以上バレエ教育を受ける決勝出場者のうち、最も優れたダンサーに賞金が授与される。ホレレオさんは、ルーマニア出身で、バレエ歴は4年。もともと社交ダンスのダンサーで、テクニック向上のために14歳で始めたバレエが「いつしか自分が情熱をささげるものになり、プロになりたいと思うようになった」と話す。

ホレレオさんはswissinfo.chの取材に「このコンクールに出ることがずっと夢だった。入賞は自分にとってとても価値のあること」と笑顔を見せた。

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1位 MASCIARI Marco イタリア 

2位 ARBUCKLE Ava 米国

3位 SANTANA João Vitor ブラジル 

4位 ZHANG Lin 中国

5位 KANG Chaeyeon 韓国

6位 HOLELEU Matei ルーマニア

7位 VAZ Vitor Augusto ブラジル

8位 WANG Yuyan 中国

コンテンポラリー賞 MASCIARI Marco イタリア

ベスト・ヤング・タレント賞 ARBUCKLE Ava 米国

ベスト・スイス賞 HOLELEU Matei ルーマニア

観客賞 PIRES Catarina ポルトガル

Web観客賞 WANG Yuyan 中国

正式名称はPrix de Lausanne外部リンク(プリ・ド・ローザンヌ)。才能豊かな若いバレエダンサーがプロの道に踏み出すことへのサポートを目的とし、スイス西部のヴォー州ローザンヌで1973年から開催されている。15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクールの一つで、若いダンサーの登竜門とも言われる。現在カンパニーとプロとして契約中、または過去にプロ契約を結んだことのあるダンサーは参加できない。入賞者は、奨学金を受け取り希望するバレエ学校かバレエ団で1年間研修できる。

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