スイスの視点を10言語で

世界経済フォーラムに軍隊出動の予定

軍隊の出動が再び予定されるダヴォス会議。 Keystone

国民議会(下院)および全州議会(上院)は、世界経済フォーラム(WEF・ダヴォス会議)の開催中のセキュリティを確保するため、地元の警察のほかにもスイス軍隊を出動することを承認した。                                         

現地は経費負担が重く、政府の援助を求めているが、そもそもダヴォス会議の縮小を望んでいるというのが本音のようである。                                       

来年1月21日から25日まで、スイス東部のリゾート地ダヴォスで行われる世界経済フォーラム(WEF・ダヴォス会議)に軍隊を出動することが国民議会(下院)および全州議会(上院)で可決された。最高で6千5百人と1大隊に相当する規模の出動となる。

セキュリティにかかる経費の負担は重い

 上・下院ではこれほどの規模の出動について、経費とその必要について意見が交わされた。サムエル・シュミット国防相によると、出動経費は本来、1千8百万フラン(およそ153億円)かかるが、特別に兵士を召集をするわけではなく通常の使役中の兵を出動させるので特別経費は1百万フラン(850万円)だという。
「経費が掛かりすぎて、国としては責任がもてない」、「国内の安全に軍隊を出動させるのはいかがなものか」といった意見が軍の出動に反対する議員から出た。

 開催地のグラウビュンデン州は、警備に少なくとも1千万フラン(8億5千万円)以上かかると計算している。州のダヴォス会議委員会の秘書を務めるヴァルター・シュレーゲル氏は、
「必要経費をなるべく引き下げることが、州の任務でもある。州としては、政府に軍の出動のほかに経費の一部を国に負担してもらわない限り、ダヴォス会議の開催は危ぶまれる」
と警告している。現在のところ政府は援助額として375万フラン(3億円)を提示している。

 前回のダヴォス会議のセキュリティにかかった経費は1千3百万フラン(11億1千万円)で、総経費2千2百万フラン(19億円)の半分以上を占めた。

連邦政府と州の分担割合

 本年秋、来年から3年間、政府は年間3百万フラン(2億6千万円)を出し、州が出した赤字額の2千万フラン(17億円)までは保証すると決めた。ただし条件としてセキュリティー経費を1千万フランと定め、05年からは8百万フラン(6億8千万円)まで縮小することが挙げられた。経費の負担の内訳は、グラウビュンデン州とダヴォス会議主催者がそれぞれ2百万フラン(1億7千万円)、ダヴォス村が1百万フラン(850万円)と決められた。出動する警備隊の規模は2千人と見られる。

デモ隊の動き

 開催地のダヴォス村に警備を集中させることが意味があるのかは疑問だ。会議に反対する団体は、「各地での閉鎖」を計画している。特に初日の21日は参加者がダヴォスへ行くのを阻止する計画である。WTOやダヴォス会議に反対するグループは、ダヴォス会議が軍隊により取り締まられることに対して「拡散」作戦で対応するという。過激的グループは、ダヴォスでのデモも当然計画しており、「開催者や州との話し合いなどまったく余地がない」と頑なである。

 本年のG8エヴィアン会議では、セキュリティに4千3百万フラン(36億6千万円)かかった。フランスとスイスは話し合いにより経費をそれぞれ、1千720万フラン(14億6千万円)とすることで合意。残りはジュネーヴ州、ヴォー州、ヴァレー州で負担した。

スイス国際放送 クリスティアン・ラーフラウブ(佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)

2004年世界経済フォーラムの議題:
繁栄と安全のためのパートナーシップ
北と南の共存
2003年:信頼の確立
2002年:テロ問題
2001年:ロシアとブラジルの金融市場危機
2004年の参加者 : 経済界代表者1000人とその他、NGO、学者、メディアなどの代表者1000人

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部