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ワシントン条約第18回締約国会議 組織化進む野生動植物の密輸 スイスの専門家が警告

シンガポールで今年7月に押収された約9トンの象牙と11トンのセンザンコウの鱗

シンガポールで今年7月に押収された約9トンの象牙と11トンのセンザンコウの鱗。両方とも絶滅危惧種に指定された約2千種類の哺乳類に含まれる動物だ

(National Parks Board)

スイスのジュネーブで現在、ワシントン条約第18回締約国会議(CITES-CoP18)が開催中だ。低リスクで高収益のビジネスとして、犯罪組織による野生動植物の密猟と違法取引が横行していることから、スイス代表団は密輸に対する刑罰の強化を求めた。

連邦内務省食品安全・獣医局(BLV/OSAV他のサイトへ)で「種の保存」の部長を務めるマティアス・レアチャーさんは、2010年からワシントン条約(CITES)の動物委員会で科学専門家として助言を行っている。今月17~28日までジュネーブで開催中のワシントン条約の第18回締約国会議(締約国183カ国)(COP18)他のサイトへでは、スイス代表団のリーダーを務める。

CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(通称ワシントン条約)

1973年にワシントンで採択された同条約によって保護されている動植物は、現時点で3万6千種以上に上る。スイスは1974年に条約を批准し、今回、会議のホスト国を務める。CITES事務局他のサイトへはジュネーブに拠点を置く。

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スイスインフォ: ジュネーブで開催中の「ワシントン条約第18回締約国会議」の議題は、非常に盛りだくさんです。100部近い文書に加え、57件の提案がアジェンダに付随しています。レアチャーさんにとって、優先的な議題は?

マティアス・レアチャー: ゾウとサイについては、大々的に報道され多くの意見が交わされるだろう。また海洋種についてはサメやサカタザメなど、意見が対立する議題も多い。議論は恐らく難しい展開になるだろう。

連邦内務省食品安全・獣医局(BLV/OSAV)で「種の保存」の部長を務めるマティアス・レアチャーさん

(© Keystone /adrien Perritaz)

魚類および海洋種のサステナビリティをめぐり、漁業国はワシントン条約ではなくそれぞれの地域の漁業管理組織が取り締まるべきだと主張している。しかしワシントン条約の締約国は、これらの組織が問題に十分に取り組んでいないと感じている。

そしてゾウとサイについての議論はいつも堂々巡りだ。南アフリカでこれらの動物の個体数は比較的安定しており、むしろ僅かながら増加している。そのため、この状態を保ちつつ、自然死や手術中に死亡した動物の象牙は輸出したい考えだ。しかし他のアフリカ諸国は、象牙の取引を完全に禁止すべきだという立場を取る。今回も互いに歩み寄りがあるとは考えにくい。

現時点でワシントン条約は原則的に象牙取引を禁じている。例外的な取引も、非常に高い法的ハードルを越えなければ認められない。我々はこの安全対策で十分だと認識している。そして今後も現状を維持する必要がある。

スイスインフォ: なぜスイスは熱帯魚に対する保護の強化を求めているのですか?

レアチャー: 熱帯魚は世界的に巨大なマーケットがあり、千種類以上の熱帯魚が年間合計2~4千万匹も取引されると考えられている。だがそのうちワシントン条約が監視している熱帯魚はごくわずかだ。そのため、保護されていない他の種の持続可能性の状況を明らかにするよう、CITESに要請中だ。

スイスインフォ: 会議では他にも、CITESの決定とプロセスにおける先住民の役割の強化を検討する予定ですが、これは具体的にどのように実現化するのですか?

レアチャー: 会議の決定事項が地元の先住民の生活に直接影響を与えることは多い。西側諸国のNGOは全ての野生動植物の取引を禁止したい考えだが、先住民の声にも耳を傾ける必要がある。この不均衡は修正する必要がある。

先住民のコミュニティが自然と共存し、資源を持続可能に利用しているのなら、我々は彼らの声を聞く必要がある。しかし、それをどのように実現するかは難しい問題だ。提案を出す際に先住民も含めるよう当事者に課せば、一部の人は国家政策の侵害と見なす可能性がある。これは極めて扱いにくい問題だ。

スイスインフォ: 何故ワシントン条約がこれほど重要なのですか?

レアチャー: CITESは40年に渡り活動を続けており、野生動植物の取引に関して豊富な経験を持つ。またCITESには、締約国が条約を守り、決定事項を確実に遂行させるさまざまな手段と力がある。遵守しない国は、野生動植物の取引を禁止される。

しかしワシントン条約に関連した活動域が拡大し続ける一方で、要求される作業を実際に行うために必要な手段や資金は十分に提供されていないのが現状だ。また本来の中核事業である「野生動植物の国際取引の規制」から方向性がずれ始めていると懸念する声も上がっている。

スイスインフォ: 近年、密猟と違法取引はどれほど深刻化していますか?

レアチャー: 野生動植物の種の取引は、武器、人身売買、麻薬に次いで世界で4番目に高利益な違法取引だ。例えばセンザンコウの鱗、象牙、サイの角、愛玩動物、キャビア等をめぐり、膨大な違法取引が行われている。

私が一番懸念しているのは、違法取引が巨額の利を得る組織的な犯罪へと発展していることだ。野生動植物の取引は、今や高収入で低リスクの違法ビジネスと化している。摘発されたとしても、罰則と制裁が甘すぎる国がまだ多い。 

スイスインフォ: スイス政府は制裁を強化し、商業目的で行われる保護種の売買を刑罰の対象にしたい意向です。野生動植物の違法取引はスイスでも大きな問題ですか?

レアチャー: スイスは違法取引が少ない方だが、それでも時々大きな事件が発生する。2015年にチューリヒ空港で262キロの象牙が押収された事件や、昨年冬に大きな商業規模で行われたウナギの違法取引などがそれに当たる。

国際連合総会、インターポール、世界税関機構(WCO)、国連薬物犯罪事務所はすべて、罰則を強化し、違法取引を犯罪として定めるよう各国に要請する決議案を出している。組織犯罪に立ち向かうためには、違法な活動を罰するための体制を整える必要がある。

スイスインフォ: 絶滅危惧種の保護規制を緩和する米トランプ政権の計画が物議を醸しています。この動きについてどう思いますか?

レアチャー:米連邦邦法「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律他のサイトへ」(種の保存法)はスイスにとって模範的な法律だった。CITESには含まれない、他の国で保護の対象となっている種の輸入も刑罰の対象とする新規制を作成する際、手本にされた。米国が同法律を緩和するのは非常に残念だ。世界に間違ったメッセージを送ることになるだろう。

近年、環境問題を最優先事項として扱わなくなった国が増えている。自然を持続可能に管理しながら保護する対象としてではなく、際限なく搾取できるものと見る流れが世界中で認められる。これは非常に憂慮すべき傾向だ。


(英語からの翻訳・シュミット一恵), swissinfo.ch

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